老後生活における大事な収入源のひとつに年金があります。

少子高齢化が続く日本において年金だけを頼りに生活を送るというのは現実的に厳しくなってきていると言えるでしょう。

さらに国や自治体からの支援があったとしても、それを理解している人も少ないのが現状です。

今回は年金生活者に対しての支援の一つである「年金生活者支援給付金」についてどのような制度なのか、また年金生活者の国民年金、厚生年金の支給額についても詳しく見ていきます。

1. 「年金生活者支援給付金」とは?

「年金生活者支援給付金」は3種類1/14

年金生活者支援給付金制度について

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について

「年金生活者支援給付金」は、年金収入やその他の所得が一定基準額以下の年金生活者を支えるために、2カ月に一度、年金に上乗せして支給されるお金です。

近年しばしば実施されている「住民税非課税世帯を対象とする給付金」などの一時的な支援とは異なり、後述の支給要件を満たす場合は継続して受給ができます。

「老齢年金生活者支援給付金」「障害年金年金生活者支援給付金」「遺族年金年金生活者支援給付金」の3種類があり、2カ月に一度、年金に上乗せして給付されるものです。

今回はシニア世代の暮らしとかかわりが深い「老齢年金生活者支援給付金」にフォーカスしていきます。

2. 老齢年金生活者支援給付金《支給要件・給付基準額・計算方法》まるっと整理

「老齢年金生活者支援給付金」の支給要件・給付基準額・計算方法について整理していきます。

2.1 老齢年金生活者支援給付金《支給要件》

老齢年金生活者支援給付金《支給要件》2/14

老齢年金生活者支援給付金《支給対象となる要件》

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について

老齢年金生活者支援給付金の支給要件は、以下の全てに該当するケースです。

  • 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税
  • 前年の公的年金等の収入金額( 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれない)とその他の所得との合計額が下記の要件に該当。基準額を超えた一定の人には「補足的老齢年金生活者支援給付金(詳しくは後述)」を支給

1956年4月1日以前生まれの方《支給要件》

  • 老齢年金生活者支援給付金:78万7700円以下

1956年4月2日以後生まれの方《支給要件》

  • 老齢年金生活者支援給付金:78万9300円以下

2.2 老齢年金生活者支援給付金《2024年度の給付基準額》

年金生活者支援給付金《2024年度の給付基準額》3/14

年金生活者支援給付金の支給金額

出所:日本年金機構「令和6年4月分からの年金額等について」

  • 老齢年金生活者支援給付金:月額5310円

年金生活者支援給付金給付基準額は、物価の変動に応じて年度ごとに改定がおこなわれます。

また、実際に支給される年金生活者支援給付金の月額は、上記の給付基準額に基づいて計算されます。

次では、老齢年金生活者支援給付金の給付額の計算方法について確認していきましょう。

2.3 【早見表つき】老齢年金生活者支援給付金《計算方法》給付額はどう決まる?

老齢年金生活者支援給付金は、先述の「月額5310円」を基準に、保険料納付済期間等に応じて計算されます。

下記1と2の合計額が、実際の支給額です。「保険料納付済期間等」は、お手持ちの年金証書や支給金額変更通知書等で確認が可能です。

  1. 保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5310円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
  2. 保険料免除期間に基づく額(月額) = 1万1333円 × 保険料免除期間 / 被保険者月数480月

なお、「保険料免除期間」に乗ずる金額は、毎年度の老齢基礎年金の額の改定に応じて変動します。

  • 1956(昭和31)年4月2日以後生まれの方:保険料全額免除、3/4免除、半額免除期間については1万1333円、保険料1/4免除期間については5666円
  • 1956年4月1日以前生まれの方:保険料全額免除、3/4免除、半額免除期間については1万1301円、保険料1/4免除期間については5650円

上記をふまえ、老齢年金生活者支援給付金の早見表を確認していきましょう。

【早見表】老齢年金生活者支援給付金の計算4/14

老齢年金生活者支援給付金の早見表

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」を参考にLIMO編集部作成

なお、前年の年金収入額とその他の所得額の合計が1956年4月2日以後に生まれた方で78万9300円を超え88万9300円以下である方、1956年4月1日以前に生まれた方で78万7700円を超え88万7700円以下である方には、計算式1に一定割合を乗じた「補足的老齢年金生活者支援給付金(※)」が支給されます。

※ご参考※「補足的老齢年金生活者支援給付金」について

老齢年金生活者支援給付金は、所得基準額を少しでも超えると受給できません。 その結果、所得基準額を少し超える人よりも、老齢年金生活者支援給付金の受給者の所得総額が多くなります。こうした逆転現象がないよう、所得基準額を超える一定の人が受給できるのが「補足的老齢年金生活者支援給付金」です。給付額は、所得の増加に応じて減る仕組みです。

引用:公益財団法人生命保険文化センター「補足的老齢年金生活者支援給付金〈参考〉

ここまでは、老齢年金生活者支援給付金に関する情報を整理しました。

次では、厚生労働省の最新資料をもとに、今のシニア世代の公的年金事情をながめていきます。

3. 《最新版厚労省データ》国民年金「60歳代・70歳代・80歳代」の平均年金月額はいくら?

