9割のシニアが「介護費用は自分で払う」と回答

介護費用のまかない方に関するシニアの意識とは?

さて、ここからはシニアの「自分の介護費用」に関する意識をのぞいてみましょう。

内閣府が公表する「令和4年 高齢者の健康に関する調査結果」では、65歳以上の男女の約9割が、将来排せつなどで介護が必要になったら、介護費用を自分の年金や貯蓄などの資産から出すつもりだと回答しています。

そこで、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査 令和4年調査結果」から70歳代世帯の金融資産保有額を見てみると……。

  • 二人以上世帯:平均1906万円・中央値800万円
  • 単身世帯:平均1433万円・中央値485万円

平均は二人以上世帯で1906万円、単身世帯で1433万円。一方、より実態に近い中央値は、二人以上世帯で800万円、単身世帯で485万円にまで下がります。

このお盆休みは「介護とお金のこと」親と話してみませんか?

冒頭でも「シニアの介護や医療にかかるお金は、何歳からどの程度必要となるかは見えにくい」とお話ししました。夫婦世帯であれば「二人で施設入所した場合」「一人が施設入所、一人が自宅介護」となるケースも想定しておく必要があるでしょう。

介護費用は、まずは「親自身の資産から」が基本。子ども世帯の資産を切り崩す、介護離職を選んで子ども自身の暮らしに影響が及ぶことは極力避けたいものです。

また、親が老後資金をしっかり蓄えているというケースでも、認知症で判断力が低下するとその資産を活用できなくなる可能性もあります。銀行などの代理人指名手続き(※)や、家族信託の活用を検討するのも、転ばぬ先の杖として有効と言えるでしょう。

来たる2025年には、団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者となります。65歳以上の約5人に1人が認知症になるとも推計されている今。多くの子ども世代たちが、親の介護に向き合うことを余儀なくされるでしょう。

老いは避けることができません。また入院や要介護は突然やってくることもしばしば。

まずは、親が元気なうちに、定年退職や還暦などのタイミングで、介護やお金のことについて自然に話し合う機会を持てると良いですね。お盆の帰省などはよい機会になるかもしれません。

いつか来るかもしれない介護生活。少しでも健やかで穏やかなものとするために、「枯渇しない」介護資金計画が大切となるでしょう。

※金融機関によって呼び方はさまざまです。

参考資料

吉沢 良子