2025年3月21日に総務省が公表した2020年を基準とした消費者物価指数の総合指数は、前年同月比で3.7%の上昇となりました。
こうした物価上昇の影響で、毎月の生活のやりくりに苦しんでいる世帯は多いのではないでしょうか。
現役世代の人たちは、大企業を中心に給与の引き上げなどの動きが見られます。公的年金においても、3年度連続で増額改定が決定しています。
また、低所得年金生活者へ支給される「年金生活者支援給付金」についても、2025年度の増額が決定しています。
本記事では、「年金生活者支援給付金」の対象となる条件の確認や実際いくら受け取れるのかについて解説していきます。
1. 年金が少ない人が対象「年金生活者支援給付金」とは?
「年金生活者支援給付金」とは、公的年金だけでは生活が困難な低所得の世帯を支援するための給付金で、年金支給日に合わせて支給されます。
なお、住民税非課税世帯への一時的な給付金とは異なり、年金生活者支援給付金は要件を満たしている限り継続的に支給される恒久的な支援制度です。
1.1 年金生活者支援給付金の種類は「3つ」
年金生活者支援給付金には、以下の3種類が存在します。
- 老齢年金生活者支援給付金(補足的老齢年金生活者支援給付金)
- 障害年金生活者支援給付金
- 遺族年金生活者支援給付金
それぞれの支給対象者について、確認しましょう。
2. 「年金生活者支援給付金」の対象者は?要件をチェック
年金生活者支援給付金には3つの種類があります。
それぞれの支給要件について、以下のように整理できます。
2.1 「老齢年金生活者支援給付金」の支給要件
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
-
前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は88万9300円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は88万7700円以下(※2)である。
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で78万9300円を超え88万9300円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で78万7700円を超え88万7700円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
2.2 「障害年金生活者支援給付金」の支給要件
- 障害基礎年金の受給者である
- 前年の所得が472万1000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額される)
※ 障害年金等の非課税収入は除く
2.3 「遺族年金生活者支援給付金」の支給要件
- 遺族基礎年金の受給者である
- 前年の所得が472万1000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額される)
※ 遺族年金等の非課税収入は除く
各年金生活者支援給付金は、前述の要件をすべて満たす場合に支給される対象となります。
次に、それぞれの給付金の給付額について詳しく見ていきましょう。
3. 【2025年4月分から増額】年金生活者支援給付金の給付額は2.7%アップ
公的年金と同様に、年金生活者支援給付金制度の給付額も毎年見直しが行われます。
2025年度の給付額は、前年の物価変動率に基づき2.7%の増額となっています。
年金生活者支援給付金の給付額

出所:厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします~年金額は前年度から 1.9%の引上げです~」
- 老齢年金生活者支援給付金:基準額:月額5450円
- 障害年金生活者支援給付金:障害等級1級6813円・2級5450円
- 遺族年金生活者支援給付金:月額5450円
なお、老齢年金生活者支援給付金については、前述の基準額を基に保険料納付状況に応じて算出されます。
具体的には、保険料の納付済期間や免除期間が影響し、実際に支給される給付額には個人差が生じます。
4. 70歳代の約4割が老後の生活設計を「全面的に公的年金に頼る」現状
厚生労働省の「生活設計と年金に関する世論調査」によると、老後の生活設計について「全面的に公的年金に頼る」と回答した割合は、60歳代で28.5%、70歳代で43.2%に上っています。
一方、金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査 2024」では、70歳代の二人以上世帯のひと月当たりの最低生活費が35万円であり、30.6%の人が「日常生活費をまかなうのも難しい」と回答しています。
年金生活者支援給付金の支給対象となった方には、日本年金機構から通知が届くため、届いた世帯はしっかりと受給して活用することが大切です。
ただし、年金生活者支援給付金は公的年金と同様に「申請しないと1円も受け取れない」ため、手続きは必ず行う必要があります。
次に、年金生活者支援給付金の申請方法について整理します。
5. 【対象者は必ず申請を】年金生活者支援給付金の請求方法
年金生活者支援給付金を受け取るためには、必ず申請手続きが必要です。
