3. 男女格差をなくす形での制度改正案が検討されている
厚生労働省は、2025年の成立に向けて、遺族厚生年金の男女間格差を是正する制度改正を検討しています。
改正案では、男女にかかわらず、20歳代~50歳代の子のいない配偶者は、5年間の有期給付となる予定です。
特に30歳代~50歳代の女性は、現行制度では無期限給付だったところから有期給付となるため、ネガティブな影響が大きいといえます。そのため、具体案はまだ検討中ですが、一気に5年間で打ち切りとするのではなく、段階的に有期給付に移行する措置が取られる予定です。
また、以下のような措置を講じることで、影響を緩和する見通しとなっています。
- 現行制度の離婚分割を参考に、死亡者との婚姻期間中の厚年期間に係る標準報酬等を分割する死亡時分割(仮称)の創設を検討する。
- 現行制度における生計維持要件のうち収入要件の廃止を検討する。
- 現行制度の遺族厚生年金額(死亡した被保険者の老齢厚生年金の4分の3に相当する額)よりも金額を充実させるための有期給付加算
なお、男性については、現行は55歳まで受給されなかったので、むしろ受給機会が増える制度改正です。また、子どものいる世帯、高齢期の需給制度には変更がありません。
4. もしもの時のための備えを万全に
緩和措置や移行期間が設けられるとはいえ、今後徐々に女性の遺族厚生年金の受給期間が有期へと移行していく見通しです。現時点で夫婦で暮らす中でもしものときのことを考えるのは気が引けますが、遺族厚生年金を過度にあてにできなくなる点には留意が必要です。
今のうちから社会に出て経済的なリスクを減らすか、資格取得や自己研鑽などでもしものときにはすぐ社会に出られるように準備をしておくのが一つの方法です。
また、生命保険や投資、貯蓄などで「もしも」の時の経済的な負担を補てんできるように備えておくのも有効な方法といえるでしょう。
参考資料
中本 智恵