老後の生活について、どのような暮らしを思い描いていますか?毎日が日曜日のような生活や、趣味や旅行を楽しむゆとりある暮らしが理想かもしれません。  

しかし、筆者の資産運用アドバイザーとしての経験から、多くの方が「老後の生活に余裕がなく不安」と感じている現状を耳にします。理想的な老後を実現するためには、早い段階から計画的に貯蓄を始めることが重要です。  

本記事では、老後が近づく50歳代の二人以上世帯の平均貯蓄額を紹介し、老後生活に余裕を持たせるためのポイントについて詳しく解説します。

※金額等は執筆時点での情報にもとづいています。

1. 【現役生活終盤】50歳代・二人以上世帯の「平均貯蓄額」はどのくらい?

まずは、金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」をもとに、50歳代・二人以上世帯の貯蓄事情を確認していきましょう。

※貯蓄額には、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。

50歳代・二人以上世帯の金融資産保有額(金融資産非保有世帯含む)

50歳代・二人以上世帯の金融資産保有額(金融資産非保有世帯含む)

出所:金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」をもとにLIMO編集部作成

  • 平均値:1168万円
  • 中央値:250万円
     
  • 金融資産非保有:29.2%
  • 100万円未満:8.7%
  • 100~200万円未満:5.9%
  • 200~300万円未満:5.1%
  • 300~400万円未満:3.7%
  • 400~500万円未満:3.2%
  • 500~700万円未満:6.3%
  • 700~1000万円未満:5.8%
  • 1000~1500万円未満:7.6%
  • 1500~2000万円未満:3.8%
  • 2000~3000万円未満:6.3%
  • 3000万円以上:10.7%
  • 無回答:3.8%

50歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額は1168万円とされていますが、この数値は一部の資産を多く保有する世帯によって高められている傾向があります。

一方、実態をより反映しているとされる中央値は250万円にとどまり、老後資金の目安とされる2000万円には届いていません。

貯蓄額の分布を見ても、「1000万円以上」の貯蓄を持つ世帯は全体の約3割にとどまる一方で、貯蓄ゼロという世帯も同じくらい存在しており、貯蓄における二極化が浮き彫りとなっています。

この世代は収入がピークを迎える時期でもありますが、子どもの教育費や住宅ローンといった大きな出費が重なることから、思うように貯蓄が進まない家庭も少なくありません。

また、子育てが落ち着いた後に老後資金の準備を加速させたいと考えていたとしても、親の介護など予期せぬ出来事によって計画通りに進まないケースも見られます。

リタイアを目前に控えた世代ではありますが、安定して貯蓄できる環境にない世帯も多いため、今ある貯蓄額だけでなく、退職後を見据えた長期的な家計管理が重要になります。

そうした背景から、50歳代の多くが意識し始めるのが「老齢年金」に関するテーマであると言えるでしょう。

2. 【ねんきん定期便】50歳を境に変わる!何が書かれてるの?

毎年の誕生月に届く「ねんきん定期便」で、将来受け取る年金額を確認している方も多いのではないでしょうか。

この通知は、50歳を境に記載内容が大きく変わる点が特徴です。

49歳までは「これまでの実績に基づいた年金額」のみが記載されていますが、50歳を迎えると「現在の条件で60歳まで加入し続けた場合の見込額」が表示されるようになります。

この変更により、それまで漠然としていた将来の年金受給額が、具体的な数字として把握しやすくなり、老後への備えを意識するきっかけにもなります。

さらに、年金額には個人差が大きく、たとえ同じ厚生年金に加入していても、収入水準や加入年数によって支給額は大きく変わります。

だからこそ、自身の見込み額をしっかり把握し、老後に向けた資金計画を早めに立てておくことが大切です。

3. 現シニアが受け取っている「厚生年金・国民年金」の平均月額はいくら?

