8. 厚生年金に加入していない人へ:国民年金を増やす方法を紹介

先述の通り、国民年金のみを受け取る場合の受給額は、厚生年金と比較してもだいぶ少なめです。働き方の多様化がすすむいま、厚生年金に加入しないフリーランスや自営業の方なども増えています。

国民年金の受給額を増やす方法のうち、今回は比較的手軽にできる「付加保険料の納付」についてご紹介します。

8.1 付加保険料の納付

定額の国民年金保険料(2025年度は1万7510円)に「付加保険料(月額400円)」を上乗せで支払うことで、将来の年金額を増やすことができるしくみです。

付加保険料を納付できる人

  • 国民年金第1号被保険者
  • 65歳未満の任意加入被保険者

付加保険料を納付できない人

  • 国民年金保険料の納付を免除されている人(法定免除、全額免除、一部免除、納付猶予、または学生納付特例)
  • 国民年金基金の加入員である人

個人型確定拠出年金(iDeCo)と付加年金は同時に加入することができますが、個人型確定拠出年金の納付額によっては併用ができない場合があります。

付加保険料を「20歳~60歳の40年間」納付した場合

65歳以降に受け取れる「付加年金額」は「200円×付加保険料納付月数」です。20歳から60歳の40年間、付加保険料を納付した場合を計算してみましょう。

  • 40年間に納付した付加保険料の総額:19万2000円(400円×480カ月)
  • 65歳以降に受け取れる付加年金額(年間):9万6000円(200円×480カ月)

毎年の年金受給額に9万6000円が上乗せされます。40年間に納付した付加保険料は19万2000円なので、2年でもとが取れる計算になります。

会社員等で厚生年金に加入しながら副業(複業)している場合を除き、20歳から60歳までの自営業・フリーランスなどの人は国民年金の加入対象です。

9. 【年金の繰上げ・繰下げ受給】年金受給開始の年齢は選べる!

公的年金の支給開始は原則として65歳ですが、希望に応じて60歳から前倒しで受け取る「繰上げ受給」、または70歳まで遅らせる「繰下げ受給」を選択できます。

これにより、ライフスタイルや資金計画に応じた柔軟な受給が可能になります。

9.1 繰上げ受給の注意点

60歳からの繰上げ受給を選ぶと、1カ月ごとに0.4%(令和4年4月以降は0.4%)年金額が減額されます。

たとえば60歳で5年間早めると、最大24%の減額に。しかもこの減額は一生続くため、長寿の場合にはトータルで損になる可能性があります。

9.2 繰下げ受給で年金額アップ

繰り下げ受給のイメージ

繰り下げ受給のイメージ

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

逆に70歳まで受給を遅らせる「繰下げ受給」を選ぶと、1カ月あたり0.7%ずつ増額されます。満額に対して42%の増額となり、長く生きるほど得になる設計です。

最近では75歳までの繰下げも選べるようになりました(最大84%増)。

9.3 損得は「健康」と「寿命」の読みがカギ

繰上げ・繰下げは、それぞれの健康状態や生活資金の状況によってメリット・デメリットが分かれます。

受給のタイミングは「自分は何歳まで生きるか」という難しい問いと向き合う必要があります。