4. 加給年金が廃止されるとシニアのお金事情はどう変わる?

もし加給年金が廃止されたとしたら、シニア世代の年金額はどのように変わっていくのでしょうか。加給年金廃止を想定した今後の展望を解説します。

加給年金が廃止された場合、厚生年金に上乗せされる年金はなくなると考えられます。厚生年金に上乗せされる年金として、加給年金のほかに「振替加算」があります。振替加算は、配偶者が65歳になり加給年金の支給が打ち切られた際に、一定の条件を満たすと配偶者へ加算される年金です。

しかし、振替加算は加給年金ありきの制度のため、もし加給年金が廃止となれば、併せて廃止される可能性が高いでしょう。そのため、厚生年金に直接上乗せされる年金はなくなり、厚生年金保険の加入者は全員、加入期間や給料額によって受給額が決まることとなるでしょう。

加給年金が廃止された場合、年金額を増やす対策としては以下のことが挙げられます。

  • 厚生年金保険に70歳まで加入する
  • 年金の「3階部分」を活用する

厚生年金保険は、原則70歳まで加入可能です。70歳まで働いて厚生年金保険の保険料を納め続ければ、その分受け取れる年金を増やせます。

また、年金の「3階部分」といわれる企業年金やiDeCoを活用すれば、1ヶ月あたりに受給できる年金合計額を増やせます。保険料の負担を減らしたい人は企業年金、自分で運用して年金を増やしたい人はiDeCoの利用がおすすめです。

5. 2025年の年金改正に向けて議論されている内容

前章では、加給年金が廃止されたことを想定した年金事情を解説しました。では、国の審議会では、加給年金に対して実際にどのような議論が行われているのでしょうか。加給年金の矛盾点や問題点について、解説します。

5.1 加給年金の存在によって「繰下げ受給の判断が鈍る」

加給年金の問題点の一つは「加給年金があることで、年金の繰下げ受給に踏み切れない」という可能性がある点です。年金の繰下げ受給は、本来65歳から受け取れる老齢年金の受給タイミングを遅らせることで、受給額を増やせる制度です。

しかし、加給年金があることで目先の収入や家計のやりくりに目が行ってしまい、繰下げのタイミングを逃してしまう可能性があります。加給年金があることで年金増額のチャンスを失ってしまい、加給年金の支給停止後に収入が少なく苦しい生活を強いられる危険性があるのです。

年金受給を繰下げしている間は、加給年金が受け取れません。しかし、年金受給を繰下げすれば生涯にわたって増額して年金を受け取れます。加給年金の存在は、自由な年金受給の仕方を阻害している可能性があるといえるでしょう。