中小企業の経営者や起業を志したことのある人なら誰でも聞いたことある「日本政策金融公庫」(以下、公庫)。もともとあった政府系金融機関3行が合併し一つになったものです。
その流れから、内部には国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業という3つの事業があり、それぞれ違った役割をしています。それぞれの事業にどのような特徴があるのか見ていきましょう。
1. 国民生活事業
国民生活事業(以下、国民)は、個人事業主や創業時の企業、小規模な企業、理美容業や宿泊業といった生活衛生業を対象としています。元は国民生活金融公庫という金融機関でした。
融資限度額は7200万円(生活衛生業は7億2000万円)、平均融資金額が700万円と比較的小口の融資を扱い、金融業や娯楽業・風俗業などを除き、多くの業種を融資対象としています。また、事業資金だけでなく教育ローンも手がけています。
2. 中小企業事業
中小企業事業(以下、中小)は、資本金と従業員数で中小企業に当てはまる企業を対象に融資します。元は中小企業金融公庫という金融機関でした。
中小企業の範囲に該当すれば売上や規模を問わず融資することができ、融資先には上場企業もあります。融資限度額は7億2000万円、平均融資金額は1億円と比較的大きな融資を行います。
なお、金融業や娯楽業・風俗業など以外に、農林水産業や不動産賃貸業、医療・福祉業などの業種も融資できないため、国民よりも対象業種に制限があります。
3. 農林水産事業
農林水産事業は、農林水産業と食品産業に融資します。元は農林漁業金融公庫という金融機関でした。「天候などの影響を受けやすく、収益が不安定」「投資回収に長時間を要する」といった特性がある農林漁業者や、農林水産物の安定供給を行う食品産業向けに長期資金を融資しています。
国民と中小どちらに相談したらいい?
小規模企業の場合、国民と中小どちらに相談に行ったら良いでしょうか? 融資希望額が小口の場合は国民、大口の場合は中小となります。売上規模感で、概ね年商5億円を目安に、下回る場合は国民、上回る場合は中小と考えると良いでしょう。
公庫は小規模企業や中小企業を支える金融機関です。税理士や中小企業診断士といった専門家とも多く連携しているので、資金調達を検討している際は顧問税理士などに相談してみてはいかがでしょうか。
中野 裕哲