今夏から多くの自治体で支給されているのが「住民税非課税世帯への給付金」です。デフレ脱却に向けた新たな経済対策として、当時の岸田政権が実施した施策です。
ほとんどの自治体が10月末を申請期限としている住民税非課税世帯への給付金。すでに申請を済ませて給付金を受け取った人も多いでしょう。
給付金の対象となっている人は、高齢者が多いようです。年金収入があるにもかかわらず、非課税世帯が多いのはなぜなのでしょうか。
この記事では、2024年に実施されている住民税非課税世帯への給付金について概要をおさらいし、対象者に高齢者世帯が多い理由を解説します。
また、年金世帯が受け取れる給付金である「年金生活者支援給付金」についても紹介します。
1. 住民税非課税世帯への10万円給付の対象者と年収の目安
住民税非課税世帯への給付についておさらいしましょう。
【写真全4枚/1枚目】住民税非課税世帯への10万円給付の概要。2枚目では年代ごとの住民税非課税世帯の割合一覧表を掲載1/4
出所:内閣官房「新たな経済に向けた給付金・定額減税一体措置」、内閣官房「定額減税・各種給付の詳細」をもとに筆者作成
〈住民税非課税世帯への給付金の概要〉
- 対象となる世帯
・住民税が一切かかっていない世帯
・所得が低く住民税の一部(均等割)のみ納める世帯
- 給付額
・10万円
※18歳以下の児童がいる世帯は児童1人につき5万円が追加で給付
- 給付額の要件
・10万円:2023年度は課税世帯で、2024年度に住民税が非課税・均等割のみ課税となった世帯
- 給付対象外の世帯
・2023年度の住民税非課税世帯給付金(3万円・7万円・10万円)を受け取った世帯
・全員が住民税が課税されているほかの親族の扶養に入っている世帯
・対象となったが辞退した世帯、未申請の世帯
- 申請方法
・住んでいる自治体に申請
※具体的な方法は自治体により異なる
なお、2023年度の住民税非課税世帯への給付金を受け取った人や、給付対象でありながら辞退した人、申請していない人は、2024年度の給付金は受け取れません。
今回の給付金対象者は、2024年度に新たに住民税非課税となった世帯のみです。
住民税が非課税となる要件は自治体によって異なります。東京23区で独身世帯の場合は、所得金額が45万円以下であれば住民税は非課税です。
給与収入だと年収100万円以下、年金収入だと60歳〜64歳が105万円以下、65歳以上が155万円以下の場合に住民税が非課税となります。
では、住民税非課税世帯の対象に高齢者世帯が多い理由などについて、次章で解説します。
2. 住民税非課税世帯には高齢者が多い?
住民税非課税世帯は若年層が少なく、60歳代以降の高齢者が多くなっています。年代ごとの住民税非課税世帯数は以下のとおりです。
- 20歳代:52世帯(32.7%)
- 30歳代:35世帯(12.0%)
- 40歳代:52世帯(10.0%)
- 50歳代:106世帯(13.6%)
- 60歳代:212世帯(21.7%)
- 70歳代:432世帯(35.9%)
- 80歳代:389世帯(52.5%)
- 65歳以上:955世帯(38.1%)
- 75歳以上:611世帯(49.1%)
65歳以上の高齢者世帯は2504世帯のうちの955世帯で、全体の38.1%と約4割を占めています。半数とまではいかないものの、多くの世帯が住民税が課税されていないのです。
なぜ住民税非課税世帯に高齢者が多いのかというと、年金所得の税控除額が大きいからだと考えられます。年金所得に対しては「公的年金等控除」と呼ばれる所得控除があります。
これにより、年金所得が65歳未満は60万円以下、65歳以上は110万円以下であれば住民税がかからないのです。前述のとおり東京23区の独身世帯の場合、住民税は所得が45万円以下であれば非課税となります。
よって、年金収入が65歳未満は105万円以下、65歳以上は155万円以下の場合に非課税となります。
現役世代の場合、東京23区の住民税が非課税となるのは年収100万円以下が一般的です。給与所得控除で55万円が控除され、所得が45万円以下となるためです。
年金収入のみで暮らす高齢者世帯のほうが年収額の割に非課税となるケースが多いため、非課税世帯が増えていると考えられます。
このほか、退職による収入減少なども非課税世帯が増える要因の一つといえるでしょう。
次章では、年金世帯向けの給付金である年金生活者支援給付金について解説します。
3. 年金世帯向けの「年金生活者支援給付金」対象者は?
