こうして見ると、昨年末以降の約半年間で▲14%下落している中国の株価下落率が、他国より突出して大きいことが分かります。また、直近1カ月間の下落率で見ても、ブラジルと並んで大きいことも分かります。

現在、上海総合指数は“節目”と言われた3,000ポイントを大きく割り込み、約2年半ぶりの安値を更新中です。

その一因は、米国の利上げの影響と言われています。確かに、米国の継続的な利上げ実施に伴い、資金引き上げが続く新興国の株価下落が顕著です。中国以外でも、インドネシアやブラジルなど、インドなど一部を除く多くの新興市場国で株価低迷が続いています。

しかし、それだけでは中国の株価下落が突出していることを十分に説明できません。

米中貿易摩擦問題も大きな要因だが…

他の要因として挙げられるのが、いわゆる“米中貿易摩擦問題”の影響です。トランプ政権が打ち出した中国製品(鉄鋼など)への課税強化や輸入制限が、米中貿易戦争に発展するリスク拡大につながっているというものですが、これも間違いなく株価下落の要因になっていると言えましょう。

しかし、米中貿易摩擦問題で、この突出した中国の株価下落を十分に説明できるでしょうか。

少し気になるのが、最近発表されている中国の経済指標です。現時点では、急激に悪化しているデータが公表されたわけではありません。しかし、回復ペースが鈍化した、あるいは、既にピークアウトしたと推察できる指標が多いことも事実です。

たとえば、大手建機メーカーが公表している中国の油圧ショベル需要(月次)を見ると、5月の伸び率は+55%増(対前年同月比)となり、直近では最も低い伸びとなりました。確かに、+55%増は大きい伸びですが、既にピークアウトしつつあると見られたようです。この数値が公表されて以降、日立建機(6305)やコマツ(6301)などの株価は連日で年初来安値を更新しました。

3年前の“中国ショック”再発への警戒が必要

中国の株価下落で思い出されるのは、2015年夏に起きた“中国ショック(チャイナショック)”です。あの時もきっかけは小さな経済指標でしたが、6月中旬の高値から2カ月後には最大▲45%下落する大暴落となったのです。

この“中国ショック”は、世界中の株式市場に極めて大きな影響を与えたことを覚えている人も多いはずです。現時点では、今回はそこまで深刻な状況には至っていませんが、それでも、今後は中国株式市場の“底割れ懸念”に注意が必要です。

3年前の“中国ショック”再来となる懸念は、まだ燻ったままと考えられます。

LIMO編集部