5月は新緑がまぶしい季節。そして来月6月は年金の支給月でもあり、多くのシニア世代にとってお金の動きが気になる時期です。

そんな中、2024年に社会保障審議会年金部会で「遺族年金制度の見直し」が議論された《遺族年金》に注目が集まっています。

今回は現行制度を前提に、「夫に先立たれた場合、自分の老齢年金と夫の遺族年金は両方受け取れるのか?」その制度のしくみと併給の可否について、ファイナンシャルプランナーの視点からわかりやすく解説します。

1. 遺族年金は2種類ある

まずは、遺族年金の基本について解説していきます。

1.1 遺族基礎年金

遺族基礎年金は、下記のいずれかの要件を満たしている方が死亡した場合、「遺族」に支給されます。

  • 国民年金の被保険者期間中
  • 国民年金の被保険者であった60歳以上~65歳未満で、日本国内に住所がある方
  • 老齢基礎年金の受給権者
  • 老齢基礎年金の受給資格を満たした方

遺族基礎年金を受け取れる「遺族」は、死亡した方に生計を維持されていた方で、

  1. 子のある配偶者

が対象です。なお、遺族厚生年金を受け取れる「遺族」は遺族基礎年金も合わせて受給できます。

子とは、18歳になった年度の3月31日までの子、あるいは20歳未満で障害年金の障害等級1級か2級の状態の子です。

つぎに、今年度4月分からの遺族基礎年金の年金額についてみていきましょう。

遺族基礎年金は年金額は毎年見直され、それに子の人数に応じた加算額が上乗せされます。

遺族基礎年金額(令和7年4月分から)子の加算額について

遺族基礎年金額(令和7年4月分から)子の加算額について

出所:日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」

1.2 遺族厚生年金

遺族厚生年金は、厚生年金保険の「被保険者期間中」、「受給権者」、「受給資格を満たした方」に加えて、1級・2級の障害厚生年金を受け取っている方の「遺族」に支給されます。

遺族厚生年金を受け取れる「遺族」は、死亡した方に生計を維持されていた以下の遺族で、最も優先順位が高い方が受給できます。

  1. 子のある配偶者
  2. 子のない配偶者
  3. 父母
  4. 祖父母

遺族厚生年金の受給対象者の優先順位

遺族厚生年金の受給対象者の優先順位

出所:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」

遺族厚生年金の年金額は、遺族基礎年金のように定額ではありません。

死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の金額になります。

報酬比例部分は、厚生年金に加入していた期間や報酬額に応じて算出される部分なので、人によって金額が異なります。

例えば、死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分が100万円だった場合、

  • 100万円×3/4=75万円(老齢厚生年金額)

ということになります。

ここまで、遺族基礎年金と遺族厚生年金の基本について解説してきました。

次に今回のポイントである「夫に先立たれた場合、自分の老齢年金と夫の遺族年金は両方受け取れるのか?」についてみていきましょう。