4. 結局どちらを選ぶのが得なのか
国民健康保険と任意継続のどちらがお得になるかは、人によって異なります。
国民健康保険を選んだほうがお得な人と、任意継続を選んだほうがお得な人について、確かめてみましょう。
4.1 国民健康保険を選んだ方がお得な人
国民健康保険を選んだほうがお得な人は、以下に当てはまる人です。
- 減免を受けたい人
- 所得が低い人
国民健康保険では、所得状況に応じて減免を受けられる場合があります。たとえば、東京都中央区では、所得金額に応じて、保険料が以下のとおり減免されます。
- 7割減免:世帯主と加入者全員の総所得金額等の合計が43万円+(給与所得者等の数-1)×10万円以下
- 5割減免:世帯主と加入者全員の総所得金額等の合計が43万円+(給与所得者等の数-1)×10万円+(29万円×被保険者数)以下
- 2割減免:世帯主と加入者全員の総所得金額等の合計が43万円+(給与所得者等の数-1)×10万円+(53.5万円×被保険者数)以下
国民健康保険の減免割合は自治体ごとに異なりますが、所得が低い場合は保険料負担が減るためお得です。
任意継続は減免制度がないため、2年間指定の保険料を支払続けなければなりません。収入状況が毎年変化する人は、国民健康保険に加入して減免を受けると、納める保険料が減り家計の負担が和らぎます。
4.2 任意継続を選んだ方がお得な人
任意継続を選んだほうがお得な人は、以下に当てはまる人です。
- 扶養親族がいる人
- 社会保険の福利厚生を受けたい人
任意継続は、それまで会社で加入していた社会保険を継続して適用するため、扶養親族も引き続き健康保険に加入し続けられます。国民健康保険では扶養の概念がないため、被保険者1人に対して必ず保険料納付の義務が発生します。しかし、任意継続では扶養親族もまとめて元職場の社会保険に加入し続けられるため、家計全体での保険料負担を抑えられるのです。
また、社会保険の福利厚生を引き続き受けたい人にも、任意継続がおすすめです。任意継続では、法定外の福利厚生も継続して受けられます。たとえば、以下のようなものは任意継続であれば引き続き受けられます。
- 健康診断や人間ドックの費用補助
- レジャー施設や宿泊施設の利用補助
これまで会社の福利厚生を有効活用していた人にとっては、非常にお得なものといえるでしょう。ただし、任意継続の場合は出産手当金や傷病手当金の給付は受けられません。
5. 【法改正】任意継続を脱退して国民健康保険に加入することができるように
令和4年1月の健康保険法改正では、それまで認められていなかった任意継続の中途脱退が認められるようになりました。
任意継続は2年間加入できますが、退職後に働く予定がない人や収入が大きく下がる人は、国民健康保険に比べて保険料が割高になる場合があります。
健康保険を被保険者の生活実態により即したものとするため、任意継続の中途脱退が認められたのです。
健康保険を任意継続した人で「今後しばらく働く予定がない」「退職後の収入があまり多くない」という場合は、中途脱退して国民健康保険に切り替えたほうが、保険料の負担がお得になる可能性があるでしょう。
6. まとめにかえて
健康保険の任意継続と国民健康保険とでは、加入条件や保険料の算定基準が異なるため、どちらがお得になるかは人によって異なります。
退職後の見込み収入額や世帯構成から、自分に合うものを選んで加入するとよいでしょう。
任意継続は期日までに申請しないと受けられません。一方、任意継続は中途脱退が可能なため「任意継続→1年後に国民健康保険に切り替え」といったプランも実現可能です。
どちらを選んでも大差がない人は、任意継続を経由して国民健康保険に切り替えることも検討しておきましょう。
参考資料
- 全国健康保険協会 大阪支部「任意継続のご案内」
- 札幌市「令和6年度国民健康保険料の目安 64歳以下の公的年金収入以外の場合」
- 厚生労働省「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律について」
- 中央区「国民健康保険料の軽減・減免」
- 全国健康保険協会「6.任意継続被保険者の保険給付」
石上 ユウキ