厚生労働省年金局が「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を公表しました。

ここからは同資料をもとに、今のシニア世代が受け取る公的年金の「60歳代~80歳代までの平均年金月額」を、1歳刻みで確認します。

まずは国民年金(老齢基礎年金)のみを受け取るケースから。自営業や専業主婦(夫)だったケースなど、厚生年金加入期間がない人が受け取る年金月額です。

年金保険料(※1)を480カ月の全期間納付した場合、65歳から「満額(※2)」の年金額を受け取れます。未納分は満額から差し引かれる仕組みです。

2024年度の月額
※1 国民年金保険料:1万6980円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:6万8000円

3.1 【60歳代 一覧表】国民年金の平均月額はいくら?

【60歳代 一覧表】国民年金の平均月額5/14

60歳代の国民年金額

出所:厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 60歳:4万3638円
  • 61歳:4万4663円
  • 62歳:4万3477円
  • 63歳:4万5035円
  • 64歳:4万6053円
  • 65歳:5万9599円
  • 66歳:5万9510円
  • 67歳:5万9475円
  • 68歳:5万9194円
  • 69歳:5万8972円

※65歳未満の国民年金の受給権者は、繰上げ支給を選択した者

3.2 【70歳代 一覧表】国民年金の平均月額はいくら?

【70歳代 一覧表】国民年金の平均月額6/14

70歳代の国民年金額

出所:厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 70歳:5万8956円
  • 71歳:5万8569円
  • 72歳:5万8429円
  • 73歳:5万8220円
  • 74歳:5万8070円
  • 75歳:5万7973円
  • 76歳:5万7774円
  • 77歳:5万7561円
  • 78歳:5万7119円
  • 79歳:5万7078円

3.3 【80歳代 一覧表】国民年金の平均月額はいくら?

【80歳代 一覧表】国民年金の平均月額7/14

80歳代の国民年金額

出所:厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 80歳:5万6736円
  • 81歳:5万6487円
  • 82歳:5万6351円
  • 83歳:5万8112円
  • 84歳:5万7879円
  • 85歳:5万7693円
  • 86歳:5万7685円
  • 87歳:5万7244円
  • 88歳:5万7076円
  • 89歳:5万6796円

国民年金(老齢基礎年金)の年金月額は、公的年金の一般的な受給開始年齢である65歳以降はいずれの年齢でも5万円台でした。

60歳から64歳までは繰上げ受給を選んだ人の平均年金月額。よって受給を前倒しした月数に応じた減額率が適用されていますね。

次では、厚生年金を上乗せ受給できる場合について、各年齢の平均月額を見ていきます。

4. 《最新版厚労省データ》厚生年金「60歳代・70歳代・80歳代」の平均年金月額はいくら?

次は、サラリーマンだった人などが受け取る厚生年金についても確認します。

厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されており、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介します。

また、記事内で紹介する厚生年金保険(第1号)の年金月額には国民年金(老齢基礎年金)の月額部分も含まれます。

4.1 【60歳代 一覧表】厚生年金の平均月額はいくら?

【60歳代 一覧表】厚生年金の平均月額8/14

60歳代の厚生年金額

出所:厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 60歳:9万6492円
  • 61歳:10万317円
  • 62歳:6万3244円
  • 63歳:6万5313円
  • 64歳:8万1700円
  • 65歳:14万5876円
  • 66歳:14万8285円
  • 67歳:14万9205円
  • 68歳:14万7862円
  • 69歳:14万5960円

※65歳未満の厚生年金保険(第1号)の受給権者は、特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢の引上げにより、主に定額部分のない、報酬比例部分のみの者

4.2 【70歳代 一覧表】厚生年金の平均月額はいくら?

【70歳代 一覧表】厚生年金の平均月額9/14

70歳代の厚生年金額

出所:厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 70歳:14万4773円
  • 71歳:14万3521円
  • 72歳:14万2248円
  • 73歳:14万4251円
  • 74歳:14万7684円
  • 75歳:14万7455円
  • 76歳:14万7152円
  • 77歳:14万7070円
  • 78歳:14万9232円
  • 79歳:14万9883円

4.3 【80歳代 一覧表】厚生年金の平均月額はいくら?

