5. 今からできる老後への備えとは
65歳以上世帯の生活費や貯蓄額等についてみていきました。「貯蓄平均2504万円」という数字をみて、不安が大きくなった方がいるかもしれません。
しかしこの数字はあくまで平均値であり、実態を表しやすいとされる中央値は1604万円です。
そしてその多くは、この平均値や中央値には届いていないのが現実です。
各世帯によって貯蓄額は当然異なりますし、生活に十分足りている人もいれば、足りないと感じる方もいることでしょう。
大切なのは個別のシミュレーションであると強調してきました。
もしシミュレーション結果で不足分が把握できたという場合、どのような準備や対策が有効なのでしょうか。
5.1 支出を減らす
重要なのは支出額のダウンサイジングです。とても当たり前のことで「いまさら」と感じるものですが、一方で「老後は収入が少なくなる」ことを意識せずに、支出額を減らしていけない方が多いのも事実です。
一度高めた生活水準は、意識しないと落とせません。
生活費(食費や光熱費など)は手がつけやすいものの、ストレスになることも多いため、まずはスマホやサブスクなど固定費の見直しから行ってみましょう。
5.2 貯金以外の方法の検討
貯金だけではなく、資産運用も検討してみましょう。
老後までの期間によって「必要な積立額」が異なります。資産運用という選択肢では、この積立額を抑えられる可能性があるでしょう。ただし、その分でリスクもあります。
リスクをしっかり考慮した上で、自分に合った方法を検討してみましょう。
6. まとめにかえて
今回は、65歳以上の無職夫婦世帯の貯蓄額を見てきました。65歳までに老後の生活資金を準備できた世帯は、収入がなくても貯蓄の切り崩しだけで生活をしていくことができるでしょう。
しかし、老後を迎えるまでに十分な資金を形成することは簡単なことではありません。
「支出を抑える」「資産運用も検討してみる」と聞くと当たり前な言葉に思えますが、しっかり実行できている人はどれほどいるでしょうか。
資産を形成するのに、画期的な方法はありません。
老後生活費用について考えるときのファーストステップは、将来どんな生活を送りたいかイメージすることです。最低限の生活を送れたらいいのか、今と同じぐらいがいいのか、今よりも余裕のある生活を送りたいのか、どんな老後生活を送りたいかによって用意しなければいけない資金額は当然変わってきます。
自分の考える老後生活にはいったいいくら必要なのか、トータルの必要資金が分かれば目標値が決まります。あとはそこに向かってどのように準備していくかになります。
前章でも述べたように日々の生活を見直し「支出を抑えること」と銀行預金だけではなく「資産運用」を取り入れること、老後を迎えるまでにできることを始めてみましょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2023年(令和5年)平均結果-(二人以上の世帯)」
- 厚生労働省「これまでの年金部会も踏まえてご議論いただきたい論点」
奥田 朝