3. 完成まで2年かけた雪中用漆具三式
ユニークで美しい作品で多くの人を驚かせた雪中用漆具三式。
そんな雪中用漆具三式を制作した経緯について聞いてみると、「工芸は需要が減り、後継者を養えないので後継者を取らない…そんな流れで潰れていく工房がたくさんあります。今の時代に合っている工芸とは、『自分がお金を払ってでも欲しくなるもの』『漆芸は使ってこその魅力があるのではないか』と考えました」
さらに続けて、「そして、ウィンタースポーツはストリートカルチャーの流れから来ている唯一無二の"スタイル"を大切にするスポーツです。工芸も唯一無二でかっこいいものですので、相性が絶対にいい、自分が欲しいと思い制作しました」と杜野さんは説明します。
完成までの期間は約2年間。苦労した点については、「加飾も大変でしたが、1番時間がかかっていて、大変なのは塗りです。何度も塗りと研ぎを繰り返していました。地味な話ですが、クジラや目玉焼きをぷっくりと盛り上げるのも大変でした」とのこと。
こだわった点は、「使えることにとにかくこだわりました。スノーボード、スキーとして性能を落とさないように、ソールやエッジ周りは触れず、ビンディングにも干渉しないようになど、かなり工夫しました。自分が使うように制作しているので、自分が欲しいデザイン、ゲレンデで使いたいデザインをひたすら追い求めました。さらに、一般の人にも工芸を面白いかっこいいと思えるデザインにしました。3種類のデザインをバラバラにしたのもそれです」と熱く語ってくれました。
今回の投稿の返信や引用欄では、「めちゃくちゃ格好良い」「伝統工芸の新しい活かし方」といった具合に、絶賛するコメントが続出しています。
卒業制作
— 杜野菫 (@sumire_morino) February 9, 2025
雪中用漆具三式 pic.twitter.com/SDrGQkaPjZ
4. 伝統的工芸品の2020年度の生産額は870億円
漆芸のウィンタースポーツ用品が話題となったことに関連し、ここからは伝統的工芸品の生産額を紹介します。
伝統的工芸品とは、伝統的な技術や技法、原材料を用いて作られた、主に日常生活で使用する工芸品のこと。経済産業大臣の指定を受けたもののみが伝統的工芸品と呼ばれ、漆器では輪島塗や津軽塗、会津塗などが指定されています。
文化庁「経済産業省説明資料」によると、2020年度の伝統的工芸品の生産額は870億円。2016年度に1000億円を下回って以降、減少傾向にあります。
いかがだったでしょうか。今回は、Xで話題になっている漆芸のウィンタースポーツ用品を紹介しました。
参考資料
小野田 裕太