子連れで歩いていると、よくおじいちゃんやおばあちゃんに話しかけられますよね。小学生~1歳までの3児を育児中の筆者も、多くの方と話してきました。一番多く言われるのが、「大変だけど、今が一番いい時ね」という言葉。この言葉から、様々なことを考えさせられました。
多くの育児経験者が口にする「今が一番いい時」
子育てを経験したおばあちゃんによく言われるのが、「今が一番いい時ね」。乳児~幼稚園児連れのときに言われるので、「今=子どもが乳幼児期」のことでしょう。「大変ね~、危ないこともするし、目が離せないでしょう。でも、今が一番いい時ね」と、不思議なほど多くの人が最後に付け足すのです。
そうはいっても、特に乳幼児子育て中のママは「そうは思えない」という人も少なくないのでは? 子どもから目も手も離せない毎日に疲れたり、上の子にも下の子にも泣かれて自分が泣きたくなったり、忙しい時に子どもから話しかけられて怒ってしまったり。「『今が一番』と思えない私はダメなのかな」なんて思うことも。
ワンオペ育児、共働き、核家族という現代の育児環境では、親が疲れ過ぎて余裕を失い、育児を楽しめる瞬間が減っているのかもしれません。それでも育児経験者が口にする「今が一番いい時」には、現在のお母さんに伝えたいメッセージがあるように思うのです。
「今思えば」が前についている
「今が一番いい時」と言われるたびに気になるのは、その時のおばあちゃんの横顔。当時の我が子を思い出し、懐かしむような、愛しむような、何ともいえない嬉しそうな表情をするのです。
なかには、詳しい話をしてくださる方もいました。「今では子どもと会うのも年に数回だし、孫も部活だ、試験だって忙しくて、なかなか会えなくてね…」「男の子が話をしてくれるのは、今思うと10年くらいだったわ」「大変だけど、ママ~ってきてくれるときが一番幸せだった」など。
「あの子が2歳のときに、一緒に散歩したり、水に小石を落として遊んだのが今でも忘れられないわ」「歩きたての可愛さったらないよね。ほんの一時だけど」「子どもって賢いのよ~!ちゃんと大人の気持ちを汲み取ってくれるの」と当時を慈しむような表情は、言葉よりも印象的です。
思い思いに育児体験を語るおばあちゃんたちは、「今思えば、あの時が一番いい時だった」と本当は言いたいのじゃないでしょうか。子育て中、「今が一番」と思える余裕がなかったのは、皆同じなのでしょう。
遠い未来を想像してみる
おばあちゃんたちの話を聞きながら、遠い未来を想像してみます。自身のことを思い起こしても、確実に思春期はくるし、親と手さえ繋ぐこともなくなれば、友達と遊ぶ方が楽しかったり、「早く一人暮らしをしたい」と思う日はくるでしょう。子ども側からしても、素直に親に甘えられるのは、ほんの10年です。
時々、1歳の末っ子を見てふと「あれ、リビングに小さな子がいる」と思うときがあります。「自分の人生の中で、何でもないことでも大喜びしたり、キャーキャー騒いだり、いつも傍らにいてくれる小さな子がいるなんて」と不思議に思います。次の瞬間にはもうママに戻るのですが、おばあちゃんたちの言う通り、小さな子がいる生活は人生でも束の間の幸せな時なのかもしれません。
モチモチの太ももとか、手を繋いだときの小さな手の感触と温もりとか、横に並ぶ小さな影とか、トテトテ歩く足音とか、思いきり笑う笑顔とか、テレビで歌が流れると腰を動かす様子とか、こぼしながらもママのためにとくんでくれるお茶とか…。そういった「今しかないこの瞬間」を、せっかく育児をしているのですから、しっかりとキャッチしたいものです。
そのためにはもう少し気を抜き、心身の余裕を取り戻す必要もあるでしょう。幼児期を過ぎれば思うように家事もできますし、部屋もキレイにできます。「今だけ」と少し家事の手を抜く自分を許し、いつもよりも心身の余裕を取り戻して、今だけの可愛さを堪能してみる。そんな時を週に何日かでも、増やしたいものです。
現代の育児環境は大変といっても、自分の人生は一度しかありませんし、子育てができるのは今だけです。おばあちゃんたちが教えてくれた「一番いい時」というメッセージを、忙しい日々の中でも思い出したいと思います。
宮野 茉莉子