筆者はFPとして様々なお客様と接しており、その中には年金を受給中の「シニア世代」の方も多くいらっしゃいます。シニアの方とお話をしていると、「年金だけでは生活が厳しく、収支を見直したい」というご相談や、「相続対策を進めたい」といったご相談があり、世帯ごとに大きな違いがあることに気づかされます。

老後までにどれだけ資金を準備できたかによって、老後の生活には大きな差が生まれます。これからの日本では、物価上昇や少子高齢化に伴う年金問題、そして人生100年時代の影響により、従来以上に老後資金の準備が重要視されるでしょう。

老後生活の基盤は「年金」ですが、その受給額も世帯によって異なります。まずは年金制度についての理解を深めることが、老後資金の準備を進めるための第一歩です。

今回は、老後生活の柱である年金についての理解を深め、安心して老後を過ごすための資産準備の方法について解説していきます。

1. いまどきシニアは「老齢年金」をいくらもらえているのか《平均と個人差》

「日本の年金制度は2階建て」などと言われますね。これは、1階部分にあたる「国民年金」と2階部分にあたる「厚生年金」から構成されているためです。

国民年金(基礎年金)は、国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人を原則加入対象とします。2階部分の「厚生年金」は、会社員や公務員などが国民年金に上乗せする形で加入します。

老後に受け取る年金水準は、現役時代の年金加入状況によって異なります。国民年金のみに加入していた場合に受け取れるのは「国民年金(老齢基礎年金)」のみ。厚生年金加入期間がある場合は、上乗せで厚生年金を受け取ります。

次では、今のシニア世代がどのくらい年金をもらっているかを見ていきましょう。国民年金と厚生年金、それぞれの平均および、男女差・個人差にもフォーカスします。

2. 【老齢年金】いまどきシニアは「国民年金」をいくらもらっているのか《平均と個人差》

厚生労働省年金局が公表する「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、まずは1階部分の「国民年金」について見ていきます。

2.1 【年金一覧表】国民年金の受給額ゾーン別受給権者数(1万円刻み)

【年金一覧表】国民年金の受給額ゾーン別受給権者数(1万円刻み)

【年金一覧表】国民年金の受給額ごとの受給権者数(1万円刻み)

出所:厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 1万円未満:6万5660人
  • 1万円以上~2万円未満:27万4330人
  • 2万円以上~3万円未満:88万1065人
  • 3万円以上~4万円未満:266万1520人
  • 4万円以上~5万円未満:465万5774人
  • 5万円以上~6万円未満:824万6178人
  • 6万円以上~7万円未満:1484万7491人
  • 7万円以上~:178万3609人

2.2 国民年金の平均年金月額

〈全体〉平均年金月額:5万6316円

  • 〈男性〉平均年金月額:5万8798円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万4426円

国民年金の平均年金月額は5万円台、大きな男女差は見られません。

ボリュームゾーンは「6万円以上~7万円未満」。多くの人が満額(※)に近い年金を受給している様子がうかがえます。

では、上乗せで厚生年金を受け取れる場合はどうでしょう。次で詳しく見ていきます。

ご参考:国民年金の満額とは?

※国民年金の満額:40年間(480カ月)の全期間、年金保険料を納付した場合、老後に受給できる年金額のこと。未納期間に応じて満額から差し引かれるしくみで、2024年度の月額は6万8000円です。