MLCC(積層セラミックコンデンサー)が高水準受注に沸いている。スマートフォンなどモバイル機器向けに加え、車載や産業機器といった中大型サイズの需要が想定を上回るペースで伸長。主要各社も生産能力の増強を急ピッチで進めるが、製造装置のリードタイム長期化も相まってなかなか需要に応えられていないのが現実だ。

村田製作所の第1四半期受注高は42%増

 村田製作所が発表した2018年度第1四半期(4~6月)のコンデンサー受注高は、前年同期比42%増の1670億円と非常に高水準なものとなった。全体の受注高は同35%増の4101億円。6月末のコンデンサー受注残高は、3月末から27%増えて1891億円となった。受注増について、「用途別ではクルマが強い。通信向けも増えている」(南出雅範執行役員)としており、需給逼迫の影響から長納期品の受注も含まれているという。ただ、基本的には実需以上の受注は入ってないとの認識で、過熱感はそれほどないことを強調した。

 今回の需給逼迫の背景は車載・産業機器向けの需要増だ。車載は電装化に伴い、クルマ1台あたりに搭載されるMLCCの搭載員数が急激に増加。特に今後はEVをはじめとする電動車両へのシフトに伴い、パワートレイン分野でのMLCC搭載員数が大きく増える見通しで、村田製作所によれば、内燃機関車に比べてEVは5倍以上の搭載員数となる見込みだ。

 受注同様に売上高も高い伸びを示している。村田製作所の第1四半期におけるコンデンサー売上高は前年同期比31%増と高成長。数量増加に加え、単価の値上げや車載など高付加価値分野への販売拡大も大幅プラスに寄与した。

顧客へのダウンサイジング要請で前工程負荷軽減

 需要増に伴い、同社では継続的にMLCCの生産能力を増強している。18年度は前工程ベースで10%の能力増強を実施予定で、生産設備についても期初計画どおりのペースで導入が進んでいるという。ただ、足元の受注はこの増産計画を上回る規模できているため、顧客へのダウンサイジングの要請などを通じて、前工程負荷の軽減を図っていきたい考え。

 スマホなどモバイル機器向けでは0603(0.6×0.3mm)、0402などの超小型サイズが主流であるが、クルマなどでは実装信頼性などの観点から、現在1608、1005などの中大型サイズが多い、このため、焼成や積層といった前工程におけるキャパシティー負荷が大きいのだ。

 比較的中大型サイズのMLCCを使用する車載顧客に対しても要請を行っているが、村田製作所によれば、仕様変更までは長い期間を要することから、効果が出てくるのは次年度以降となる見込み。

太陽誘電、TDKなど日系各社も増産急ピッチ

 MLCCの増強を図っているのは、村田製作所だけではない。太陽誘電やTDKといった日系メーカーに加え、台湾YEGEOも値上げと能力増強を同時に進める。

 太陽誘電は18年度の設備投資金額として、前年度比75%増の430億円を計画。うち、MLCCを生産する子会社の新潟太陽誘電㈱(新潟県上越市)の3号棟建設(建物・インフラのみ)には100億円が投じられ、残りはMLCCの増産対応などに充てられる。MLCCは前工程ベースで10%の増産を図る。ただ、足元ではそれを上回る需要で推移しているため、生産性改善などを通じて、10%以上の供給能力アップを図っていきたい考えだ。

(稲葉雅巳)

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