年金生活者支援給付金は、年金世帯で生活が困窮する人に対して支給される給付金です。給付対象者は以下のとおりです。
〈老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金〉
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者である。
- 世帯全員が市町村民税非課税である。
- 前年の公的年金等の収入金額(※)とその他の所得との合計額が以下のとおりである。
〈昭和31年4月2日以後生まれの方〉
老齢年金生活者支援給付金…78万9300円以下
補足的老齢年金生活者支援給付金…78万9300円を超え88万9300円以下
〈昭和31年4月1日以前生まれの方〉
老齢年金生活者支援給付金…78万7700円以下
補足的老齢年金生活者支援給付金…78万7700円を超え88万7700円以下
〈障害年金生活者支援給付金〉
- 障害基礎年金の受給者である。
- 前年の所得(※1)が「472万1000円+扶養親族の数×38万円(※2)」以下である。
〈遺族年金生活者支援給付金〉
- 遺族基礎年金の受給者である。
- 前年の所得(※1)が「472万1000円+扶養親族の数×38万円(※2)」以下である。
※1障害年金・遺族年金などの非課税収入を除く
※2同一生計配偶者のうち70歳以上の者または老人扶養親族の場合は48万円、特定扶養親族または16歳以上19歳未満の扶養親族の場合は63万円となる
つまり、2024年度の住民税非課税世帯給付金の対象となれば、年金生活者支援給付金も併せて受けられるのです。住民税非課税世帯への給付金10万円に加えて、年金生活者支援給付金が支給されることとなります。
では、年金生活者支援給付金の給付額と給付時期について、次章で解説します。
4. 「年金生活者支援給付金」の給付額
年金生活者支援給付金の給付額は、以下のとおりです。
年金生活者支援給付金の給付額4/4
出所:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」、日本年金機構「障害年金生活者支援給付金の概要」、日本年金機構「遺族年金生活者支援給付金の概要」をもとに筆者作成
〈老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金〉
- 以下の計算式で算出した金額の合計額
・保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5310円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
・保険料免除期間に基づく額(月額)
= 1万1333円 × 保険料免除期間/ 被保険者月数480月
〈障害年金生活者支援給付金〉
- 障害等級2級: 月額5310円
- 障害等級1級: 月額6638円
〈遺族年金生活者支援給付金〉
- 月額5310円
※2人以上の子が遺族基礎年金を受給している場合は、5310円を子の数で割った金額をそれぞれに支給する
障害年金生活者支援給付金、遺族年金生活者支援給付金は定額が支給されます。しかし、老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金は被保険者月数や保険料納付期間が金額の算定要素となっているため、人によって金額が異なるのです。
特に保険料免除期間に基づく金額は基礎額が1万1333円と、保険料納付済期間に基づく基礎額5310円よりも多くなっています。そのため、免除期間が長い人ほど多くの給付を受けられる可能性があります。
月あたりの金額差は数千円でも、年間給付額に換算すると1万円程度の差が生まれます。給付額の個人差は大きいといえるでしょう。
5. 対象世帯は忘れずに申請を
今年から住民税が非課税になった世帯の人は、給付金が受け取れます。年金をはじめとした収入が少なく生活に苦しむ人にとっては、貴重な収入です。
住民税非課税世帯への給付金は自治体から、年金生活者支援給付金は年金事務所から給付対象者に申請書類が送られてきます。忘れずに申請し、確実に給付金を受け取りましょう。
※金額や要件などは自治体等によって異なるので、個別の相談・お問い合わせにはお答えできません。
参考資料
- 内閣官房「新たな経済に向けた給付金・定額減税一体措置」
- 内閣官房「定額減税・各種給付の詳細」
- 東京都主税局「個人住民税」
- 厚生労働省「令和5年国民生活基礎調査」
- 国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「障害年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「遺族年金生活者支援給付金の概要」
石上 ユウキ