ファイナンシャルアドバイザーである筆者は、日頃さまざまな年代のお客様の「お金」に関する相談を受けますが、中でも多いのは「公的年金への不安」です。

「自分たちはもらえないのに、毎月保険料を払う必要はありますか?」「その分があったらもっと他のことに使えるではないか」といまの若い世代は「お金」に対して真剣かつシビアな意見を持った方も少なくありません。

本来は老後の安心をもたらすはずの「年金」、逆に多くの方の不安材料となっているのは実に悲しい現実です。

後ほど詳しく見ていきますが、私たちの年金は現役時代の働き方や支払った保険料によってもらえる金額が変わります。

もちろん制度の見直しは毎年行われていますが、現状いくらもらえるのか気になる方も多いでしょう。

今回は、現役シニア世代が実際に受け取っている年金月額データを整理しながら、老後資金についても考えていきます。また、意外と見落としがちな老齢年金のしくみも解説しておきますので、老後対策をすすめる上での大切な知識として確認しておきましょう。

1. 一般的な夫婦2人分の「モデル年金」は約23万円

最初に、厚生労働省が発表した「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」より、2024年度の年金額例を確認していきます。

公的年金は毎年度見直しが行われます。2024年度は昨今の物価や賃金の上昇を背景に前年度から2.7%の増額改定となりました。

1.1 国民年金・厚生年金の年金額の例

【写真全3枚中1枚目】2024年度の年金額の例。2枚目以降で国民年金・厚生年金の平均月額をチェック

2024年度の年金額の例

出所:厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成

  • 国民年金(老齢基礎年金):満額で月額6万8000円
  • 厚生年金:月額23万483円(標準的な夫婦世帯の二人分)

国民年金は、40年間すべての保険料を納付した場合に受給できる満額です。厚生年金は、一般的な夫婦世帯のモデルケースとして下記の条件で試算した、夫婦2人分の合計金額となります。

  • 【夫:老齢厚生年金+老齢基礎年金(国民年金)】平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円)で 40年間就業した場合、受け取り始める年金額
  • 【妻:老齢基礎年金(国民年金)】一度も厚生年金に加入したことがない・国民年金保険料は40年間未納なく納付

会社員の夫と専業主婦の妻を想定したモデル年金額となります。しかし、近年は共働き世帯も増えておりさまざまなケースが想定されるでしょう。

厚生労働省では、現役時代の収入ごとに複数パターンの年金例を提示しています。

1.2 【夫婦のモデル年金額】現役時代の収入で異なる老後の収入

  • 夫が報酬54万9000円+妻が報酬37万4000円:33万4721円
  • 夫が報酬43万9000円+妻が報酬30万円:24万9777円
  • 夫が報酬32万9000円+妻が報酬22万5000円:25万5232円
  • 夫が報酬54万9000円+妻が短時間労働者の平均的な収入:28万4588円
  • 夫が報酬43万9000円+妻が短時間労働者の平均的な収入:26万967円
  • 夫が報酬32万9000円+妻が短時間労働者の平均的な収入:23万7346円
  • 妻が報酬37万4000円+夫が短時間労働者の平均的な収入:24万7101円
  • 妻が報酬30万円+夫が短時間労働者の平均的な収入:23万978円
  • 妻が報酬22万5000円+夫が短時間労働者の平均的な収入:21万4854円
  • 夫婦ともに短時間労働者だった場合の平均的な収入:19万6968円
  • 夫が報酬54万9000円+妻が国民年金のみ加入:25万4104円
  • 夫が報酬43万9000円+妻が国民年金のみ加入:23万483円
  • 夫が32万9000円+妻が国民年金のみ加入:20万6862円
  • 妻が報酬37万4000円+夫が国民年金のみ加入:21万6617円
  • 妻が報酬30万000円+夫が国民年金のみ加入:20万494円
  • 妻が報酬22万5000円+夫が国民年金のみ加入:18万4370円

現役時代の年収により違いが出ますが、夫婦ともに厚生年金で働く世帯ほど、老後の年金収入が高くなるのが分かります。

次章では、現シニア世代が国民年金や厚生年金を月額どのくらい受給しているのかを確認していきましょう。