4. 公的年金「だけで」暮らせるシニア世帯は50パーセント以下
60歳代世帯の貯蓄事情や、シニアの年金月額データをながめたあとは、年金世帯の暮らしぶりに関する意識調査の結果にも目を向けてみましょう。
厚生労働省が公表した「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」によると、シニアの年金世帯(※4)のうち、年金収入だけで暮らしている世帯の割合は41.7%。前回調査から2.3ポイント上昇となり、引き続き全体の半分に満たない結果となりました。
年金額が昨今の物価上昇に追い付けていないことも、この背景の一つであることは確かでしょう。
(※4)同調査中では「公的年金・恩給を受給している高齢者世帯」とされています。
5. 人生100年時代「切れない収入源」をどう確保していく?
今回は、60歳代世帯の貯蓄額事情についてながめたあと、令和シニアの年金事情を確認。暮らしぶりに関する意識調査の結果も見てきました。
実は公的年金は2年連続、前年度からの引き上げが行われています。しかし、物価上昇が止まらぬこんにち、年金額改定がシニア世帯の家計改善に繋がっているとは言いにくいのが現状でしょう。
公的年金は、受給要件を満たしていれば生涯にわたり受け取れる、いわゆる「切れない収入源」と言えます。一方で、貯蓄はいわゆる「切り崩していく資産」です。
「人生100年時代」と言われる長寿時代に求められているのは、「切れない収入源」を確保する視点と言えるでしょう。
株式の配当金、家賃収入などの不労所得もその例ですね。いずれも多かれ少なかれ初期費用とともに知識が必要となるためややハードルが高いと感じる人もいるでしょう。
そこでぜひ視野に入れたいのが、資産運用で老後資金を積み立てていく発想です。iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)やNISAのつみたて投資枠、民間の個人年金保険などの活用を検討していくのも良いでしょう。
老後資金づくりの最適なスタイルは人それぞれ。ご自身に合った資産の増やし方を見つけるために、まずは情報収集からスタートしてみましょう。
6. 【ご参考】年金に関する疑問や不安を解消!よくある質問を解説
日本の公的年金制度は複雑で、多くの人がさまざまな疑問を抱えていることでしょう。ここでは、年金に関するよくある質問を取り上げ、その解答を解説します。
6.1 年金の主な種類と仕組みは?
日本の公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造になっています。
国民年金は日本国内に住む20歳以上60歳未満の全ての人が加入する基礎年金で、厚生年金は会社員や公務員が加入するものです。
国民年金は一定の保険料を納付し、将来の年金額が決まるのに対し、厚生年金は収入に応じた保険料を支払うため、将来の受給額にも差が出ます。
6.2 「繰下げ受給」とはどんな制度?
年金の受給開始年齢を遅らせることで、受給額が1カ月につき0.7%増える「繰下げ受給」があります。
例えば、65歳から受給を開始する予定を75歳0カ月まで繰り下げると、84%増額となります。これは、長期間働くことができる人や、他の収入源がある人にとって有利な選択肢となります。
6.3 年金を増やす方法はあるのか?
年金を増やす方法はいくつかあります。自営業やフリーランスの方は、国民年金の付加保険料を支払うことで、将来の受給額を増やせます。
また、厚生年金に加入する働き方に切り替えることも一つの方法です。
参考資料
- 首相官邸「岸田内閣総理大臣記者会見」2024年6月21日
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」
- 厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「国民年金保険料」
- 日本年金機構「令和6年4月分からの年金額等について」
- 厚生労働省「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」
堀江 啓介