内閣府の「令和6年版高齢社会白書」という調査によると、経済的な暮らし向きについて「心配がない」と回答した65歳以上の人は68.5%に上ります。
物価高が進むに伴い、老後の暮らしを心配する人も多いかとは思いますが、本当に経済的な心配をせずに暮らすシニアが多いのでしょうか。
65歳以上無職世帯の「ひと月の収支」を見ることで、老後の暮らしのイメージをつかみましょう。
年金額や貯蓄額などについてもくわしく紹介します。
1. 65歳以上の無職夫婦世帯「ひと月の収支」は平均で赤字に
総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」から、65歳以上無職夫婦世帯のひと月の家計収支データをのぞいてみましょう。
1.1 毎月の実収入:25万2818円
■うち社会保障給付(主に年金)22万5182円
1.2 毎月の支出:28万6877円
■うち消費支出:25万6521円
- 食料:7万6352円
- 住居:1万6432円
- 光熱・水道:2万1919円
- 家具・家事用品:1万2265円
- 被服及び履物:5590円
- 保健医療:1万8383円
- 交通・通信:2万7768円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万5377円
- その他の消費支出:5万2433円
- 諸雑費:2万2125円
- 交際費:2万3888円
- 仕送り金:1040円
■うち非消費支出:3万356円
- 直接税:1万1162円
- 社会保険料:1万9171円
1.3 毎月の家計収支
- 3万4058円の赤字
この世帯の場合、支出の合計は28万6877円。そのうち社会保険料や税などの「非消費支出」が3万356円、いわゆる「生活費」にあたる消費支出が25万6521円です。
一方で、ひと月の収入は25万2818円になりました。
その約9割(22万5182円)を社会保障給付(主に公的年金)が占めますが、結果的には毎月3万4058円の赤字となり、貯蓄の取り崩しなどでカバーが必要です。
ただし上記の支出の内訳には「介護費用」がなく、住居費も1万円台となっています。世帯構成や健康状態により、さらに上乗せの出費を想定しておく必要もあるでしょう。
次では貯蓄事情について見ていきます。
2. 65歳以上の無職夫婦世帯「貯蓄額」はどれほど?
総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2023年(令和5年)平均結果-」によると、2023年時点での「世帯主が65歳以上の無職世帯」の貯蓄の平均貯蓄額は2504万円です。
種類別に見ていくと、最も多いのは定期性預貯金の846万円。次いで通貨性預貯金が754万円、有価証券(※1)が480万円、「生命保険など」が413万円、金融機関外(※2)が11万円です。
前年からの増え幅を見ると、通貨性預貯金が55万円で7.9%の増加、有価証券が80万円で20.0%となっています。
※1 有価証券:株式,債券,株式投資信託,公社債投資信託,貸付信託,金銭信託など(いずれも時価)
※2 金融機関外:金融機関以外への貯蓄のことで、社内預金、勤め先の共済組合への預金など
もし十分な貯蓄がないという場合でも、生活費をカバーできる年金収入があれば、老後を過ごすことは可能です。
前章では夫婦における「社会保障給付(主に年金)」が平均で22万5182円であることがわかりましたが、より実態をつかむために、個人における平均額を見ていきましょう。
3. 【老齢年金】国民年金・厚生年金の平均受給額
ここからは厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」より、2023年度末時点の年金額を見ていきます。
厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2023年度末の国民年金・厚生年金(※)の平均年金月額は以下の通りです。
※厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されており、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介します。また、厚生年金の月額には国民年金(老齢基礎年金)部分が含まれています。
3.1 国民年金(老齢基礎年金)
〈全体〉平均年金月額:5万7584円
- 〈男性〉平均年金月額:5万9965円
- 〈女性〉平均年金月額:5万5777円
3.2 厚生年金(国民年金部分を含む)
〈全体〉平均年金月額:14万6429円
- 〈男性〉平均年金月額:16万6606円
- 〈女性〉平均年金月額:10万7200円
平均年金月額は、国民年金のみを受け取る場合で5万円台。厚生年金(国民年金部分を含む)を受け取る場合で、男性16万円台、女性10万円台です。
とはいえ、国民年金、厚生年金それぞれの受給権者の中でも個人差が出ます。1万円未満の低年金となる人から、25万円を超える高額受給者までさまざまです。
- 1万円未満:4万4420人
- 1万円以上~2万円未満:1万4367人
- 2万円以上~3万円未満:5万231人
- 3万円以上~4万円未満:9万2746人
- 4万円以上~5万円未満:9万8464人
- 5万円以上~6万円未満:13万6190人
- 6万円以上~7万円未満:37万5940人
- 7万円以上~8万円未満:63万7624人
- 8万円以上~9万円未満:87万3828人
- 9万円以上~10万円未満:107万9767人
- 10万円以上~11万円未満:112万6181人
- 11万円以上~12万円未満:105万4333人
- 12万円以上~13万円未満:95万7855人
- 13万円以上~14万円未満:92万3629人
- 14万円以上~15万円未満:94万5907人
- 15万円以上~16万円未満:98万6257人
- 16万円以上~17万円未満:102万6399人
- 17万円以上~18万円未満:105万3851人
- 18万円以上~19万円未満:102万2699人
- 19万円以上~20万円未満:93万6884人
- 20万円以上~21万円未満:80万1770人
- 21万円以上~22万円未満:62万6732人
- 22万円以上~23万円未満:43万6137人
- 23万円以上~24万円未満:28万6572人
- 24万円以上~25万円未満:18万9132人
- 25万円以上~26万円未満:11万9942人
- 26万円以上~27万円未満:7万1648人
- 27万円以上~28万円未満:4万268人
- 28万円以上~29万円未満:2万1012人
- 29万円以上~30万円未満:9652人
- 30万円以上~:1万4292人
4. 年金が少ないなら働くしかない?「在職老齢年金制度」を知ろう
年金も貯蓄も十分でない場合は、リタイアを先延ばしにして働く必要が出てくるかもしれません。
60歳以降、年金を受給しながら働く際に注意しておきたいことの一つに「在職老齢年金」があります。
働きながら年金を受け取ることも可能ですが、「月収+年金」が一定額を超えると、下記のように超過分の年金額が半分に減額されることに注意が必要です。
4.1 【2025年度】在職老齢年金の計算式
基本月額と総報酬月額相当額との合計が51万円※以下の場合
- 全額支給
基本月額と総報酬月額相当額との合計が51万円※を超える場合
- 基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-51万円※)÷2
なお、在職老齢年金の上限額(支給停止調整開始額)も、賃金や物価を考慮して調整されるもので、2025年度は前年度より1万円引き上げられることが決まっています。
5. まとめにかえて
経済的な心配を抱えているシニア世帯は、実は多くないことがわかりました。
しかし、これから老後の準備を進める現役世代にとって、このデータが安心感を与えるとは限らないでしょう。
情勢は変わっており、年金制度がどのように変化するか見通しが立たないからです。
実際、2025年度の年金は3年連続で増額されているものの、マクロ経済スライドにより”実質目減り”の状況が続いています。
年金に頼らない生活を送るには、労働収入を得たり、貯蓄を取り崩したりすることになります。
在職老齢年金制度の動向にも注意しながら、それぞれの老後を考えてみましょう。




