韓国サムスン電子が2017年5月に、ファンドリービジネスを事業部に昇格させてから2年目に入った。先端ロジック分野では競合の台湾TSMCとの熾烈な競争を行いつつ、これまで以上に8インチや特殊プロセスでの受注獲得を図っていく姿勢を鮮明にし、「先端プロセス」と「レガシープロセス」の両輪で事業を拡大させていくことを強調した。

17年に専門組織を設立

 同社は以前までメモリ事業部とシステムLSI事業部の2部門で事業を展開していたが、17年にシステムLSI事業のなかにあったファンドリー事業を専門組織として分離。ファンドリー事業部として17年5月から新たなスタートを切った。同事業部には製造機能はもちろんのこと、開発やセールス部門も含まれており、一体運営を強く意識した組織体制となっている。

 事業部としてのスタートは17年からだが、同社のファンドリー事業が業界に認知され始めたのはアップルのiPhone向けプロセッサーの受託生産が明らかになってからであり、すでに10年近い実績を有している。

 ファンドリー事業部設立をきっかけに、同社では自社のファンドリー事業を外部にアピールすべく、プライベートイベント「Samsung Foundry Forum」を世界各地で開催。日本でも17年から開催しており、今年で2度目の開催となった。

 ファンドリー事業では、先端ロジック分野において微細化を引き続き推し進めていく一方、8インチや特殊プロセスに関してもプロセスのバリエーションを強化し、顧客からの受注拡大に努めている。

 現在は10nm世代を主体に生産、8nm(8LPP)に関してもすでに量産化。改良版の「8LPU」も追加し、顧客からの受注拡大を目指している。今後に向けては、5/4nmの対応を進める考えで、19年中のリスク生産開始を予定する。

EUVの生産性向上をアピール

 7nm世代から導入を開始するEUVリソグラフィー技術に関しては、生産性の向上が進んでいるとした。具体的には18年中に1日あたり1000枚のスループットを目指すほか、19年には1300枚、1500枚の目標を掲げており、EUVで最大のネックとされる生産性の向上に自信を見せた。なお、同社では華城地区にEUV専用棟となる新棟を建設中。19年末に完成し、20年から生産を開始する計画

 同社はファンドリー事業部設立当時から、5年以内にファンドリー業界で2番手に位置すること、業界シェアで25%の獲得を目指してきた。これに関し具体的な言及はなかったものの、「18年は100億ドル以上の売上高を見込んでいる」(ファンドリー事業部ヴァイスプレジデントのRyan Lee氏)という。これは同社システムLSI事業部を顧客として位置づけているもので、純粋な外部顧客企業からの売り上げは明かさなかった。

8インチ能力を積極拡張

 先端プロセスに注力する一方、これまで以上に強調したのが、8インチや特殊プロセスを用いたファンドリー事業だ。特殊プロセスに関しては、300mmウエハーベースのFDSOI(完全空乏型シリコン・オン・インシュレーター)プロセスを展開。8インチに関しても、器興地区にある工場(第6ライン)をファンドリー向けに全面的に開放することで、これまで以上に積極的な事業展開を図っていく。

 8インチの生産能力にも意欲を見せており、17年末に月産19万枚であったキャパシティーを、21年に同35万枚と4年間で1.8倍に拡張する計画だ。

TSMCに対抗できる唯一の勢力

 ファンドリー業界は先端プロセスにおいては、米グローバルファウンドリーズ(GF)が7nm世代の開発の無期限延期を発表したほか、台湾UMCも先端プロセス開発から距離を置くスタンスを見せ始めるなど、トップのTSMCの独走態勢がより強固なものとなってきている。唯一の対抗勢力となったサムスン電子が今後、ファンドリー業界でどう仕掛けていくのか、今後も注目されるところだ。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