物価の上昇や、世界情勢の不安定さなどにより、将来への経済的な不安を抱える人も多いのではないでしょうか。将来の生活資金を確保するため、資産運用への関心も以前より高まっています。
そのような中、初心者にも投資による資産運用を促進するために政府が導入した制度がNISAです。NISA制度は2014年に開始され、これまで数回の変更が行われてきました。現在は、2024年1月から開始された「新NISA制度」により運用がされています。
最新の統計では、例えば40歳代の場合、NISA口座の開設数は468万771口座という結果が出ており、40歳代人口(1637万人)の28%程度、3人弱に1人が口座を開設していることがわかります。
【写真全8枚/1枚目】年代別のNISA口座数。写真後半では5万円×12ヶ月×20年間積立投資した場合の利回り別のシミュレーションを掲載。1/8
出所:金融庁「NISA口座の利用状況調査(2024年6月末時点)」を元に筆者作成
今回は、NISAの基本的な説明を踏まえて、毎月5万円を20年間NISAで積立投資した場合に、将来いくらになるのかを、利回り別にシミュレーションしていきます。ぜひ自身の投資の参考にしてください。
1. NISAの基礎知識
まずは、NISAという制度について簡単に説明をします。NISAとは「少額投資非課税制度」という投資制度のことを指し、日本では2014年に開始されました。
投資を行う際に、通常であれば得た利益(配当金・分配金や売却益)には約20%の税金が発生しますが、NISA口座で取引をした場合であれば、一定額の投資枠内で利益が非課税になります。
1.1 2つの投資枠
2024年1月から開始された「新NISA制度」での運用は、投資の方法によりつみたて投資枠と成長投資枠の2種類に分けられます。
つみたて投資枠は、文字通り投資の方法が「積立投資」に限定されており、投資できる銘柄も限られた枠内の投資信託のみになります。投資対象となる投資信託の銘柄には安定的なものが多く、長期的な資産形成に適しています。
一方、成長投資枠は投資方法に制限はなく、つみたて投資枠と比較して幅広く銘柄を選択することが可能な枠です。より大きなリターンを狙うことが可能ですが、その分つみたて投資枠と比較してリスクも大きくなります。
1.2 投資上限額
新NISAによる投資には、それぞれの枠と合計に対する上限額が設定されています。
【つみたて投資枠】
年間120万円まで(非課税期間は無期限)
【成長投資枠】
年間240万円まで(非課税期間は無制限)
2つの制度は併用して活用することが可能ですが、合計の非課税投資枠は上限額が決められています。
【投資枠上限】
つみたて投資枠と成長投資枠を合わせて1800万円
※成長投資枠のみの場合1200万円が上限額
※一度購入したものを売却した場合には、その分の枠は再利用が可能
今回は、20年間の積立投資を検討するため、基本的に「つみたて投資枠」で活用する想定となります。
2. 65歳まで20年の積立投資でいくらになる?利回り別シミュレーション
それでは、いよいよ本題のシミュレーションとなります。新NISAを活用して、たとえば45歳から65歳まで20年間、毎月5万円を積立投資した場合に将来いくらになるのかを、利回り別にシミュレーションします。
金融庁による積立投資による20年間の利回り平均が2%から8%となっていることから、今回は2%、5%、8%の3パターンで検討をします。
元手としては3パターンとも同じで、5万円×12ヶ月×20年間で1200万円となります。
2.1 ケース1:利回り2%
2%での結果は1474万円となり、投資利益の合計は274万円です。
2.2 ケース2:利回り5%
5%での結果は2055万円となり、投資利益の合計は855万円です。
2.3 ケース3:利回り8%
8%での結果は2945万円となり、投資利益の合計は1745万円です。
利回りが高ければ年間の運用利益が高くなり、運用利益にさらに利率が付く複利の仕組みにより、最終的な受け取り金額の差が大きくなります。
3. 積立投資を始めるときに重要な視点
ここまで、利回りごとの最終的な受け取り金額をシミュレーションしていきました。利回りが大きいほど最終的な受け取り金額も当然に高額となりますが、投資において利回りを正確に予測することは不可能です。
しかし、積立投資において、できる限りリスクを避けて利回りを大きくするために重要な考え方があります。積立投資を始める際のポイントを紹介していきます。
積立投資のポイント8/8
出所:筆者作成
3.1 インデックスファンドに投資する
インデックスファンドとは、市場全体の動きを表す代表的な指数に連動した成果を目指す投資信託のことです。
世間の物価上昇や下降と連動した値動きをするため、安定的で流れが読みやすい銘柄です。
価値が急上昇や急降下することが比較的少ないため、個別株などほかの金融商品に比べれば、相対的にリスクを回避できる可能性が高くなります。
3.2 分散投資する
1つの国や、1つの銘柄に集中して投資をすると、その国の景気や銘柄が何らかの原因で暴落した際に投資利益に大きな打撃を受けることになります。一方で、投資先の国や業種などを分散させることで、1つが急落してもその他でカバーをすることが可能です。
投資信託で積立をする場合は、投資信託自体が様々な銘柄を掛け合わせたものとなっておりますので、それだけである程度の分散要素を満たすことになります。
3.3 長期的に投資する
積立投資をする場合、基本的に長期的な運用をすることで利益が大きくなるケースが多く見られます。これは、複利の影響や、世間の景気が長い期間で見た際にゆるやかに上昇をしていることが影響しています。
また、長期的に保有することで売却のタイミングを見極めることも可能になります。
売却時の価値によって実際の受取金額が決定されるため、売却のタイミングも投資利益には重要な要素です。景気が悪化する可能性なども視野に入れ、「絶対にこの年に売却をする」という視点ではなく数年間の長期的な目線で売却のタイミングを検討することも大切です。
3.4 手数料の安い商品を選択する
投資信託に掛かるコストとして、購入時の手数料である「購入時手数料」・持っている間にかかる「信託報酬」・売るときにかかる「信託財産留保額」の3種類が存在します。
これまで説明したような、安定的なリスクの低い投資信託の中には、利率の差が出にくい銘柄が多くあります。そのため、銘柄を選択する際は手数料の安さも重要視するポイントです。
特に、信託報酬はその資産を保有中は継続的に発生する費用であるため、できるだけ低い率の商品を選ぶことを心がけましょう。
4. おわりに
新NISA制度は、投資経験者はもちろん、投資初心者にとっても、資産運用の活用を広げるきっかけとなる重要な制度です。
とはいえ、投資である以上、運用には必ずリスクが発生します。投資額や売却時期などはしっかりとした計画を立てて見極めることが重要です。
投資を開始する際に不安がある場合には、必要に応じてファイナンシャルプランナーなど専門家のサポートを得ることも検討しましょう。
NISA制度や積立投資の仕組みを理解することで、初心者であっても、無理のない適切な資産運用を開始することができるはずです。
参考資料
- 金融庁「NISA口座の利用状況調査(2024年6月末時点)」
- 金融庁「NISAを知る」
- 金融庁「「長期・積立・分散投資に資する投資信託に関するワーキング・グループ」(第1回)議事次第」会議資料
- 金融庁「つみたてシミュレーター」
- 総務省統計局「人口推計 2024年(令和6年)10月報」
斎藤 彩菜