3. 2025年10月から「生活扶助基準額」はいくらになる?
2025年10月からの生活扶助基準額について、具体的なシミュレーションを行ってみましょう。
そもそも生活扶助を含む「生活保護費」は、厚生労働省が定めた基準に基づいて、各世帯の最低生活費から収入を差し引いた「差額」として支給されます。
例えば、最低生活費が15万円で収入がない場合、支給される生活保護費は15万円となります。
一方、最低生活費が15万円で収入が14万円の場合、受け取れる生活保護費は1万円となります。
なお、最低生活費の基準額は地域ごとに異なるため、地域によって支給額が変わります。
生活保護の受給額を算定する際に重要な「最低生活費」の計算方法は、以下の通りです。
最低生活費=A+B+C+D+E+F
- A:「生活扶助基準(第1類+第2類)+特例加算(1人当たり月額1000)+生活扶助本体における経過的加算
- B:障害者、母子世帯、児童の養育等の加算額
- C:住宅扶助基準
- D:教育扶助基準、高等学校等修学費
- E:介護扶助基準
- F:医療扶助基準
最低生活費の基準は地域ごとに異なり、通常、都市部の方が高い傾向にあります。
生活保護制度では、全国を1級地から3級地の6つの地域に分け、各地域ごとに生活費の基準額を設定しており、1級地は物価や家賃が高い都市部、3級地は地方を指します。
上記をふまえ、2023年10月1日時点で東京都23区(1級地-1)に住む50歳の単身世帯男性の場合、生活扶助基準額は7万5720円となります。
この金額には2023年度から実施されている特例加算「1000円」がすでに含まれており、2025年10月からはさらに500円の増額され「7万6220円」となる予定です。
4. 生活扶助が増額も「これだけでは生活は改善されない懸念」
本記事では、生活保護の基本的な仕組みと、2025年10月から予定されている増額の詳細について解説していきました。
2025年10月より、生活扶助基準額が世帯ごとに月500円増額される予定です。
しかし、今回の増額は少額かつ期間が限定されており、物価上昇が続く中で、生活保護を受ける人の生活がさらに厳しくなっているとうかがえます。
現状の厳しい財政状況を考慮すると、保護費の増額に加えて、生活保護を受けている人がより自立できるよう、支援策を一層充実させる必要があると言えるでしょう。
参考資料
- 厚生労働省「生活保護制度」
- 厚生労働省「福岡大臣会見概要(財務大臣折衝後)」
- 厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和5年10月)」
- 財務省「令和7年度社会保障関係予算のポイント」
和田 直子