理想の老後生活を実現するためには、やはりお金が大切です。
多くの世帯にとって、老後生活を支えるメインの柱となるのは公的年金でしょう。一方で「年金だけで老後生活を乗り切れるのか?」という疑問の声も。
金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査 2024」では、二人以上世帯のうち70歳代の30.6%が「日常生活費程度もまかなうのが難しい」と回答しています。
また年金ではゆとりがないと考える世帯が「不安を感じる理由」は「物価上昇で支出が増えると見込んでいるから」が62.8%と最多です。
モノやサービスの価格高騰は、シニアの日常生活にも確実に影響を与えていることが分かります。働き盛りの現役世代は、長寿時代への備えをより丁寧に進めていく必要があるでしょう。
今回は、今のシニア世代が老齢年金をどの程度受け取れているか、最新の年金額例のデータを整理してお伝えしたあと、70歳代世帯の貯蓄事情を見ていきたいと思います。
1. 【4月分から年金は1.9%増額】最新版《2025年度の年金額例》を見る
公的年金額は物価や現役世代の賃金を考慮して、年度ごとに見直されるルールです。2025年度の年金額は、前年より1.9%引き上げられることが決まっています(※)。
※厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」2025年1月25日公表
1.1 最新版《2025年度の年金額例》を見る
厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」によると、モデル夫婦世帯(※1)は夫婦2人分で月額23万2784円。国民年金の満額(※2)は月額6万9308円です。
夫婦ともに国民年金(満額と仮定)を受け取る世帯の場合、2人分の合算額はひと月13万8616円となります。
この改定率が適用される年金は、いつ支給される分からでしょうか。
※1 男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45.5 万円)で 40 年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準
※2 国民年金保険料を全期間(480カ月)納付した場合に65歳以降で受給できる年金額
2. 【4月分から年金は1.9%増額】振込はいつ?
改定された「4月分」の年金が支給されるのは「6月13日 金曜日」の支給日です。
3月は年金支給はなく、次回は「4月15日 火曜日」に、2月・3月分がまとめて支給されます。この2月・3月分は改定前(2024年度分)の年金額です。
公的年金(国民年金・厚生年金)ならびに「年金生活者支援給付金(※)」の支給は「偶数月の15日」。15日が土日・祝日の場合は直前の平日に前倒しとなります。
基本的には「前月までの2カ月分」がまとめて支給される決まりです。2025年(令和7年)の年金支給日カレンダーを見てみましょう。
※年金生活者支援給付金:公的年金等の収入金額やその他の所得が一定基準額以下の人を対象して、年金に上乗せして支給される給付金
2.1 【一覧表】2025年の年金支給日カレンダー。4月分が支給されるのは「6月13日」です
【一覧表】2025年の年金支給日カレンダー

出所:日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」などをもとにLIMO編集部作成
支給日:支給対象月
- 2025年2月14日(金):12月・1月
- 2025年4月15日(火) :2月・3月分
- 2025年6月13日(金) :4月・5月分
- 2025年8月15日(金) :6月・7月分
- 2025年10月15日(水) :8月・9月分
- 2025年12月15日(月) :10月・11月分
では、改定された年金の振込額は、いつ・どうやって知ることができるのでしょうか。次で見ていきましょう。
3. 振込額はいつ分かる?年金額改定通知書・年金振込通知書
先述の通り、新年度(4月分)の年金が支給されるのは6月。このタイミングに合わせて「年金額改定通知書」と「年金振込通知書」により、改定後の年金額が通知されます。
3.1 年金額改定通知書と年金振込通知書でわかること
- 年金額改定通知書:改定後の金額
- 年金振込通知書:変更後の振込額
※年金と年金生活者支援給付金を同時に受給している方は「「改定通知書」と「振込通知書」(はがきサイズ)」を一つにまとめた大判はがきが届きます。
3.2 昨年の発送スケジュール
昨年は2024年6月5日(水曜)~6月10日(月曜)にかけて順次発送されました。ただし地域により異なり、また郵便事情を考慮して3日~9日程度はみた方がよいとのことです。
また、5月分以降の年金が在職中で支給停止になる方など、一部の方は2024年5月2日(木曜)~2024年5月7日(火曜)に発送されています。
3.3 昨年のねんきんネットでの表示
ねんきんネットであれば、2024年6月7日(金曜)から年金額改定通知書と年金振込通知書の内容の確認が可能でした。
パソコンやスマートフォンで、基本的に24時間365日確認することができます。まだ利用したことがない方は、これを機会にログインして活用してみるのも良いでしょう。
※上記はいずれも昨年(2024年)のスケジュールです。2025年の発送・表示開始予定はまだ公表されていませんので、上記を参考にしてみてください。
次では、今のシニア世代が実際に受け取っている年金額について、各年齢の平均月額を見ていきます。
4. 【老齢年金一覧表】厚生年金《60歳~90歳以上》の年齢別平均月額はいくら?
