筆者はファイナンシャルアドバイザーとして働いていますが、近年、老後への不安から資産運用を始める方が大幅に増えていると感じています。2024年に新NISAがスタートし、それをきっかけに資産運用を始めたという方も少なくありません。
では、老後生活を安心して過ごすためには、一体どのくらいの貯蓄が必要なのでしょうか。実際に現在のシニア世代のマネー事情を確認することで、将来に向けた目標や準備の参考にすることができます。
今回は、現代シニアがどのような老後生活を送っているのか、その実態を掘り下げていきます。
1. 「65歳以上の無職夫婦世帯」貯蓄額は平均でどのくらい?
公的年金の一般的な受給開始年齢は65歳。この年齢を節目に、完全にリタイア生活に入るという世帯もあるでしょう。そこで、65歳以上世帯(二人以上世帯)の貯蓄事情を見ていきます。
総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2023年(令和5年)平均結果-(二人以上の世帯)」から、まずは、世帯主が65歳以上の無職世帯の貯蓄額に関するデータをのぞいてみましょう。
1.1 65歳以上・無職夫婦世帯の平均貯蓄額
総務省の「家計調査報告(貯蓄・負債編)」によると、世帯主が65歳以上の無職世帯(二人以上世帯)の平均貯蓄額は2023年時点で2504万円です。過去5年間の推移についても見ていきましょう。
1.2 2018年から2023年までの平均貯蓄額の推移
- 2018年:2233万円
- 2019年:2218万円
- 2020年:2292万円
- 2021年:2342万円
- 2022年:2359万円
- 2023年:2504万円
2018年から2020年までは2200万円台だった平均貯蓄額は、2021年に2300万円台に。さらに2023年にはついに2500万円のラインを越えます。
65歳以降のリタイア世帯にとって、貯蓄は年金生活を支える大切な命綱。定期性預貯金の割合が低下傾向にあること、そして有価証券の割合が上昇傾向にあることなどから、資産運用で老後資金を守りながら育てている世帯が一定数存在することもうかがえます。
資産運用をおこなっている世帯の中では、保有していた有価証券の資産価値が上がった結果、貯蓄額が引き上げられたというケースもあるでしょう。
次では、勤労世帯も含めた「65歳以上・二人以上世帯」全体の貯蓄事情についてものぞいてみましょう。