物価上昇が続く一方で、賃上げのペースが追いつかず、日々の生活費のやりくりが厳しくなっていると感じる人も多いのではないでしょうか。
限られた収入の中で、家計を切り詰めながらも、将来のための資産形成を考えなければならない現役世代にとって、住宅購入資金や教育資金、そして老後生活資金の準備は大きな課題となっています。
特に、住宅購入や教育費はある程度の目安が立てやすいものの、老後生活資金はどれくらい必要なのか明確にイメージしにくいのが現状です。「年金だけで足りるのか」「どのくらい貯蓄があれば安心なのか」など、不安を感じながらも具体的な数字を把握していない人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、老後生活資金の必要額を明確にするために、現役世代が知っておくべき老後のリアルなお金事情をご紹介します。
元銀行員で老後資産形成アドバイスを専門にしていた筆者が、生活費の内訳・貯蓄額・退職金・年金月額といった主要なデータを最新の統計を活用しながら、詳しく解説します。
ぜひ将来のライフプラン設計の参考にしてみてください。
1. 65歳以上の無職夫婦世帯のリアル(その1)「ひと月の支出・収入はいくら?」
2025年3月11日、総務省統計局は「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」を公表しました。ここから、65歳以上無職夫婦世帯のひと月の家計収支を見てみましょう。
毎月の実収入:25万2818円
■うち社会保障給付(主に年金)22万5182円
毎月の支出:28万6877円
■うち消費支出:25万6521円
- 食料:7万6352円
- 住居:1万6432円
- 光熱・水道:2万1919円
- 家具・家事用品:1万2265円
- 被服及び履物:5590円
- 保健医療:1万8383円
- 交通・通信:2万7768円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万5377円
- その他の消費支出:5万2433円
- 諸雑費:2万2125円
- 交際費:2万3888円
- 仕送り金:1040円
■うち非消費支出:3万356円
- 直接税:1万1162円
- 社会保険料:1万9171円
毎月の家計収支
- 3万4058円の赤字
この世帯の場合、支出の合計は28万6877円。そのうち社会保険料や税などの「非消費支出」が3万356円、いわゆる「生活費」にあたる消費支出が25万6521円でした。
一方で、ひと月の収入は25万2818円。その約9割(22万5182円)を社会保障給付(主に公的年金)が占めますが、結果的には毎月3万4058円の赤字となります。貯蓄の切り崩しなどでカバーが必要となるでしょう。
ただし上記の支出の内訳には「介護費用」が含まれておらず、住居費も1万円台となっており、世帯によってはさらにまとまった支出が発生する可能性があります。
そこで気になるが「老齢年金世代」の貯蓄事情です。次では65歳以上世帯の貯蓄額データを見ていきましょう。