ここからは厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考に、現在のシニアが受け取っている年金額について1歳刻みで確認していきましょう。
まずは厚生年金の年金月額(※)についても見ていきます。
※ここでご紹介する厚生年金の年金月額には、国民年金の月額部分が含まれています。また、厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されており、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介します。
4.1 【老齢年金一覧表】厚生年金《60歳代》の年齢別平均月額はいくら?
- 60歳:9万6492円
- 61歳:10万317円
- 62歳:6万3244円
- 63歳:6万5313円
- 64歳:8万1700円
- 65歳:14万5876円
- 66歳:14万8285円
- 67歳:14万9205円
- 68歳:14万7862円
- 69歳:14万5960円
4.2 【老齢年金一覧表】厚生年金《70歳代》の年齢別平均月額はいくら?
- 70歳:14万4773円
- 71歳:14万3521円
- 72歳:14万2248円
- 73歳:14万4251円
- 74歳:14万7684円
- 75歳:14万7455円
- 76歳:14万7152円
- 77歳:14万7070円
- 78歳:14万9232円
- 79歳:14万9883円
4.3 【老齢年金一覧表】厚生年金《80歳代》の年齢別平均月額はいくら?
- 80歳:15万1580円
- 81歳:15万3834円
- 82歳:15万6103円
- 83歳:15万8631円
- 84歳:16万59円
- 85歳:16万1684円
- 86歳:16万1870円
- 87歳:16万2514円
- 88歳:16万3198円
- 89歳:16万2841円
4.4 【老齢年金一覧表】厚生年金《90歳以上》の平均月額はいくら?
- 90歳以上:16万721円
上記の厚生年金の年金月額には、いずれも国民年金部分が含まれています。65歳以上の各年齢で、平均年金月額は14万円台~16万円台です。
64歳までの受給権者は、特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢が引き上げられたため、報酬比例部分のみ受給している人(※)や、繰上げ受給をしている人の年金額となるため、低くなっています。
※ 特別支給の老齢厚生年金:昭和60年の法改正により厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられた際、受給開始年齢を段階的に引き上げるために設けられた制度。年齢など一定条件を満たす場合に受け取ることができます。
5. 【老齢年金一覧表】国民年金《60歳~90歳以上》の年金平均月額はいくら?(1歳刻みで見る)
次に、自営業者やフリーランス、専業主婦など、厚生年金加入期間がない人が受給する「国民年金のみ」の平均月額について紹介します。
5.1 【老齢年金一覧表】国民年金《60歳代》の年齢別平均月額はいくら?
- 60歳:4万3638円
- 61歳:4万4663円
- 62歳:4万3477円
- 63歳:4万5035円
- 64歳:4万6053円
- 65歳:5万9599円
- 66歳:5万9510円
- 67歳:5万9475円
- 68歳:5万9194円
- 69歳:5万8972円
5.2 【老齢年金一覧表】国民年金《70歳代》の年齢別平均月額はいくら?
- 70歳:5万8956円
- 71歳:5万8569円
- 72歳:5万8429円
- 73歳:5万8220円
- 74歳:5万8070円
- 75歳:5万7973円
- 76歳:5万7774円
- 77歳:5万7561円
- 78歳:5万7119円
- 79歳:5万7078円
5.3 【老齢年金一覧表】国民年金《80歳代》の年齢別平均月額はいくら?
- 80歳:5万6736円
- 81歳:5万6487円
- 82歳:5万6351円
- 83歳:5万8112円
- 84歳:5万7879円
- 85歳:5万7693円
- 86歳:5万7685円
- 87歳:5万7244円
- 88歳:5万7076円
- 89歳:5万6796円
5.4 【老齢年金一覧表】国民年金《90歳以上》の平均月額はいくら?
