4. 年収1000万円でも「貯蓄ができない」世帯もいる理由
年収1000万円以上の世帯でも、なかなか貯蓄ができないというケースは珍しくありません。
貯蓄ゼロ世帯が存在する理由には、いくつかの要因があるのです。
一番に考えられるのは、所得税や社会保険料の負担の大きさでしょう。これにより額面ほど手取りは高くないという現象があります。
所得が1000万円を超えると、所得税率は33%〜45%に達します。所得300万円の場合の税率が10%であることと比較すると、その負担の差が明らかですね。
社会保険料も高額になるため、手取り額に与える影響は大きくなります。
このほか、高収入世帯ほど「所得制限」の対象となるケースがあり、自己負担が高まることで支出額が増えることも要因にあげられます。
生活費や教育費があがることに加え、税金や公的サービスの支払額も高くなることで、収支のバランスが崩れやすくなるのです。
このような背景から、年収1000万円でも実際には高収入とは言い難いケースもあり、貯蓄が難しいというケースが起こります。一度生活水準をあげると、今度は下げることが難しくなってしまうことにも注意が必要です。
5. まとめにかえて
年収1000万円以上の割合は全体の5.5%しかいないことから、やはり憧れにする方は多いです。
しかし、本記事でも確認したように年収が1000万円を超えると税率が高くなったり、さまざまなサービスを受けられなかったりすることから、結果として十分に貯蓄に回せない世帯も少なくありません。
年収が1000万円を超えている方であっても、やはり大事なことは「計画性」です。
特に老後資金を考える場合、コツコツ積み上げていくことが重要になります。まずは何年後にいくら金額が必要なのかを明確にしましょう。
例えば、10年以内に必要なお金であれば「短期貯金」、10〜20年の期間では「中期貯金」、20年以上であれば「長期貯金」といったように期間別に分けることができます。
「短期運用」であれば、いつでも使えるように流動性が比較的高い銀行預金が向いているでしょう。
また、「中期貯金」であれば決まった期間金利が固定されている債券運用、「長期貯金」であれば投資信託のような運用方法を取り入れてみるものひとつです。
目的や運用期間、必要な金額などに応じて使い分けていくことが大切になります。
参考資料
- 国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」
- 総務省統計局「家計調査 / 貯蓄・負債編 二人以上の世帯 詳細結果表」
- 厚生労働省「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」
奥田 朝