2. 平均年収600万円の人の年金受給額は?

20歳〜60歳まで40年間働いた人の平均年収が600万円の場合、受け取れる年金額はいくらなのでしょうか。厚生年金の受給額の計算の仕方をおさえたうえで、実際に試算してみましょう。

2.1 厚生年金受給額の計算方法

厚生年金の受給額の計算式は、以下のとおりです。

  • 年金額=報酬比例部分+経過的加算+加給年金額

このうち、受給額の根幹となるのが「報酬比例部分」です。報酬比例部分は、以下のように計算します。

【厚生年金】報酬比例部分の計算式

【厚生年金】報酬比例部分の計算式

出所:日本年金機構「は行 報酬比例部分」をもとに筆者作成

  • 厚生年金の報酬比例部分の計算式
    報酬比例部分=A+B
    ・A(2003年3月までの加入期間):平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの加入期間月数
    ・B(2003年4月以降の加入期間):平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の加入期間月数
    ※平均標準報酬月額とは、2003年3月以前の加入期間について、計算の基礎となる各月の標準報酬月額の総額を、2003年3月以前の加入期間で割って得た額
    ※平均標準報酬額とは、 2003年4月以降の加入期間について、計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、2003年4月以降の加入期間で割って得た額

給与を32の区分に分けて示す「標準報酬月額」や税引前の賞与総額から1000円未満を切り捨てた「標準賞与額」をもとに、受給額を算出します。

計算式に報酬額や加入期間月数が含まれており、給与・賞与額や厚生年金保険の加入期間の長さが受給額に影響することがわかります。

2.2 平均年収600万円の人の年金受給額を試算

それでは、平均年収600万円の人の年金受給額を試算してみましょう。この記事では、以下の条件を追加して試算していきます。

  • 2003年4月以降に20歳で入社し、60歳で退職する
  • 厚生年金は報酬比例部分のみ受け取る

まずは、厚生年金の金額(報酬比例部分)を計算します。平均年収が600万円で厚生年金保険の加入期間が40年間(480ヵ月)の場合、平均標準報酬月額は「600万円×40年÷480ヵ月」で50万円です。

前述の報酬比例部分の計算式をもとに計算すると、受給金額は以下のようになります。

  • 50万円×5.481/1000×480ヵ月=131万5440円

年間131万5440円、月額10万9620円の厚生年金を受け取れます。

この金額に、基礎年金の受給額が加わります。基礎年金の受給額は2025年度で年間83万1696円、月額6万9308円です。よって、年金の合計受給額は以下のとおりです。

  • 131万5440円+83万1696円=214万7136円

年間214万7136円、月額17万8928円の年金を受給できます。

ここに企業年金やiDeCoのような私的年金が加われば、年金の合計受給額はさらに増えます。公的年金と私的年金で月額20万円超の年金を受給することも十分可能でしょう。

次章では、厚生年金の平均受給額を解説します。