老後の生活について、どのような暮らしを思い描いていますか?毎日が日曜日のような生活や、趣味や旅行を楽しむゆとりある暮らしが理想かもしれません。  

しかし、筆者の資産運用アドバイザーとしての経験から、多くの方が「老後の生活に余裕がなく不安」と感じている現状を耳にします。理想的な老後を実現するためには、早い段階から計画的に貯蓄を始めることが重要です。  

本記事では、老後が近づく50歳代の二人以上世帯の平均貯蓄額を紹介し、老後生活に余裕を持たせるためのポイントについて詳しく解説します。

※金額等は執筆時点での情報にもとづいています。

1. 現役生活ラストスパート!50歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額はいくら?

まずは、金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」を参考に、50歳代・二人以上世帯の貯蓄事情を確認していきましょう。

※貯蓄額には、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。

【写真1枚目】50歳代・二人以上世帯の貯蓄円グラフ

50歳代・二人以上世帯の貯蓄円グラフ

出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」をもとにLIMO編集部作成

  • 金融資産非保有:27.4%
  • 100万円未満:9.1%
  • 100万~200万円未満:6.4%
  • 200万~300万円未満:3.8%
  • 300万~400万円未満:3.9%
  • 400万~500万円未満:3.8%
  • 500万円~700万円未満:5.6%
  • 700万~1000万円未満:5.5%
  • 1000万~1500万円未満:8.9%
  • 1500万~2000万円未満:4.2%
  • 2000万~3000万円未満:5.4%
  • 3000万円以上:11.2%

平均:1147万円
中央値:300万円

50歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額は1147万円ですが、「平均値」は一部の富裕層によって数値が引き上げられる傾向があります。

一方で実態をより反映するとされる中央値は300万円にとどまっています。

平均貯蓄額は1000万円を超えているものの、かつて老後資金の目安として話題になった2000万円には届いていません。

貯蓄状況を分布で見ると、「1000万円以上」の貯蓄がある世帯は全体の29.7%ですが、金融資産を保有していない(貯蓄ゼロ)世帯も27.4%存在し、貯蓄格差が浮き彫りとなっています。

この年代は年収がピークを迎える人も多い一方で、子育て費や住宅ローンといった大きな支出に追われ、計画的な貯蓄が難しい家庭も少なくありません。

また、一部の世帯では、親族からの相続や贈与といった臨時収入が貯蓄額を押し上げているケースも考えられます。

「子どもが独立した後は老後資金の貯蓄を加速させるつもり」という家庭も、親の介護のために離職を余儀なくされるなど、計画が思うように進まない場合があります。

50歳代はまだリタイア前の年代ですが、安定した収入を得ながら貯蓄できる家庭ばかりではないため、目の前の貯蓄額だけでなく、退職後を見据えた長期的な収支を考えることが大切です。

そんな50歳代が関心を持ち始めるテーマの一つが「老齢年金」ではないでしょうか。