以下は、かなり理屈っぽい話になりますが、よろしければ最後までお付き合いください。

中国にとって軍事上の拠点としての価値が大きい港湾と、中国にとってほとんど価値のない港湾があった場合に、前者の分だけ肩代わりするのか、という問題は、どう考えるべきでしょうか。これは難しい判断かもしれませんね。

後者も米国等が肩代わりした場合、何が起きるでしょうか。「中国から借金して港湾を作れば、必ず借金は米国等が肩代わりしてくれる」と世界中の途上国が考えるようになると、世界中の途上国が「中国から借金をしてインフラを整備しよう。そうすれば米国等が肩代わりしてくれるだろう」と考えてインフラ整備を進める可能性があります。

これを「モラルハザード」と呼びます。様々な意味を持った言葉ですが、ここでは「1人を甘やかすと他の人々が甘えるようになる」といった意味ですね。それでは米国等にとってたまったものではありません。

一つの考え方は、肩代わりの対象は軍事拠点として意味のある軍港に限るべきだ、というものでしょう。それに対して「援助の本質は・・」といった批判が多いようであれば、防衛予算から拠出することも要検討かもしれません。米軍に「思いやり予算」を増額するより、途上国の借金を肩代わりする方が日本の安全保障に役立つケースも多いでしょうから。

今一つは、「10の借金を肩代わりするが、利子をつけて12にして返してね」という選択肢です。それなら、すでに借金をしている国は喜んで応じるでしょう。20の損をするよりは米国等に12払ったほうが得ですから。しかし、これから港を作る国は躊躇するでしょう。10借りて12返すのは嫌ですから。

このあたりは、経済学と政治学と、様々なことを考えながら検討していくのでしょうね。

なお、本稿は厳密性よりも理解しやすさを重視しているため、細部が事実と異なる可能性があります。ご了承ください。

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塚崎 公義