1.1 病気やケガで使える制度

健康保険の加入者が病気やケガになった場合は、主に以下の給付や手当が受けられます。

  • 高額療養費:1カ月の医療費の自己負担額が高額になった際に、自己負担限度額を超えた分があとで払い戻される。
  • 傷病手当金:被保険者が病気やけがのために働けずに会社を3日以上連続して休んだ場合、4日目の休業日から給与の3分の2が休んだ日の間支給される。
  • 入院時食事療養費:入院時の食費の一部を負担してくれる。
  • 入院時生活療養費:入院する65歳以上の人が生活療養した際の費用の一部を負担してくれる。
  • 訪問看護療養費:在宅で療養している人が訪問看護ステーションの訪問看護師から療養上の世話や必要な診療の補助を受けた場合に、費用の一部を負担してくれる。

高額療養費は、1カ月の医療費が自己負担限度額を超えた際に、超えた分がすべて払い戻される制度です。大病や大きな怪我をした際の費用負担が最低限で済むため、安心して医療を受けられます。自己負担限度額は自分の給与額に基づき決まります。

たとえば、毎月の給与が30万円の30歳代の人が、1カ月に15万円窓口で医療費を支払ったとしましょう。給与が30万円の場合の自己負担限度額は「8万100円-(医療費-26万7000円)×1%」となります。

現役世代が窓口で負担する医療費は3割ですから、1カ月に15万円の医療費を窓口で支払った場合、総医療費は50万円です。よって、自己負担限度額は、7万7770円となります。窓口で支払った15万円のうち、自己負担すべき金額は7万7770円のため、差額の7万2230円が高額療養費として支給されるのです。

また、病気やケガで入院して会社を休み続けている場合には傷病手当金が支給されます。傷病手当金は、連続して3日以上会社を休んでいる場合に、4日目から休んだ期間の分だけ支給されます。連続して3日間の休業がない場合には、手当は支給されません。

支給額は「支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×3分の2」です。つまり、日額給与の3分の2が休んでいる間に支給されるのです。

たとえば、毎月の給与が25万円の場合、5566円が傷病手当金として支給され続けます。30日会社を休んだとすると、27日間5600円が支給され続けるため、合計で約15万円受け取れます。入院による収入減少を防げるため、家賃や公共料金の支払いといった生活費支出を、滞りなく行えます。

このほか、入院時の食事費用の一部を負担する「入院時食事療養費」や生活療養費の一部を負担する「入院時生活療養費」、訪問介護時の療養費の一部を負担する「訪問介護療養費」などがあります。