これまで続けてきた仕事とは別に副業を持つとき、そのための人脈があることは強力な武器となります。ただし、本業で培った人脈は、そのまま副業に活かすことができない場合も多いでしょう。

とはいえ、手あたり次第に人と出会う機会を増やしても、人脈と呼べる結びつきが育っていかないこともあります。副業や転職などを成功させるための人脈作りについて、考えてみましょう。

プライベートの親しい関係とビジネスパートナーの違い

プライベートで付き合う友人や知人との関係は「楽しいだけでもよい」「少々約束を破っても、仲間たちがよければ、かまわない」という面もありますが、ビジネスで信頼されるためには、そのような甘えは許されません。

「顧客の望む商品やサービスを、安定し、継続して提供することができる」

この事実があってはじめて、ビジネス面での信頼を得ることができます。

たとえ副業であっても、請け負った仕事や販売する商品は、顧客が満足できるレベルのものを提供できなければなりません。副業ライターなら編集者や読者が満足できる原稿をコンスタントに執筆できること、セミナー講師を始めるなら、顧客の求める話題を提供できること、ネットショップを運営するなら質の良い商品を提供できる体制が必要です。

人脈を築く前に、副業で手掛けるビジネスが、スムーズに進められるようなシステムを築き上げておきましょう。

人脈はビジネスにどのような影響を与えるのか

そもそも、ビジネスを成功させるために、人脈づくりが大切といわれるのはなぜかを確認しましょう。

1.商品やサービスを購入してくれる人が増えるから

新しい商品やサービスを生み出したとき、まったく見ず知らずの人に販売しようとするよりも、お互いのことを良く知っている人に購入してもらうほうが、ハードルは低くなります。ただし、商品やサービスに満足してもらえなかった場合、ビジネス上の信頼を損なった上に、それまで築いてきた関係まで失ってしまう可能性もあることも、心に留めておきましょう。

2.仕事に必要な知識やスキルを人から得られるようになるから

副業を持つことは、新しい世界に踏み込んでいくことです。その世界で成功している人の話を聞き、知識やスキルを盗むことが、自分自身の成功にもつながります。

3.仲間との連携で仕事の幅を広げられるから

1人では請けきれないような大規模な案件も、2人、3人と仲間がいることで受注できるようになります。同じ業種の仲間と手を組むことで、大規模な案件の受注が可能になりますし、異業種の仲間がいれば、自分のスキルだけではカバーしきれない仕事を、仲間の協力を得て受注することもできるでしょう。

人との出会いを求めるとき、「何のために人と出会いたいのか」「新しい人脈を得て何がしたいのか」をはっきりさせましょう。

たとえば、商品を購入してくれる人との出会いを求めているのに、同じ道での成功者や同業者とばかり接していても、目的は達成できません。それよりも、異業種の人や得意分野が違う人と出会い、お互いの得意分野を活かせるような関係を築いていくことのほうが大切です。

人脈作りは「ツール」だけではできない

名刺やホームページなど、人脈づくりの入り口となるツールはたくさんあります。でも、「名刺を交換しただけ」「ホームページを見てくれただけ」で終わる関係は、その場限りのものです。そのような出会いの数ばかりを増やし、名刺交換を繰り返すだけでは、未来につながる人脈は生まれません。

交換した名刺の数を増やすことよりも大切なのは、名刺交換をした誰かが「困ったなぁ」「こんな商品があればいいのに」と思ったとき、真っ先に思い出してもらえるような存在になることです。

1000人と出会ってようやく1人から、仕事の依頼や転職のオファーを受け取るより、100人との出会いのなかから、10件の依頼が生まれることのほうが、人脈作りに成功していると言えるでしょう。

出会いの数にばかり注目せず、そのうちどのくらいの人と、信頼関係を築けているのかを振り返ってみましょう。

終わりに

副業を持つという形で、新しい世界に踏み込んでいくとき、味方となってくれるのは人脈です。ビジネスの成功につなげるためには、単に「楽しいから一緒にいる」という関係でなく、「顧客の望む商品やサービスを提供してくれる」と信じあえる人脈を築くことが重要になります。

出会いの数ばかり、やみくもに増やしても意味がありません。まずは副業がビジネスとしてスムーズに進められる体制を築くこと。そして「あなたの仕事は信頼できる」と言ってくれる人を、少しでも増やしていくことのほうが重要です。

河野 陽炎