では、大人側に余裕がないことは、仕方がないことなのでしょうか。

子どもにとっては、親が全てです。「親は子どもにとって神様みたいなものだから子育ては難しい」という話を聞いたことがありますが、一理あるでしょう。子どもにとっては親から言われること、されることが全てであり、自分では何も変えることができません。

経験値の少ない子どもですから、親の言動もストレートに受け止めます。「今は忙しいからイライラしてるんだな」と状況に合わせた判断もできなければ、「こんなのよくあること」と受け流すこともできませんし、「怒られて傷ついたから飲みに行こう」というストレス発散も子どもはできません。親の言動を全てをそのまま受け止め、心に傷を作るのです。

状況を変えられるのは大人だけ

状況を変えることは、大人にしかできません。だからこそ「身体の余裕、心の余裕、経済的な余裕、環境的な余裕(子育てを手伝ったり相談にのってくれる人はいるか、夫婦関係は良好か)」を取り戻すために、行動することを真剣に考えるべきではないでしょうか。

日本では、「我慢は美徳」という考え方が根強く残っています。この考え方のもと自分自身を追い込み、ギリギリまで努力して疲れ果てる親は、非常に多いでしょう。しかし疲れ果てた反動は、子どもに向かってしまいます。親が楽をして、余裕が生まれてこそ、子どもにも優しく接することができます。楽することに罪悪感を感じないことがまずは大切でしょう。

本当に子どものためを思うなら、親は余裕を作るための具体策を考えましょう。家事を減らす、家電を購入する、自分の時間を作る、子育ての悩みを周囲の人やプロに相談するなど、いくつもの手段が考えられます。古い考えに縛られず、育児を楽しむ環境作りをまずは模索していきたいものです。

宮野 茉莉子