岸田総理は2024年6月の記者会見にて、年金世帯を対象に給付金で支援すると公表しました。昨今の物価上昇の影響を受け、65歳以上のシニア世帯のなかには厳しい家計状況で生活を送っている方も少なくないようです。

しかし、現役世帯の方には実際の生活がイメージしにくいかもしれません。では65歳以上のシニア世帯が、どのような家計収支で生活しているのか見ていきましょう。

1. 65歳以上シニア世帯の1ヶ月の家計収支

今回は、単身無職世帯と夫婦のみで生活している無職世帯の家計収支を確認していきます。

1.1 単身無職世帯の場合

【写真全7枚中1枚目】65歳以降の単身無職世帯(高齢者単身無職世帯)の家計収支(2023年)。2枚目以降では、夫婦世帯の家計収支などを掲載。1/7

65歳以降の単身無職世帯(高齢者単身無職世帯)の家計収支(2023年)

出所:総務省「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」

  • 実収入:12万6905円
  • 消費支出:14万5430円
  • 非消費支出:1万2243円
  • 1ヶ月の収支:▲3万768円

65歳以上単身無職世帯の主な収支は上記の通りです。実収入12万6905円に対して、消費支出が大きく上回っています。さらに、非消費支出も加算されるため、約3万円の赤字が発生している家計収支です。

生活を維持するには現役のうちに蓄えておいた貯蓄があれば取り崩すか、消費支出のうち大きな割合を占めている食料や交際費などを削る必要があります。

1.2 夫婦のみ無職世帯の場合

65歳以降の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支(2023年)2/7

65歳以降の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支(2023年)

出所:総務省「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」

  • 実収入:24万4580円
  • 消費支出:25万959円
  • 非消費支出:3万1538円
  • 1ヶ月の収支:▲3万7916円

一方、65歳以上で夫婦のみの無職世帯収支は上記になります。単身世帯と比較すると実収入は増えていますが、夫婦2人での生活になるため、その分消費支出も増加しています。1ヶ月の収支は、約3万8000円の赤字です。

単身世帯と夫婦のみの世帯ともに家計収支はマイナスでした。3〜4万円ほどの変動費であれば、節約することによって収支をプラスに転じることができるかもしれません。しかし、昨今の物価高騰を考慮するとより消費支出が増えている可能性も考えられます。

各世帯や生活スタイルによって家計収支は異なりますが、1つの目安として参考にしてみてください。次に公的年金の平均月額を解説します。

2. 国民年金と厚生年金の平均月額

厚生労働省が公表している「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、国民年金と厚生年金の平均月額を確認していきます。

2.1 国民年金の平均月額

【国民年金】男女別年金月額階級別老齢年金受給権者数と平均年金月額国民年金の平均月額3/7

【国民年金】男女別年金月額階級別老齢年金受給権者数と平均年金月額国民年金の平均月額

出所:厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

  • 全体平均年金月額:5万6316円
  • 男性の平均年金月額:5万8798円
  • 女性の平均年金月額:5万4426円

2.2 厚生年金の平均月額

【厚生年金】男女別年金月額階級別老齢年金受給権者数と平均年金月額厚生年金の平均月額4/7

【厚生年金】男女別年金月額階級別老齢年金受給権者数と平均年金月額厚生年金の平均月額

出所:厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

  • 全体平均年金月額:14万3973円
  • 男性の平均年金月額:16万3875円
  • 女性の平均年金月額:10万4878円

主に自営業者などが加入している国民年金の平均月額は、全体で約5万6000円です。一方で、会社員や公務員などが加入する厚生年金の平均月額は、全体で約14万4000円でした。

夫婦で厚生年金を受給するなら合計28万円ほど受け取れる可能性があります。そのため「65歳以上シニア世帯の1ヶ月の家計収支」で紹介した夫婦のみの消費支出25万0959円と、非消費支出3万1538円を足した支出でも大きな赤字にならずに生活できる見込みです。

しかし、国民年金の場合は夫婦2人の年金を合計しても10万円ほどの受給額です。同じく28万円ほどの消費支出で生活するなら、貯蓄を大きく取り崩すか、実収入を増やす必要があります。

なお、国民年金だけで生活している世帯が貯蓄を取り崩す場合、前述した1ヶ月の家計収支を参考にすると毎月約18万円が貯蓄から引かれる計算になります。では、次に65歳以上世帯の平均貯蓄額を見ていきましょう。

3. 65歳以上世帯の平均貯蓄額(2人以上の世帯の場合)

