5. 高齢者の医療・介護費の実情と備え

日本では平均寿命が延びる一方、健康上の問題なく日常生活を送れる「健康寿命」との間には約10年前後の差があります。

この“健康と不健康のギャップ”は、医療や介護の必要性が高まる時期でもあります。

実際に、高齢者1人あたりの年間医療費は約90万円前後、介護費用については在宅と施設利用で大きく異なりますが、在宅介護であっても月に5万円程度、施設入所では月15万円ほどかかるケースも少なくありません。

厚生労働省「令和4年度 国民医療費の概況」によると2022年時点の65歳以上の人口1人あたり国民医療費は年間77万5900円、月額7万円弱となっています。

介護費用については、在宅介護で平均月額4万8000円、施設の場合は平均月額12万2000円です。

こうした費用に対して、国の制度もいくつか用意されています。

たとえば「高額療養費制度」は、医療費の自己負担が一定額を超えた場合に超過分を払い戻してもらえる仕組みです。

また、「介護保険制度」により、認定を受けた人は介護サービスを1割〜3割の自己負担で利用できます。

さらに、民間の医療保険や介護保険でカバーできる部分もあり、早めに備えておくことで将来の出費リスクを軽減できます。

長寿時代を安心して過ごすためには、医療・介護費がどの程度かかるのかを具体的に把握し、公的制度や保険の活用も含めて計画的に備えることが欠かせません。

6. まとめにかえて

本記事では、いまのシニア世代の「貯蓄額・年金額・家計収支」をご紹介しました。

「未来」は不確定なことばかり。だからこそ「予測」して「備え」ていくことが大切です。

たとえば、老後に年金をいくらもらえるかはわかりませんが、ねんきん定期便やねんきんネットから「将来、いくら受け取れそうか」を予測することは可能です。

その予測に基づき、いくら備えていくべきか目標を立てて、資産形成などを進めていけると良いでしょう。

なお、物価上昇によりお金の価値は変わっていきます。年金制度をはじめ、社会保障制度なども変化していきますので、年に1度など定期的に「予測」を見直しておくことも重要です。

参考資料

マネー編集部貯蓄班