老後の生活をどのように過ごすか、特に金銭面での不安を抱える方は多いのではないでしょうか。「老後資金はいくら必要なのか」「年金だけで生活できるのか」という疑問は、リタイア前の方々にとって大きな関心事です。

内閣府による最新の「高齢者の経済生活に関する調査」結果によると、60歳以上のおよそ64%が「経済的な面で不安がある」と答えており、その理由として収入や貯蓄の少なさや、医療介護費用が大きくなることを懸念しています。

経済的な不安を解消するためには、まずは自分自身の収支を知ることが重要です。

そこで本記事では、65歳以上の無職夫婦世帯の生活費と年金受給額の平均と、収支バランスについて解説します。ぜひご参考にしてください。

1. 老後生活費の実態

総務省統計局の「家計調査報告_家計収支編(2024年)」によると、65歳以上の無職夫婦世帯の消費支出の平均額は、月々約25万6000円となっています。

老後生活費の実態

老後生活費の実態

出所:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編」2024年(令和6年)平均結果の概要」

 

税金など、消費財以外に支払う費用である非消費支出を加えると、月に約28万7000円の支払いが必要であるという結果です。

消費支出のみの内訳は以下の通りです。

  • 食料費:29.8%
  • 交通・通信費:10.8%
  • 教養娯楽費:9.9%
  • 光熱・水道費:8.5%
  • 保険医療費:7.2%
  • 住居費:6.4%
  • 家具・家事用品費:4.8%
  • 被服及び履物費:2.2%
  • その他費用:20.4%(うち交際費9.3%)

2. リタイア後の収入源である老齢年金

現在の一般的な定年年齢である65歳を超えた、いわゆる「リタイア後」の人たちにとって、主な収入源となるのが老齢年金です。

次に、2025年度における、標準的な老齢年金の受給額例をみていきます。

  • 国民年金(老齢基礎年金(満額)):6万9308円(1人分※1)
  • 厚生年金:23万2784円(夫婦2人分)

※1昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額6万9108円(対前年度比+1300円)です。

厚生年金の年金額の例は、平均的な収入(平均標準報酬月額45万5000円、賞与を含む)で40年間勤務した場合に受け取る「老齢厚生年金」と「2人分の満額老齢基礎年金」に基づいたモデル金額です。

3. 65歳以降の夫婦二人世帯の収支

ここまで説明した収支をみてみると、65歳以上の夫婦二人世帯において、毎月の生活には赤字が出るという結果になっています。

さらに、この支出額は2024年時点の統計に基づいており、昨今の物価高騰の影響を考慮すると、2025年はさらに支出が増加することが予想されるため、赤字幅も拡大する可能性があります。

リタイア後は年金以外の収入を得ることが難しいため、それまでに貯蓄をしておくことや、老後の支出を見直すことにより、家計を維持する必要があります。

4. 支出の見直し方法

収入が増えることが少ない老後生活を安心して送るためには、支出の見直しが不可欠です。次に、主要な支出項目について、具体的な見直し方法を考えてみましょう。

4.1 食料費

食費は消費支出全体の約3割を占め、家計の中で最も大きな割合を占めています。食事は毎日のことであるため、少しの工夫を積み重ねることが重要です。

さらに、楽しみながら節約できる方法を見つけることで、苦しい思いをせずに費用を抑えることもできます。例として、少し遠くの安いスーパーまで散歩をしてみる、旬の食材を積極的に取り入れる、手の込んだ自炊をしてみる、などといったことが挙げられます。

4.2 光熱費

光熱費は、電気、ガス、水道といった、生活に欠かせないライフラインにかかる費用です。生活に支障が出過ぎないように、無理のない範囲で節約を心がけることが重要です。例として、使っていない部屋の電気をこまめに消す、シャワーや水道を出しっぱなしにしない、といったことが挙げられます。

4.3 教養娯楽費

教養娯楽費は、趣味やレジャーなど、生活を豊かにするために必要な費用です。なくても生きていけるものではありますが、無理に我慢するのではなく、費用を抑えながら楽しめる方法を見つけて、老後の生活の質を下げずに支出を下げていきましょう。例えば、公共施設を利用する、割引クーポンを活用する、などが考えられます。

4.4 保険医療費

老後の経済的な不安の要因として約30%もの人が挙げていたのが「保険医療費が掛かりすぎる」ことです。

しかし、実際の支出内訳を見ると、割合としては全体の7.2%で、10%にも届きません。確かに高齢になると医療や介護を受ける機会も増える傾向があります。しかし、日本の制度では介護費や医療費の自己負担額が大きくなりすぎないような仕組みが用意されているため、統計結果からもわかる通り、他の費用と比較して特別に介護医療費が大きくなるようなことはありません。

ただし、長期入院や高度な治療、特定の介護サービスなどで想定外の費用が発生する可能性もあるため、貯蓄や民間保険などにより一定の備えを検討することも大切です。

5. まとめにかえて

65歳以上の無職夫婦の平均的な家計収支はやや赤字が多くなっています。物価上昇や予期せぬ支出を考えると、ある程度の貯蓄は必要といえるでしょう。

老後の生活を安心して送るためには、収入と支出のバランスを見極め、無理のない範囲で支出を見直すことが重要です。特に、食費や光熱費といった生活必需品の支出は、工夫次第で大きく節約できる可能性があります。

また、年金だけでは不安がある場合は、健康状態や希望に応じて、パートタイムの仕事を探したり、副収入を得る方法を検討することも一つの選択肢です。

老後の生活は長期にわたるため、短期的な節約だけでなく、長期的な視点で家計管理を行うことが大切です。無理な節約はストレスにつながるため、自分たちのライフスタイルに合った支出のバランスを見つけることが、豊かな老後生活への鍵となるでしょう。

参考資料

斎藤 彩菜