ここからは65歳以上世帯の平均貯蓄額を見ていきましょう。

世帯主が65歳以上世帯の貯蓄現在高階級別世帯分布(二人以上世帯)5/7

世帯主が65歳以上世帯の貯蓄現在高階級別世帯分布(二人以上世帯)

出所:総務省統計局「家計調査報告 2023年(令和5年)平均結果の概要(二人以上の世帯)」

  • 中央値:1604万円
  • 平均値:2462万円

中央値と平均値の差額は約860万円です。貯蓄2500万円以上の世帯が全体の34.1%を占めており、一定割合の世帯が平均値を押し上げていることが予想されます。一方で貯蓄300万円未満の世帯が、全体の15.2%の割合で分布していることも注目したいポイントです。

グラフからは高額な貯蓄を有している世帯と、貯蓄の少ない世帯に二極化している実態が確認できます。

4. すぐに貯蓄をしないとまずい3つの理由

貯蓄が少ない世帯の方は、家計収支を見直して少しでも貯蓄を増やしておくのが大切です。なぜなら、次の3つの理由により、家計を圧迫してしまう可能性が考えられるためです。

4.1 理由①物価上昇によって家計が圧迫される可能性がある

昨今の物価高騰により、生活費が増加傾向にある方もいるのではないでしょうか。

全国の世帯が購入する商品やサービスの価格変動を表した消費者物価指数に注目すると、総合指数は​​ 2024年6月時点で​​​​​​前年同月比2.8%上昇しています。また、光熱・水道では​​​​​​前年同月比7.5%の上昇が確認できます。

日本銀行「経済・物価情勢の展望(2024年4月)」によると、2025年度の物価上昇率は2%ほどで推移すると予想されているものの、公的年金が収入の大きな割合を占めている65歳以上の世帯では家計への影響が少なくないでしょう。

物価上昇によって予期せぬ支出が発生したときに備えて、今後も貯蓄の重要性が高まることが予想されます。

4.2 理由②増税のリスクがある

増税リスクも考慮する必要があります。消費税を例に挙げると導入が開始された1989年から2024年までの現時点で、徐々に税率が引き上げられてきました。

消費税と地方消費税の段階移行消費税・地方消費税の税率等6/7

消費税と地方消費税の段階移行消費税・地方消費税の税率等

出所:総務省「地方消費税」

導入当初は3%ですが、5%・8%と徐々に引き上げが行われ、2019年には10%になっています。これまでの経緯を参考にすると、今後も税率が引き上げられることを視野に入れて貯蓄を行うのが望ましいでしょう。

4.3 理由③介護保険料の見直し

65歳以上の方が納める介護保険料は、3年ごとに金額を見直す仕組みが採用されています。2021〜2023年(第8期)の全国平均保険料基準額は6014円でした。2024〜2026年にあたる第9期では、3.5%増額された6225円になると公表されています。

2000〜2003年(第1期)の全国平均基準額2911円と比較すると、約2倍以上の保険料です。介護保険料の増額に伴って65歳以上の世帯では負担が大きくなることが予想されます。

第1号保険料と第2号保険料の推移7/7

第1号保険料と第2号保険料の推移

出所:厚生労働省「令和6年度 介護納付金の算定について(報告)」

5. 年金・増税・介護保険料などの問題に対処するには?

老後を迎えるうえで年金・増税・介護保険料など、さまざまな問題があります。老後を豊かに過ごすためにも、現役世帯のうちから準備を整えておくことが大切です。

しかし、いざ老後の資金準備を開始しようと思っても、具体的に何から着手すればよいのか迷ってしまう方もいるのではないでしょうか。

世帯ごとに年収や年齢が異なるため、理想の老後生活を送るのにいくら必要なのか算出するのも答えを出しにくい問題です。

なかなか行動に移せない場合は、お金のプロに相談するのも選択肢のひとつです。家計の状況や目標を踏まえて、やるべきことを明確にアドバイスしてもらえるでしょう。

将来に備えて家計改善や資産運用の必要性がある場合は、お金のプロの意見をもとに、老後の準備を進めてみてください。

6. まとめ

物価上昇や可処分所得の減少により、65歳以上のシニア世帯は今後も生活が苦しくなる可能性があります。

特に貯蓄300万円未満に該当しており、家計収支が赤字になっている世帯の方は支出の見直しを図って貯蓄を増やしておくと安心です。

公的年金制度は物価の変動などを考慮して、年金額が改定される法律が定められています。

2024年6月には2.7%増額することが公表されました。例えば、国民年金では2024年度より1750円ほど引き上げられる見込みです。

ただし、増税や介護保険料の見直しなどを踏まえると、世帯ごとに対策を講じる必要があるでしょう。

参考資料

湯田 浩平