3. 60歳代・70歳代でも「貯蓄3000万円超世帯」は少数派

調査結果から、「貯蓄3000万円以上の世帯」の割合は、50歳代以下と比較して60歳代・70歳代で高くなる傾向が見られます。

しかし、その割合はどちらの年代でも約20%にとどまり、5世帯に1世帯程度にすぎません。  

60歳代・70歳代の中には、退職金や相続を受け取ることで一時的に貯蓄額が増えた世帯もあるでしょう。

それでも、多くの世帯にとって貯蓄3000万円を確保することは決して容易ではありません。  

老後に必要な資金は家庭ごとに異なりますが、長寿社会においては、低金利や物価上昇の影響を考慮する必要があり、公的年金だけでは将来に不安を感じるのも無理のないことです。  

安心してセカンドライフを迎えるためには、現役のうちから計画的に資産形成を進めることが重要です。

ここからは、貯蓄3000万円を目指すための積立投資のシミュレーションを見ていきましょう。

4. 【積立投資シミュレーション】いくら投資すれば3000万円に到達できる?

ここからは、金融庁が提供する「つみたてシミュレーター」を活用し、60歳までに3000万円を目指す積立投資のプランを検討してみましょう。  

年利4%で運用できたと仮定し、目標額を達成するために必要な月々の積立額を、投資期間ごと(5年刻み)に比較していきます。

積立を始めるタイミングによって必要な負担がどの程度変わるのか、具体的なシミュレーションを見ていきましょう。

【写真全5枚中5枚目】3000万円を達成するのに必要な積立額や投資期間【シミュレーション結果】

【写真全5枚中5枚目】3000万円を達成するのに必要な積立額や投資期間【シミュレーション結果】

出所:金融庁「つみたてシミュレーター」をもとにLIMO編集部作成

4.1 シミュレーション結果:【投資開始年齢:投資期間・月々の積立額】

  • 30歳:30年・4万3225円
  • 35歳:25年・5万8351円
  • 40歳:20年・8万1794円
  • 45歳:15年・12万1906円

積立投資は、運用期間が長いほど毎月の負担を軽減できるのが特徴です。  

例えば、「60歳で3000万円」を目標とした場合、45歳から積立を開始すると、毎月12万1906円の積立が必要になります。

一方で、30歳からスタートすれば、月々の積立額は4万3225円に抑えられます。

早い段階で投資を始めることで、負担を少なくしながら継続しやすくなるでしょう。  

また、毎月一定額を積み立てる方法では、価格が高いときには少なく、価格が安いときには多く購入する仕組みになっています。

この仕組みにより、価格変動の影響を抑えつつ、効率的に資産を増やすことが可能です。  

こうした「時間を活用する」「価格変動を味方につけてリスクを分散する」といった特長こそが、積立投資の大きなメリットと言えるでしょう。

4.2 「複利効果」で資産をじっくりと育てよう

積立投資は、長い運用期間を確保することで複利の力が働き、資産を大きく成長させる効果が期待できます。  

例えば、30歳から毎月4万3225円を積み立てると、元本は約1555万円ですが、運用益が約1445万円となり、合計で目標の3000万円に到達します。  

一方、45歳から積立を始めた場合、元本は約2194万円、運用益は約806万円にとどまります。

積立期間が短くなることで運用益の伸びが抑えられ、その分元本の負担が大きくなることが分かります。  

資産運用はできるだけ長期的な視点で取り組むことが重要です。

時間を味方につけ、複利の効果を最大限に活用しながら、効率的に資産を増やしていきましょう。  

※ただし、資産運用には元本割れのリスクが伴います。預貯金とは異なり、将来の運用成績が保証されているわけではないことを十分に理解しておくことも大切です。

5. FPからの提案

3000万円以上という金額を準備できている60歳代、70歳代はおよそ5世帯に1世帯でした。やはり3000万円以上もの資産を積み上げるのは簡単ではないことがわかりますね。

しかし、冒頭で触れたとおり、物価上昇を考えると老後資金はしっかりと準備しておきたいです。

効率良く資産形成を進めるために、「お金に働いてもらう」ことも検討してみると良いでしょう。

老後に必要な目標の金額を設定し、運用できる年数や運用できる金額などから、どれくらいのリスクを取るべきかまでを逆算し、スタートしていくことが重要です。

預貯金は一定の安心感はあるものの、資産を増やすという点においては不向きだと言わざるを得ません。大きなお金を作り出すには、時間をかけてお金を働かすことがポイントです。

とはいえ、全ての資産をリスクのある商品で運用するのは危険です。預貯金と運用資産と分けておきましょう。

参考資料

荻野 樹