老後にどのくらいのお金が必要になるのか負担に感じている方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、各機関のデータを参照しながら、老後に必要な資金がどのくらいなのか解説すると共に、高額になることもある医療費や介護費の平均額と安く抑える方法を解説します。
1. 60歳代の貯蓄額を一覧で見る
金融広報中央委員会のデータによると、60歳代の金融資産保有額で最も多いのは3000万円以上の26%となっています。
【写真5枚】60歳代の金融資産保有額(金融資産保有世帯のみ)。写真の後半では平均余命や介護費用を紹介1/5
- 100万円未満:7.4%
- 100~200万円未満:5.7%
- 200~300万円未満:5.5%
- 300~400万円未満:3.8%
- 400~500万円未満:2.4%
- 500~700万円未満:9.2%
- 700~1000万円未満:8.4%
- 1000~1500万円未満:8.7%
- 1500~2000万円未満:6.8%
- 2000~3000万円未満:12.0%
- 3000万円以上:26.0%
- 平均:2588万円
- 中央値:1200万円
ついで、2000~3000万円未満が12%と2番目に高くなっています。
60歳は現役で働きながら貯めた貯蓄があるのに加え、退職金など受け取っている方も多く、平均的な貯蓄額は高くなっていることが分かるでしょう。
なお、同データでは平均値が2588万円、中央値が1200万円となっています。
ただし、上記は金融資産を保有している方のデータです。
60歳代の方で金融資産を保有している人の割合は79%、保有していない人の割合は21%となっており、保有している人の割合がかなり高いとはいえ、60歳代全体で見てみるともう少し低い数値であることが予想できるでしょう。
ちなみに、60歳代全体の平均貯蓄高は458万円となっています。
2. 老後にかかる費用は?医療費と介護費用の平均額
60歳代の平均的な貯蓄額、金融資産保有額のデータをご紹介しましたが、実際のところ、どの程度の額を貯蓄しているとよいのでしょうか。
2.1 医療費と介護費の平均額
ここでは、医療費と介護費から考察してみたいと思います。
まず、医療費については厚生労働省の「生涯医療費(2021年度)」によると、生涯に必要な医療費の額である生涯医療費は2815万円です。
また、生涯医療費の額を65歳以上に絞ると、1604万円となっています。
次に、介護費用を見てみましょう。
公益財団法人生命保険文化センターが2021年に行った「生命保険に関する全国実態調査」によると、一時的な費用として平均74万円、月々の費用として平均8万3000円となっています。
医療費と介護費の平均的な額から、老後に必要な貯蓄額をシミュレーションしてみます。
まず、厚生労働省の「令和5年簡易生命表の概況」によると、日本人の男性の平均寿命は81歳、女性の平均寿命は87歳となっています。
65歳からを老後、日本人全体の平均寿命を84歳と考えると、19年間あります。
介護費は平均月額8万3000円だったので、19年間の額を計算するとどうなるでしょうか。次章で試算してみます。
3. 老後に必要な貯蓄額はいくら?シミュレーション
介護費は平均月額8万3000円だったので、19年間の額を計算すると以下の通りです。
8万3000円×12ヶ月×19年間=1892万円
以上から、老後に必要な医療費と介護費の総額は以下のようになります。
- 生涯医療費(65歳以上):1604万円
- 介護費用の一時的な出費:74万円
- 介護費用の65歳以上の合計:1892万円
- 合計:3570万円
ただし、生涯医療費は実際に負担している額ではありません。
健康保険に加入していれば、医療費のうち、高齢者の方が実際に負担するのは1~3割です。
総務省の「2023年(令和5年)家計の概要」によると、2023年の夫婦2人のみの世帯の平均支出額(月額)は29万3997円です。
上記データより、内訳を見てみると「保健医療」は、1万4728円となっており、実際の負担額はそこまで大きくないことが分かるでしょう。
なお、上記平均支出額から、65歳以上19年間で必要な貯蓄を計算してみると、以下のようになります。
- 29万3997円×12ヶ月×19年間=6703万1316円
一方、日本年金機構によると、2024年における厚生年金の「夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額(月額)」は23万483円となっています。
こちらを65歳以上19年間で受け取れる額として計算すると、以下の通りです。
- 23万483円×12ヶ月×19年間=5255万124円
65歳以上19年間で必要な費用から受け取れる年金額を差し引くと以下のようになります。
- 6703万1316円(平均的な消費支出額)-5255万124円(厚生年金)=1448万1192円
このことから、老後に必要な貯蓄額としては少なくとも1500万円程度は必要と計算できるでしょう。
ただし、上記はあくまでも平均額であり、健康を壊して平均より高額な医療費が必要になったり、要介護状態になり介護費用がかかったりするケースもある点には注意が必要です。
4. 医療費や介護費用を抑える方法とは
老後の出費で大きな負担となりやすいのが医療費や介護費用ですが、ここでは医療費や介護費用を抑える方法について見ていきましょう。
4.1 高額療養費制度を利用する
高額療養費制度は、1ヶ月の医療費が一定額を超えた場合に超えた部分の支給を受けられる制度です。
高額療養費制度は、通常、一定額を超える医療費を支払った後に、手続きを行うことで支給を受けることができます。
なお、所得により上限額が異なるため、あらかじめ確認しておくことが大切です。
4.2 在宅介護を検討する
介護費用については、要介護等や介護する方の状況にもよりますが、在宅介護を選ぶことで介護費用を安く抑えやすくなるでしょう。
2021年の公益財団法人生命保険文化センターのデータによると、在宅介護の場合の介護費用の平均は4万8000円であるのに対し、施設は12万2000円となっています。
5. まとめにかえて
老後に必要となる貯蓄について、特に医療費や介護費に注目しつつ解説しました。
各機関のデータを見てみると一般的な家庭で必要な老後の貯蓄額は1500万円となりました。
しかし上記はあくまでも一般的な家庭の平均額であり、健康状況次第では高額な医療費や介護費が必要になってしまうことも考えられます。
本記事でご紹介した高額療養費制度や、在宅介護を検討する方法などを知っておくと、もしものときにも安心できるでしょう。
参考資料
- 生命保険文化センター「リスクに備えるための生活設計」
- 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」
- 日本年金機構「令和6年4月分からの年金額等について」
- 総務省「2023年(令和5年)家計の概要」
- 厚生労働省「生涯医療費(令和3年度)」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]2023年」
- 公益財団法人 生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」2021年度
- 厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」
- 全国健康保険協会「高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)」
逆瀬川 勇造