厚生労働省が公表した「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」では、現在のシニア世代が受け取っている年金額の実情が示されています。

国民年金・厚生年金それぞれの平均受給額に加え、受給額のばらつきや男女による違いにも目を向けることで、老後の生活をより具体的にイメージする手がかりとなるでしょう。

3.1 【国民年金】平均年金月額&受給額ごとの受給権者数(1万円刻み)をチェック

  • 〈全体〉平均年金月額:5万7584円
  • 〈男性〉平均年金月額:5万9965円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万5777円
  • 1万円未満:5万8811人
  • 1万円以上~2万円未満:24万5852人
  • 2万円以上~3万円未満:78万8047人
  • 3万円以上~4万円未満:236万5373人
  • 4万円以上~5万円未満:431万5062人
  • 5万円以上~6万円未満:743万2768人
  • 6万円以上~7万円未満:1597万6775人
  • 7万円以上~:227万3098人

国民年金の平均受給額は、男女ともに月額5万円台にとどまり、最も多いのは「6万円以上~7万円未満」の受給者層です。

2025年度の国民年金における満額は6万9308円であり、これは40年間(480カ月)にわたり保険料を納めた場合に支給される金額です。

この点から見ても、多くの受給者が満額に近い水準で年金を受け取っていることがうかがえます。

では次に、厚生年金の受給状況について見ていきましょう。

3.2 【厚生年金】平均年金月額&受給額ごとの受給権者数(1万円刻み)をチェック

  • 〈全体〉平均年金月額:14万6429円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万6606円
  • 〈女性〉平均年金月額:10万7200円

※国民年金部分を含む

  • 1万円未満:4万4420人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4367人
  • 2万円以上~3万円未満:5万231人
  • 3万円以上~4万円未満:9万2746人
  • 4万円以上~5万円未満:9万8464人
  • 5万円以上~6万円未満:13万6190人
  • 6万円以上~7万円未満:37万5940人
  • 7万円以上~8万円未満:63万7624人
  • 8万円以上~9万円未満:87万3828人
  • 9万円以上~10万円未満:107万9767人
  • 10万円以上~11万円未満:112万6181人
  • 11万円以上~12万円未満:105万4333人
  • 12万円以上~13万円未満:95万7855人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3629人
  • 14万円以上~15万円未満:94万5907人
  • 15万円以上~16万円未満:98万6257人
  • 16万円以上~17万円未満:102万6399人
  • 17万円以上~18万円未満:105万3851人
  • 18万円以上~19万円未満:102万2699人
  • 19万円以上~20万円未満:93万6884人
  • 20万円以上~21万円未満:80万1770人
  • 21万円以上~22万円未満:62万6732人
  • 22万円以上~23万円未満:43万6137人
  • 23万円以上~24万円未満:28万6572人
  • 24万円以上~25万円未満:18万9132人
  • 25万円以上~26万円未満:11万9942人
  • 26万円以上~27万円未満:7万1648人
  • 27万円以上~28万円未満:4万268人
  • 28万円以上~29万円未満:2万1012人
  • 29万円以上~30万円未満:9652人
  • 30万円以上~:1万4292人

厚生年金の平均受給額は全体で月額14万円台ですが、男女別に見ると、男性は16万円台、女性は10万円台と大きな差が見られます。

この差は、現役時代の収入水準や就業期間といった働き方の違いが反映された結果といえるでしょう。

将来の年金額を確認するには、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」を活用するのがおすすめです。

早めに自身の状況を把握し、具体的な老後資金の見通しを立てておくことが重要です。

3.3 【年金の実質目減りは続いている…】年金以外の備えは何がある?

2025年度の年金支給額は、前年度と比べて1.9%の増額となりました。

しかし、昨今の急速な物価上昇には追いついておらず、受給者にとっては実質的な負担感が強まっているのが現状です。

さらに、先述のように年金の平均受給額だけでは生活に不安を感じるケースも多く、年金収入のみに依存するのは難しいと感じる方も少なくないでしょう。

こうした背景を踏まえると、年金以外の備えを意識し、次のような対策を講じていくことが重要になります。

  • 貯蓄を計画的に増やす
  • 万が一に備えた保険の検討をする
  • シニア世代でも働き続けられる健康やスキルの確保しておく

さらに、長寿社会が進行する今、限られた資産をいかに長く維持していくかが大きな課題となっています。

その対策の一つとして、資産運用を取り入れ、効率的に資金を増やしていくことは有効な手段といえるでしょう。

こうした視点を持つことで、老後の生活に対する不安を軽減し、より安心して日々を過ごせる基盤づくりにつながります。