年の瀬の風物詩ともいえる「第35回 2018年 ユーキャン新語・流行語大賞」。11月7日にノミネート語が発表され、12月3日にはいよいよ大賞の発表を迎えます。これが発表されると、「今年も終わりか」という実感がわいてくる人もいるかもしれません。

この「ユーキャン新語・流行語大賞(以下、流行語大賞)」ですが、近年はノミネートされた言葉や、賞自体の存在意義などに対して疑問を持つ人が多数いるようです。

30年以上におよぶ歴史

そもそも、この流行語大賞、どういった形で発展してきた賞なのかご存じでしょうか?

同賞が始まったのは1984年。『現代用語の基礎知識』を刊行する自由国民社が授与しています。同社の公式サイトによると、「1年の間に発生したさまざまな『ことば』のなかで、軽妙に世相を衝いた表現とニュアンスをもって、広く大衆の目・口・耳をにぎわせた新語・流行語を選ぶとともに、その『ことば』に深くかかわった人物・団体を毎年顕彰するもの」という位置づけです。

当初は現在ほど大きな影響力はなかったようですが、次第に関心が集まるようになり、2004年からは通信教育大手のユーキャンがスポンサーとなっています。近年では受賞語がテレビのニュース等でも大きく報道されるようになり、日本漢字能力検定協会が12月中旬に発表する「今年の漢字」などと並んで、一年の締めくくりに注目を集めるイベントになりました。

知らない単語がノミネート!?

ですが、ここしばらくは、特にネット上で賞に対する不満の声が多く聞こえます。おそらく最も多い声は、

「ノミネートされた単語を知らない」

ではないでしょうか。たとえば、2015年の年間大賞に選ばれた「トリプルスリー」は野球用語ということもあってか、

「本当に流行してたの?」
「野球を知ってる人は昔から知ってるし、知らない人はそもそも知らない言葉」

といった声が多く上がりました。2016年に広島カープの緒方孝市監督が口にした「神ってる」が同じく大賞に選ばれた際も、「何それ?」「初めて聞いた」「流行ってねぇよ」など似たような反応が見られました。

選考委員は適切なのか

こういった、ノミネート語・受賞語と私たちのイメージに乖離がある原因として、「選考委員制」にも批判が及んでいます。同賞のサイトによると、選考委員会は、姜尚中(東京大学名誉教授)、金田一秀穂(杏林大学教授)、辛酸なめ子(漫画家・コラムニスト)、俵万智(歌人)、室井滋(女優・エッセイスト)、やくみつる(漫画家)、清水均(『現代用語の基礎知識』編集部長)の各氏がメンバーとなっています。

真偽のほどは定かではありませんが、ノミネート語や受賞語に政権与党に批判的な言葉が多いことから、「審査員の政治思想が反映されているのではないか」といった見方もあります。一方で、「その年の世相を斬るのもこうした賞の役割なんだから、政権に批判的になるのは当たり前」という意見も見られます。加えて「ノミネート語の段階では選考委員は関係ないだろ」というツッコミもあります。

また、審査員が全員40歳を超えていて、特に若者の間で流行した言葉やカルチャーを知らないのではないかという見方もあるようです。たとえば、アニメ映画『アナと雪の女王(アナ雪)』の主題歌の題名で、2014年にトップ10に入った「ありのままで」については、やくみつる氏が「週刊朝日」の対談記事で、

「選考委員が顔を見合わせて、『アナ雪見た?』『見てない』と。世間の声を拾い切れていなかったかもしれませんね」

と話していて、これはこれでネット上でも話題になりました。『アナ雪』は別に若者だけに流行したというわけでもないのですけどね。

それ、「流行語」って言っていいの?

そのほか、「それ、流行語っていうか商品名だろ」というのも多い意見です。2018年のノミネート語を見てみると、「TikTok」はサービス名、「おっさんずラブ」「君たちはどう生きるか」は作品名、「ひょっこりはん」にいたっては単に芸人の名前です。これについては、果たして商品名などを「流行語」と言っていいのか、という根本的な批判もあります。

その視点で、過去数年をノミネート語も含めて振り返ってみると、

2017年「うんこ漢字ドリル」「けものフレンズ」
2016年「ポケモンGO」「君の名は。」
2015年「妖怪ウォッチ」
2013年「パズドラ」

など、確かに商品名や作品名などが数多く入っています。「パズドラ」なら、そのまんま商品名ではなく「パズル&ドラゴンズ」の略称なので、まだわかるのですが……。

なお、2018年のノミネート語に「カメ止め」がありますが、インディペンデント映画から大ヒットとなった「カメラを止めるな」の略称だと気づくのには、人によっては時間がかかるかもしれません。

「流行」より「授賞式映え」重視?

ほかには、「純粋に流行したのかどうかより、授賞式での見栄えや盛り上がりを考えた上で受賞語を選んでいるのでは?」という意見もあります。

実際に、2016年には元ラグビー日本代表・五郎丸歩選手の「五郎丸(ポーズ)」が大賞の予定だったものの、「五郎丸選手が授賞式に出席できない」という理由で大賞語を変更したという話を、当時の審査委員だった鳥越俊太郎さんが暴露しています。

野球などもそうですが、その年のスポーツ関連で活躍したプレーヤー、あるいはその年にヒットしたドラマや映画の出演者などが授賞式に来ると、やはり「授賞式映え」しますし、ニュースなどで大きく扱ってもらえる可能性も高まります。そうしたことから「むしろ授賞式に呼びたい人間を決めてから、無理やりその人の言葉を拾ってるんじゃないか?」など、うがった見方をする人もいます。

こういった批判が数多くありながらも、今のところは選考方法などが見直される動きはないようです。「たかが私企業が勝手に選ぶ賞に、いちいち文句をつけるのもどうか」という意見もありますが、現状、一定の影響力のある賞になっているだけに、気になる人も多いのでしょう。

さて、今年の流行語には、何が選ばれるのでしょうか?

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