3.1 「遺族年金の受給」では注意が必要
夫のみ繰下げ受給をしても年金額は増やせますが「遺族年金の受給」では注意が必要です。年金を繰下げしていても、遺族年金には反映されません。そのため、夫の年金繰下げ期間中に妻が亡くなって夫が遺族年金を受給することになっても、金額は「亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3」のままです。
高齢になると、体力面の衰えから病気にかかりやすくなります。年金繰下げ期間中に亡くなってしまうと、増額していた年金は受け取れません。年金を繰下げする際は、健康面への配慮も重要といえるでしょう。
4. まとめにかえて
現在の年金制度では、夫婦のどちらか片方の年金を繰下げすると、受給金額が増えてよりお得になります。特に加給年金と振替加算は受給の有無によって生涯受け取る年金額に大きな差が生まれます。制度を有効活用して、年金額を増やしましょう。
一方で、こうした男女の性差によって年金受給額に影響が出る制度は、現代社会にそぐわなくなってきています。特に、加給年金については国の社会保障審議会でも制度のあり方が議論されています。今後の制度改正の内容によっては、夫婦の片方だけ年金を繰下げしてもお得にならない場合もあるため、現役世代の人は制度の変更や年金に関する報道について注視する必要があるでしょう。
参考資料
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
- 国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」
- 厚生労働省「令和5年簡易生命表について」
- 厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」
石上 ユウキ