2. 2060年度における所得代替率のシミュレーション
財政検証で将来の所得代替率の見通しを立てるため行われたシミュレーションは、以下の4種類です。
- 高成長実現ケース(実質経済成長率1.6%、実質賃金上昇率2.0%):56.9%
- 成長型経済移行・継続ケース(実質経済成長率1.1%、実質賃金上昇率1.5%):57.6%
- 過去30年投影ケース(実質経済成長率▲0.1%、実質賃金上昇率0.5%):50.4%
- 1人当たりゼロ成長ケース(実質経済成長率▲0.7%、実質賃金上昇率0.1%):37%~33%程度
現状維持に近い「過去30年投影ケース」の場合、2060年度の所得代替率は50.4%となり、政府目標をぎりぎり上回る結果となりました。
3. 所得代替率以外に知っておくべきこと
所得代替率以外にも、財政検証の中で被用者保険の更なる適用拡大や65歳以上の在職老齢年金の撤廃、標準報酬月額の上限の見直しなどに関する議論も行われています。
被用者保険の適用拡大や65歳以上の在職老齢年金の撤廃には、深刻な人手不足へ対応する措置という側面もあります。
今後日本は労働力人口の減少が見込まれているため、年金財政だけでなく労働力の確保も考慮しなければなりません。
実際に、2024年10月より被用者保険の適用拡大が行われます。主に短時間労働者が影響する制度改正ですが、今後も「負担増」は免れないでしょう。