【80歳代 一覧表】厚生年金の平均月額10/14

80歳代の厚生年金額

出所:厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 80歳:15万1580円
  • 81歳:15万3834円
  • 82歳:15万6103円
  • 83歳:15万8631円
  • 84歳:16万59円
  • 85歳:16万1684円
  • 86歳:16万1870円
  • 87歳:16万2514円
  • 88歳:16万3198円
  • 89歳:16万2841円

65歳以降の各年齢における厚生年金の平均年金月額は「14~16万円台」です。単純に平均だけを比較する限り、国民年金のみを受給する場合よりも手厚い年金水準となります。

ただし、厚生年金は「加入月数」と「加入期間の収入」によって老後の受給額が決まります。上限額はあるものの、基本的には「長く働き、多く稼いだ人」ほど年金額が多くなる報酬比例の年金なので、実際の受給額にはおのずと個人差が出ます。

また、前述の通り上記の年金月額には「国民年金(老齢基礎年金)」部分が含まれている点にも留意が必要でしょう。

5. 安心した老後生活を送るために

年金生活者支援給付金は、年金額が少ない世帯を支援する重要な制度です。

支給対象者には日本年金機構からお知らせを兼ねた請求書が届きます。受け取った場合は忘れずに申請手続きをおこないましょう。

そもそも老後の公的年金額は、現役時代の年金加入状況により個人差が出ます。平均額だけを鵜呑みにせず、ご自身の受給見込み額は「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で把握しておくことが大切です。

たとえ、じゅうぶんな年金を受け取れる世帯でも、収入が現役時代に比べて大幅に減少するケースが大多数と言えるでしょう。

日ごろの家計管理を丁寧におこない、ポートフォリオに貯蓄・投資・保険をバランスよく組み込みながら、マネープランの最適解を探していけたら良いですね。

「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)」や「NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)」などを活用した資産運用の検討も一案でしょう。

「人生100年時代」に老後を過ごす私たちにとって、公的年金だけに頼らない心構えが求められているかもしれません。

6. まとめにかえて

年金は老後の生活の大事な柱ですよね。

ただ、この年金が今後どうなるかはわかりません。だからこそ、早めに対策しておくことが大事です。

「とりあえず貯金しとけば安心」というのも一つの手ですが、今は資産運用という方法もあります。運用と聞くと「難しそう…」と思うかもしれませんが、たとえば、NISAやiDeCoのような、少額から始められる制度を使うのも選択肢です。

老後の生活を楽しく安心なものにするためには、早めの準備が大事。時代の変化に合わせて自分の資産の守り方も考えていきましょう。

7. 【ご参考】年金に関する疑問や不安を解消!よくある質問を解説

年金Q&Aまとめ11/14

年金Q&A

出所:日本年金機構などをもとにLIMO編集部作成

「年金って難しそう…」と感じている人は、多いのではないでしょうか。でも、基本のポイントを押さえると、意外とシンプルなのです。ここでは、年金についてよくある疑問について、わかりやすくお答えしていきます。

7.1 年金の仕組みってどうなってるの?

公的年金の仕組みとは?12/14

画像:公的年金の仕組みとは?

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」

まず、日本の公的年金は「2階建て」構造です。下の階が「国民年金」、その上に「厚生年金」があるイメージです。

国民年金

国民年金は、20歳から60歳未満の全員が加入対象。特に自営業やフリーランスの方がメインです。

毎月決まった金額を支払います。いわば、年金の基礎部分です。

厚生年金

厚生年金は、会社員や公務員の方が加入対象です。こちらは収入に応じて保険料が変わるので、もらえる年金額も収入の影響が大きくなってきます。

そのため、個人差が出やすくなっています。

7.2 「繰下げ受給」って実際どうなの?

通常、年金は65歳からもらうものですが、「まだ働けるし、今すぐ必要じゃない」という方には「繰下げ受給」という選択肢があります。簡単に言うと、年金の受け取りを後回しにして、もらう額を増やす方法です。

繰下げ受給でもらえる増額率の一覧表13/14

ああ

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

たとえば、65歳で受け取る予定を75歳まで繰り下げると、年金額が84%も増えるんです。

もし健康で他にも収入源があるなら、繰下げ受給を検討してみる価値は十分にあるでしょう。

7.3 年金や老後資金をもっと増やすには?

繰下げ受給以外にも、年金や老後資金を増やす手段はいくつかあります。

国民年金の付加保険料を払う

自営業やフリーランスの方は、少し追加で保険料を払うことで、将来もらえる年金額をアップできます。

厚生年金に加入する

もし可能なら、厚生年金に加入するのも手です。もし国民年金だけに加入していた場合、会社員になったり、厚生年金が適用されるような働き方を選ぶと、年金額が増えます。

資産運用に挑戦

iDeCo(個人型確定拠出年金)や投資信託での資産運用も有効です。

iDeCoってどんな制度?14/14

画像:iDeCoってどんな制度?

出所:厚生労働省「iDeCoの概要」

ただし、これは場合によっては元本割れのリスクもあるので、まずはしっかり調べてからスタートするのが大事。お金の増やし方も「焦らずじっくり」がポイントです。

これで、年金の仕組みが少しクリアになったでしょうか?

ちょっとずつでも理解を深めていくと、老後への不安が少しずつ減っていきますよ。将来に向けて、一緒に準備を始めていきましょう。

参考資料

渡邉 珠紀