- 90歳以上:5万3621円
国民年金の平均年金月額は、65歳以降のすべての年齢で約5万円台でした。64歳までは繰上げ受給(※)を選んだ人の年金額となるため、4万円台と低めです。
老後の年金額は、現役時代の働き方、年収などにより個人差が出ます。世帯の年金見込み額を、ねんきんネットやねんきん定期便で把握しておくことは、リタイア後に向けた貯蓄準備への第一歩となるでしょう。
老後に受け取る年金額には世帯差がありますが、不足分は「働き続ける」「不労所得で補う」「貯蓄を取り崩す」などでカバーする必要があります。
その中でも「貯蓄」は基本となる要素と言えるでしょう。そこで次では、70歳代世帯の貯蓄事情についても見ていきます。
※繰上げ受給:老齢年金を60歳~64歳までで前倒しして受け取ること。繰上げた月数に応じて年金が減額(0.4%/月)され、一度決まった減額率は生涯変わりません。
6. 【70歳代】二人以上世帯の貯蓄額《平均・中央値》はいくら?
かつて「老後2000万円問題」が注目を浴びたことをきっかけに、この金額は夫婦の老後資金の一つの目安とされることが増えました。
ちなみに金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」によると、70歳代(二人以上世帯)が考える「年金支給時に最低準備しておく金融資産残高」は平均1738万円でした。
一方、70歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額は1923万円となっています。しかし、平均は一部の大きな値に引っ張られやすい性質があります。より実態に近い貯蓄額とされる中央値で見てみると、800万円でした。
【写真全5枚】1枚目/【貯蓄額の円グラフ】70歳代・二人以上世帯、2枚目/厚生年金の平均月額グラフ12/12
出所:金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」をもとにLIMO編集部作成
※「金融資産を保有していない世帯」を含めたデータです。
※上記、金融資産には預貯金以外の株式や投資信託、債券などの金融商品残高が含まれます。
6.1 70歳代二人以上世帯の貯蓄平均値と中央値
- 平均:1923万円
- 中央値:800万円
平均値と中央値でもわかりにくい実態を知るには、貯蓄額ごとの世帯割合が参考になります。
6.2 70歳代二人以上世帯における、貯蓄額ごとの世帯割合
- 金融資産非保有:20.8%
- 100万円未満:5.4%
- 100~200万円未満:4.9%
- 200~300万円未満:3.4%
- 300~400万円未満:3.7%
- 400~500万円未満:3.7%
- 500~700万円未満:4.9%
- 700~1000万円未満:6.4%
- 1000~1500万円未満:10.2%
- 1500~2000万円未満:6.6%
- 2000~3000万円未満:8.9%
- 3000万円以上:19.0%
- 無回答:3.5%
同調査によると、70歳代・二人以上世帯の19.0%が「貯蓄3000万円以上がある」と回答。その一方で、「貯蓄がまったくない(金融資産非保有)」世帯も20.8%。両者はほぼ同じ割合で存在しています。
また、平均は1923万円ですが、より実態を反映しやすい中央値に目を向けると800万円にまで下がります。
こうしたデータから、70歳代の貯蓄事情は「持つ世帯」と「持たざる世帯」の二極化が如実に表れていると言えそうです。
年金額同様、必要となる老後資金には世帯差・個人差があります。「2000万円」という数字は、一つの目安に過ぎません。ライフスタイルや健康状態も考慮したうえで、無理なく、そして効率よく老後資金を準備する方法を見つけていけたら良いですね。
7. まとめにかえて
今回は、今のシニア世代の年金額や、70歳代・二人以上世帯の貯蓄事情に関するデータを眺めてきました。
公的年金だけで老後を暮らせる世帯は、決して多数派ではないと言えそうです。現役時代のころから、計画的な資金準備を進めておけると良いですね。
超低金利が続くいま、銀行などの預貯金で資産を増やすことは難しく、インフレ時には資産価値が目減りするリスクがあります。そんな今、「資産運用」を活用してお金を育てていくのも選択肢の一つでしょう。
ただし、資産運用は預金とは異なり、価格変動リスクや元本割れリスクなどが伴います。NISAやiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)といった非課税制度を活用する場合は、そのリスクを理解したうえで、ご自身に合う制度や金融商品を選んでいきましょう。
参考資料
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」
- 日本年金機構「年金の繰上げ受給」
奥田 朝
