年金の支給額ばかりに目が行きがちですが、実際に受け取る額は、そこから控除されるお金を差し引いたものになります。社会保険料や税金など、年金から引かれるお金にはどんなものがあるのでしょうか?
支給額だけでなく、控除される内容をしっかり理解しておくことで、老後の生活設計に役立てましょう。
今回は、2024年度から新たに徴収される「森林環境税」も含めて詳細を分かりやすく解説します。
1. 年金から天引きされる「4つのお金」とは?
老後に受け取る年金も、現役時代と同じように税金や社会保険料が差し引かれます。具体的には以下の4つです。
【年金から天引きされるもの】
- 所得税
- 住民税・森林環境税(2024年度から特別徴収)
- 健康保険料(国民健康保険料や後期高齢者医療保険料)
- 介護保険料
年金の支給額からこれらが天引きされるため、手取り額は控除後の金額になります。次は、それぞれについて詳しくみていきましょう。
1.1 年金から天引きされるお金1:所得税
年金から天引きされる税金の一つに「所得税」があります。所得税は、個人の所得に対して課される税金で、年金収入も「雑所得」として課税対象となります。ただし、一定額以下の年金収入であれば所得税はかかりません。
たとえば、65歳以上の場合、公的年金控除(110万円)と基礎控除(48万円)を合わせた158万円以下の年金収入であれば、所得税は非課税です。
65歳以上の人が、公的年金等の支払いを受ける場合、年金額158万円超になったら源泉徴収が行われ、所得税が差し引かれた上で振り込まれます。
源泉徴収されるのは、原則として収入金額からその年金に応じて定められている一定の控除額を差し引いた額に「5.105%(所得税5%+復興特別所得税0.105%)」を乗じた金額となります。
なお、障害年金や遺族年金は非課税のため、所得税がかかりません。
1.2 年金から天引きされるお金2:住民税・森林環境税(2024年度から特別徴収)
年金から天引きされる税金には、所得税のほかに「住民税」も含まれます。住民税は、一定額以上の年金収入がある場合に課税され、天引きされる形で徴収されます。
【住民税の内訳】
住民税には、所得に応じて課税される「所得割」と、全員が一律で負担する「均等割」があります。ただし、年金収入が一定額以下の場合は、「均等割のみ」または「非課税」となる場合もあります。
【2024年度から導入された森林環境税】
2024年からは、住民税均等割の一環として「森林環境税」が導入され、個人住民税と一緒に天引きされます。この税金は、国が市町村を通じて1人あたり年額1000円を徴収するものです。
森林環境税の収入は、地域の森林整備や災害防止、人材育成などの施策に活用されることが目的です。住民税や森林環境税は、地域社会の維持や環境保全に貢献するための重要な財源です。
1.3 年金から天引きされるお金3:健康保険料(国民健康保険料や後期高齢者医療保険料)
年金から天引きされる社会保険料には「健康保険料」があります。この健康保険料には、「国民健康保険料」と「後期高齢者医療保険料」の2種類があり、加入する保険は年齢や条件によって異なります。
【国民健康保険料】
65歳から75歳未満の年金受給者が対象となり、年金額が年間18万円以上の場合、年金から自動的に天引きされます。
【後期高齢者医療保険料】
75歳以上、または65歳以上75歳未満で後期高齢者医療制度の対象となる方が加入し、こちらも年金額が年間18万円以上の場合に天引きされます。
重度障害などの理由で後期高齢者医療制度に該当する場合は、75歳未満でも後期高齢者医療保険料が適用されます。
なお、65歳以上75歳未満で会社に勤務しており、健康保険組合などに加入している場合は、健康保険料が給与から天引きされ、年金からは引かれません。
健康保険料は、医療費の負担を軽減し、安心して医療を受けられる仕組みを支える重要な制度です。自分がどちらの保険に該当するかを確認しておくことが大切です。
1.4 年金から天引きされるお金4:介護保険料
年金から天引きされる社会保険料には「介護保険料」も含まれます。介護保険料は、40歳以上のすべての人が支払うもので、年齢によって徴収方法が異なります。
40歳から64歳までは、健康保険料に含まれて会社や公務員の雇用主と個人が半々で負担します。しかし、65歳以上になると介護保険料は単独で徴収され、年金額が年間18万円以上の場合に年金から天引きされる仕組みです。
注意点として、介護認定を受けた場合でも介護保険料の支払い義務は継続します。
必要な介護サービスを利用するための重要な財源となるため、徴収が続くことを理解しておきましょう。介護保険料は、高齢になっても安心して介護サービスを利用できる制度を支える重要な仕組みです。
2. まとめにかえて
老後の家計を考える際は、まず受け取る年金の「手取り額」を正確に把握することが大切です。
「ねんきん定期便」に記載された年金の見込み額は、税金や社会保険料が差し引かれる前の金額であるため、そのまま受け取れるわけではありません。
年金から天引きされる税金や社会保険料は、所得税、住民税・森林環境税、健康保険料、介護保険料の4つです。それぞれの金額は個人の状況によって異なりますが、一般的には額面の約8割が手取りの目安と考えておきましょう。
天引きされる仕組みを理解し、手取り額を把握しておけば、年金受給時に「思ったより少ない」と感じることを防ぎ、老後の生活設計に役立ちます。

