50歳代といえば、子育ての手も離れ(といっても大学・大学院に進学したお子さんがいる場合まだ学費は必要かもしれませんが)、老後に向けた貯蓄も必要だと強く意識し始める世帯も多いことでしょう。では50歳代の世帯は一体どのくらいの貯蓄があるのでしょうか。今回は総務省のデータをもとに貯蓄高や負債高の平均値の過去10年のデータを遡り、その特徴を振り返ってみましょう。
50歳代の貯蓄高とは
総務省は2018年5月に「家計調査報告」[貯蓄・負債編]平成29年(2017年)平均結果の概要として調査結果を発表しています。同調査では、二人以上の世帯に関して世帯主の年齢階級別貯蓄や負債現在高を公表しています。データを俯瞰する際には、平均値、中央値だけではなく、標準偏差なども知りたいところですが、世代別の貯蓄及び負債現在高については平均値のデータに基づいています。さらに詳細のデータについては総務省のますますの積極的な姿勢に期待したいところです。
さて、2017年は50歳代(50~59歳)の貯蓄現在高は1699万円となっています。この1699万円という水準は過去10年を振り返ってみると、10年前の2008年の1675万円とほぼ同水準です。貯蓄現在高がもっとも少なかった2011年は1588万円でしたが、その後1600万円から1800万円のレンジを推移しています。この期間で最も貯蓄現在高が大きかったのが、2016年の1802万円です。
また、過去10年の50歳代の貯蓄現在高推移は以下の通りです。
- 2008年:1675万円
- 2009年:1670万円
- 2010年:1660万円
- 2011年:1588万円
- 2012年:1675万円
- 2013年:1595万円
- 2014年:1663万円
- 2015年:1751万円
- 2016年:1802万円
- 2017年:1699万円
50歳代は40歳代と比べると貯蓄現在高の平均値は600万円ほど増えています。とはいえ、過去10年で見ると10年前とその水準は大きく変わりません。平均寿命などが延びていることや、年金の支払い開始時期に関して様々な議論がされている中で、貯蓄高を増やしたいという人が多いと思われますが、実際にはそれほど思うように貯蓄高が増えていないという人も多いのではないでしょうか。もっとも40歳代は貯蓄高が10年前と比べて減少していましたので、50歳代の貯蓄の状況は40歳代と比べると「まだまし」といえるのかもしれません。
負債現在高はやや増加
貯蓄現在高をここまで見てきましたが、続いて負債現在高も見ておきましょう。
実は50歳代の貯蓄現在高は先に見てきたように10年前と比べてほぼ変わらないのですが、負債現在高はやや増加しています。貯蓄は横ばい、負債は若干ですが増えるという過去10年での特徴です。
過去10年の50歳代の負債現在高は以下の通りです。
- 2008年:525万円
- 2009年:529万円
- 2010年:551万円
- 2011年:551万円
- 2012年:536万円
- 2013年:607万円
- 2014年:654万円
- 2015年:645万円
- 2016年:591万円
- 2017年:617万円
50歳代の過去10年の負債現在高のトレンドを見ますと、現在の負債現在高は617万円と10年前の2008年と比べると若干ですが増加しています。といっても、負債高は40歳代と比べるとかなり減少します。2017年の40歳代の負債現在高は1055万円でしたので、400万円程度も減少しています。もっとも住宅ローンなどに関係する借入がある世帯でも返済が進んでいるでしょうから減少していても当然ですね。
まとめにかえて
50歳代半ばから後半にかけては定年退職を意識される年齢でもありましょうし、それを前にして新しい就業機会の選択をされる人も多いかもしれません。そうした世代の貯蓄高は10年前とほぼ変わらず、負債高はやや増えているというのが過去10年の特徴です。もっとも、平均寿命が延びるなどする中でどこまで貯蓄高を上げて行けるのかというのがこの世代の方の興味ではないでしょうか。
【ご参考】総務省のデータ使用上の注意点
同調査でいう「貯蓄」とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計を言います。いわゆる「貯金」、「預金」だけではないことに注意が必要です。表現としてはどちらかというと「金融資産」という方が近いかもしれません。また、同調査の貯蓄は世帯全体の貯蓄であり、また、個人営業世帯などの貯蓄には家計用のほか事業用も含めるとされています。したがって、個人事業主においてはそれに関係する資産も含まれるという点にも留意する必要があります。
参考記事:
青山 諭志