2. なぜ「1.9%」の増額なのか

年金額改定のルールは以下のとおり。

毎年行われる年金額の改定時に用いられるのが物価変動率と賃金変動率。

「物価変動率>名目手取り賃金変動率」となる場合は、名目手取り賃金変動率を用いて改定すると法律で定められています。年金制度を支える現役世代の負担を考慮したものです。

2025年度の年金額改定に用いられた各数値は次のとおり。

  • 物価変動率 :2.7%
  • 名目手取り賃金変動率(※1):2.3%
  • マクロ経済スライドによるスライド調整率 :▲0.4%

※1:2年度前から4年度前までの3年度平均の実質賃金変動率に前年の物価変動率と3年度前の可処分所得割合変化率(0.0%)を乗じたもの

今回、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回ったため、名目手取り賃金変動率を採用。名目手取り賃金変動率は2.3%ですが、マクロ経済スライド発動により▲0.4%調整が行われ、「1.9%」の引き上げが決定しました。

2.1 マクロ経済スライドとは?

平成16年の年金制度改正により導入された「マクロ経済スライド」は、将来世代の年金給付水準を確保する上で重要な役割を果たしています。

マクロ経済スライドの調整率は、「公的年金被保険者の変動」と「平均余命の伸び」にもとづいて設定されます。

賃金と物価の変動がプラスとなる場合にこの調整率分を改定率から控除し、年金制度のバランスを図っているのです。

令和7年度のマクロ経済スライドによるスライド調整率=▲0.4%

公的年金被保険者総数の変動率(令和3~5年度の平均):▲0.1% + 平均余命の伸び率(定率):▲0.3%

  • マクロ経済スライドの発動:平成27年度、令和元年度、令和2年度、令和5年度、令和6年、令和7年度

物価変動率を上回る引き上げが理想ではありますが、少子高齢化が深刻化する中で公的年金制度を維持するために適切な調整が行われているのです。

次章からは現シニア世代の年金受給額を確認していきます。