対象者には、お知らせを兼ねた請求書が届きますが、この書類を提出しないと「1円ももらえない」ため、注意が必要です。
今回は、「新規に年金を受給する人」と「既に年金を受給中の人」の2パターンについて解説します。※繰上げ受給を選択した人には、上記とは異なる様式の書類が届くため、その点もご確認ください。
5.1 ケース1:新規に老齢年金を受給する人
これから年金を受け取ることになる場合、年金生活者支援給付金の対象者には、老齢基礎年金の請求書に給付金請求書が同封されます。
その請求書に必要事項を記入し、老齢基礎年金の申請書と一緒に提出しましょう。
5.2 ケース2:既に年金を受給中の人
すでに年金を受給している方が、新たに年金生活者支援給付金の対象となった場合、毎年9月1日以降に「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次届きます。
請求書の所定の欄に必要事項を記入し、切手を貼って返送するようにしましょう。
一度申請手続きを行えば、基本的にその後は毎年の手続きは必要ありません。
ただし、支給要件を満たさなくなった場合には、「年金生活者支援給付金不該当通知書」が送付され、支給が停止されます。
「自分は支給対象か不明」「支給対象のはずなのに請求書が届かない」といった疑問がある場合は、年金事務所などに相談するとよいでしょう。
次に、現在のシニア世代がどの程度の年金を受け取っているのかについても確認していきます。
6. 【老齢年金】シニア世代の「国民年金・厚生年金」平均額を一覧で見る
ここからは厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考に、国民年金と厚生年金(※)の受給額を「60歳~90歳以上の5歳刻みの平均月額」と、「すべての年齢の平均月額」に分けて見ていきます。
※厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されており、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介します。
6.1 【年齢階級別】「国民年金・厚生年金」5歳刻みの平均はいくら?
国民年金
- 60~64歳:4万4836円
- 65~69歳:5万9331円
- 70~74歳:5万8421円
- 75~79歳:5万7580円
- 80~84歳:5万7045円
- 85~89歳:5万7336円
- 90歳以上:5万3621円
厚生年金
※国民年金部分を含む
- 60~64歳:7万5945円
- 65~69歳:14万7428円
- 70~74歳:14万4520円
- 75~79歳:14万7936円
- 80~84歳:15万5635円
- 85~89歳:16万2348円
- 90歳以上:16万721円
64歳までの年金額は、繰上げ受給をしている方や、特別支給の老齢厚生年金を受給している方が対象となるため、65歳以上の年齢層と比較して低めの金額になります。
一般的に年金が開始される65歳以上の平均月額は、国民年金(老齢基礎年金)のみを受給している方が約5万円台、厚生年金(国民年金部分を含む)を受給している方が約14万円台から16万円台となります。
これらの金額はあくまで「各年齢層」の平均値であり、実際の受給額はその人の年金加入状況や勤続年数により個人差が生じますので、参考程度に考慮することが大切です。
次に、60歳から90歳以上の全ての年齢層における平均月額を見ていきます。
6.2 【60歳~90歳以上】「国民年金・厚生年金」全体・男女別の平均はいくら?
国民年金の平均月額
- 全体 5万7584円
- 男性 5万9965円
- 女性 5万5777円
厚生年金の平均月額
- 全体 14万6429円
- 男性 16万6606円
- 女性 10万7200円
国民年金のみを受給している方の平均月額は、全体および男女別ともに5万円台となっているため、一定の条件を満たすと、老齢年金生活者支援給付金の支給対象となる可能性があります。
一方、厚生年金の受給者の場合、全体の平均月額は14万円台でした。
国民年金のみを受給している方と比べると受給額は高めですが、男女別で見ると男性は16万円台、女性は10万円台となり、かなりの差があります。
厚生年金の個人差をチェック
また、厚生年金の受給額には個人差が大きく、月額3万円未満から25万円超まで、さまざまな受給額帯に分布しています。
受給額によっては、厚生年金を受け取っている場合でも、老齢年金生活者支援給付金の支給対象となる可能性があります。
7. まとめにかえて
今回は「年金生活者支援給付金」について制度の内容や支給要件、支給額などを確認しました。
また、老齢年金(国民年金・厚生年金)についても、今のシニア世代が月額どれくらい受け取っているのかを見てきました。
ひとことで「老後」といっても、その暮らしぶりを明確に想像するのは難しいです。だからこそ、できるだけ安心して老後を迎えられるように「準備」が必要です。
まずは、ねんきん定期便やねんきんネット、公的年金シミュレーターなどで将来の年金受給額を調べてみましょう。年金制度は見直しが行われますし、将来的な年金給付水準は現時点ではわかりませんが、大まかでも老後の収入額が把握することで、目標が立てやすくなります。
そして、定期的にご自身の年金受給額を確認しながら、老後対策も見直しを繰り返していくと良いでしょう。







