6. 【70歳代】二人以上世帯の貯蓄額《平均・中央値》はいくら?
かつて「老後2000万円問題」が注目を浴びたことをきっかけに、この金額は夫婦の老後資金の一つの目安とされることが増えました。
ちなみに金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」によると、70歳代(二人以上世帯)が考える「年金支給時に最低準備しておく金融資産残高」は平均1738万円でした。
一方、70歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額は1923万円となっています。しかし、平均は一部の大きな値に引っ張られやすい性質があります。より実態に近い貯蓄額とされる中央値で見てみると、800万円でした。
【写真全5枚】1枚目/【貯蓄額の円グラフ】70歳代・二人以上世帯、2枚目/厚生年金の平均月額グラフ

出所:金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」をもとにLIMO編集部作成
※「金融資産を保有していない世帯」を含めたデータです。
※上記、金融資産には預貯金以外の株式や投資信託、債券などの金融商品残高が含まれます。
6.1 70歳代二人以上世帯の貯蓄平均値と中央値
- 平均:1923万円
- 中央値:800万円
平均値と中央値でもわかりにくい実態を知るには、貯蓄額ごとの世帯割合が参考になります。
6.2 70歳代二人以上世帯における、貯蓄額ごとの世帯割合
- 金融資産非保有:20.8%
- 100万円未満:5.4%
- 100~200万円未満:4.9%
- 200~300万円未満:3.4%
- 300~400万円未満:3.7%
- 400~500万円未満:3.7%
- 500~700万円未満:4.9%
- 700~1000万円未満:6.4%
- 1000~1500万円未満:10.2%
- 1500~2000万円未満:6.6%
- 2000~3000万円未満:8.9%
- 3000万円以上:19.0%
- 無回答:3.5%
同調査によると、70歳代・二人以上世帯の19.0%が「貯蓄3000万円以上がある」と回答。その一方で、「貯蓄がまったくない(金融資産非保有)」世帯も20.8%。両者はほぼ同じ割合で存在しています。
また、平均は1923万円ですが、より実態を反映しやすい中央値に目を向けると800万円にまで下がります。
こうしたデータから、70歳代の貯蓄事情は「持つ世帯」と「持たざる世帯」の二極化が如実に表れていると言えそうです。
年金額同様、必要となる老後資金には世帯差・個人差があります。「2000万円」という数字は、一つの目安に過ぎません。ライフスタイルや健康状態も考慮したうえで、無理なく、そして効率よく老後資金を準備する方法を見つけていけたら良いですね。
7. まとめにかえて
今回は、今のシニア世代の年金額や、70歳代・二人以上世帯の貯蓄事情に関するデータを眺めてきました。
公的年金だけで老後を暮らせる世帯は、決して多数派ではないと言えそうです。現役時代のころから、計画的な資金準備を進めておけると良いですね。
超低金利が続くいま、銀行などの預貯金で資産を増やすことは難しく、インフレ時には資産価値が目減りするリスクがあります。そんな今、「資産運用」を活用してお金を育てていくのも選択肢の一つでしょう。
ただし、資産運用は預金とは異なり、価格変動リスクや元本割れリスクなどが伴います。NISAやiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)といった非課税制度を活用する場合は、そのリスクを理解したうえで、ご自身に合う制度や金融商品を選んでいきましょう。
参考資料
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」
- 日本年金機構「年金の繰上げ受給」
奥田 朝