3. 手取り金額で保険料のもとが取れるのは何年後?
もし手取り年金額が月あたり約13万円だった場合、何年受給すれば保険料のもとを取れるのでしょうか。
厚生年金保険料は「標準報酬月額×18.3%」で算出されます。保険料は事業主と折半して収めるため、実質負担額は「標準報酬月額×9.15%」です。そのため、まずは標準報酬月額を算出する必要があります。
2003年4月以降に厚生年金保険に加入したとしましょう。基礎年金が令和6年度満額分の年間81万6000円、厚生年金(基礎年金除く)が年間98万4000円で、合計180万円(月額15万円)の年金を受け取っている場合、平均標準報酬月額は以下のとおりになります。
- 98万4000円÷(5.481/1000×480)≒37万4019円
上記の場合、標準報酬月額は38万円となります。よって、標準報酬月額別の厚生年金保険料(折半額)は、以下のとおりです。
- 38万円×9.15%=3万4770円
40年間上記の保険料を納めたと仮定すると、保険料の合計額は以下のようになります。
- 3万4770円×480ヶ月=1668万9600円
年間受給額が180万円ですから、約9年でもとが取れる計算です。ただし、企業負担分も含めた厚生年金保険料全額のもとを取るには、2倍の18年かかる点に注意が必要です。
実際には、昇給のタイミングやそのときに区分される標準報酬月額によって、もとが取れるまでの期間に多少のズレがあると考えられます。このほか、年金を繰上げ・繰下げ受給するかどうかや、基礎年金額算定の基準となる賃金・物価の伸びなども、もとを取るまでの期間に影響します。
近年の平均寿命の伸びから考えれば、年金受給で保険料のもとが取れる可能性はありますが、決して確実にもとが取れるとはいい切れないでしょう。
4. まとめ
「厚生年金月額15万円」は、平均額を上回る金額です。しかし、実際に受け取れるのは13万円ほどで、約2万円が税金・社会保険料として差し引かれます。
今後、税金や社会保険料の負担が増えれば、手取り額はさらに減少するでしょう。公的年金に頼らない資産づくりが重要になるのと同時に、国民に過度な負担を強いることのない財政運営が求められます。
参考資料
- 厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 国税庁「高齢者と税(年金と税)」
- 日本年金機構「年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税および森林環境税を特別徴収されるのはどのような人ですか。」
- 新宿区「住民税について」
- 新宿区「保険料の計算方法について」
- 新宿区「介護保険料の決まり方」
- 日本年金機構「厚生年金保険料額表」
- 日本年金機構「は行 報酬比例部分」
- 全国健康保険協会「令和6年3月(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
石上 ユウキ