6月は公的年金の振込月。家計を見直すきっかけとして、将来の年金について考える方も多いのではないでしょうか。筆者はファイナンシャルプランナーとして、老後の生活設計や年金制度の相談を受けています。
今回は厚生労働省の統計資料をもとに、離婚後の年金が増える可能性がある「年金分割制度」について解説します。知らずに損をしている人も多いこの制度、実は請求しなければ受け取れない仕組みであることも押さえておきましょう。
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年金分割制度は離婚した夫婦のうち、どのくらいの組が利用しているのでしょうか?
厚生労働省が発表した「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」の厚生年金保険(第1号)における離婚等に伴う年金分割の状況についてみていきます。
【令和5年度】離婚等に伴う保険料納付記録分割件数について
- 離婚件数(組) :18万4223件
- 分割件数総数(件):3万2642件
→離婚件数に対する保険料納付記録分割件数の割合:17.8%
- 離婚分割(件) :2万1625件
- 3号分割のみ(件):1万1017件
令和5年度に実施された年金分割の件数は合計3万2642件、これは離婚した夫婦のおよそ2割弱しか年金分割をしていないということになります。熟年離婚が増加する中でも、制度の活用が進んでいない現状がうかがえます。
また、離婚分割は2万1625件で、そのうち配偶者の合意がいらない「3号分割」は1万1017件実施されています。
この年金分割には、夫婦の必要な「合意分割」と、合意がいらない「3号分割」の2種類あり、離婚分割は「合意分割」と「3号分割」を合計した数が含まれています。