「お金」の話は仲の良い友人でもなかなか聞きにくいもの。結婚もし、場合によっては子育て真っ最中の世帯も多いであろう20~30歳代の世帯の貯蓄はいくらあるのでしょうか。ここでは総務省のデータの「40歳未満」を20から30歳代に見立て、そのデータをもとに過去10年を遡って振り返ってみましょう。

40歳未満の貯蓄現在高とは

総務省は2018年5月に「家計調査報告」[貯蓄・負債編]平成29年(2017年)平均結果の概要として調査結果を発表しています。同調査では、二人以上の世帯に関して世帯主の年齢階級別貯蓄や負債現在高を公表しています。2017年は40歳未満の貯蓄現在高は602万円となっています。

この602万円という水準は過去10年を振り返ってみると、2012年の530万円と比べると70万円近くも増加しましたが、2008年比では11万円程度の増加です。あまり変化したとは言えないでしょう。こうしてみるとアベノミクス前夜が最も貯蓄現在高が低かったことが言えます。

また、過去10年の40歳未満の貯蓄現在高推移は以下の通りです。

  • 2008年:591万円
  • 2009年:558万円
  • 2010年:577万円
  • 2011年:554万円
  • 2012年:530万円
  • 2013年:588万円
  • 2014年:562万円
  • 2015年:608万円
  • 2016年:574万円
  • 2017年:602万円

気になる負債現在高の増加傾向

貯蓄現在高をここまで見てきましたが、負債現在高も見ておきましょう。

40歳未満の貯蓄現在高は先に見てきたように10年前と大きく変化はしていないのですが、負債現在高は大きく増加しています。

過去10年の40歳未満の負債現在高は以下の通りです。

  • 2008年:758万円
  • 2009年:707万円
  • 2010年:777万円
  • 2011年:772万円
  • 2012年:829万円
  • 2013年:931万円
  • 2014年:934万円
  • 2015年:942万円
  • 2016年:1098万円
  • 2017年:1123万円

こうしてみると40歳未満の負債現在高は2012年を境に大きく拡大をはじめ、2016年には1000万円を超え、そして2017年には1100万円を超えています。

もっともこの世代の負債は多くは持家、住宅ローンに関係するものでしょうから、金融機関のローンが以前と比べて借りやすくなった、また不動産価格の上昇なども影響している可能性があります。

貯蓄が増えずに負債が増える傾向

こうしてみると、40歳未満の二人以上世帯の貯蓄と負債は、貯蓄が増えない中で負債が増えるという構造です。そしてこの構造はより顕著となっています。これは決して健全な方向には向いているとは言えないでしょう。一方で、40歳代以降の世代では、40歳未満のようには変化していません。40歳代(40~49歳)及び50歳代(50~59歳)でも負債現在高の数値が過去10年でやや増加傾向にありますが、40歳未満の増加ペースと比べると大きくはありません。

【ご参考】総務省のデータ使用上の注意点

同調査でいう「貯蓄」とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計を言います。

いわゆる「貯金」、「預金」だけではないことに注意が必要です。表現としてはどちらかというと「金融資産」という方が近いかもしれません。

また、同調査の貯蓄は世帯全体の貯蓄であり、また、個人営業世帯などの貯蓄には家計用のほか事業用も含めるとされています。したがって、個人事業主においてはそれに関係する資産も含まれるという点にも留意する必要があります。

青山 諭志