保育園の待機児童が減らないのなら、タワーマンション等に保育園を併設すれば良い、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は主張します。

保育園の待機児童は大都市の問題

保育園の待機児童が問題となっていますが、地域別に見ると大都市圏の問題であることがわかります。田舎は土地が豊富ですし、労働力不足も大都市ほど深刻ではないので、保育園を建てて必要な保育士を確保することが可能なのでしょう。

それに比べて大都会は、土地の確保も保育士の確保も困難でしょうし、近隣住民の騒音に対する苦情なども厳しいものがありそうです。やっとの思いで保育園を増設すると、今度は今まで子供を産むことを諦めていた働く女性が子供を産み、働きに出ることを諦めていた専業主婦が働きに出るのみならず、近隣の自治体から待機児童(およびその親)が転入してくるので、いつまでも待機児童問題が解消しないのだ、とも言われています。

保育園が足りずに子育てが難しい大都会に若い人が仕事を求めて集まってくるという現状は、少子化という観点からは誠に望ましくないものと言えましょう。行政としての対応が強く期待されますが、本稿で筆者が期待するのはタワーマンション等への保育園の併設です。タワーマンションのみならず、一定規模以上の大規模マンション群を含めて本稿ではタワーマンション等と記すこととします。

タワーマンション等に保育園を併設し、入居者優先にしよう

タワーマンション等を建設する際、あらかじめ保育園を設計図に描き加えましょう。そうすれば、敷地確保の問題も騒音苦情の問題もないでしょう。そして、入居者優先の保育園とするのです。そうすれば、分譲にしても賃貸にしても、「保育園入園権付き」として高い値段を付けることが可能でしょう。

マンションと保育園を別々の事業者が運営する場合には得られない「マンションが高く売れる」というメリットを、ぜひともデベロッパーが享受してほしいものです。

入居者優先とするには、認可保育園ではなく無認可保育園にする必要があるようですが、それならば一層のこと価格を高めに設定して365日24時間保育としましょう。学童保育も行いましょう。都心のタワーマンション等に入居するのは比較的所得の高い人々でしょうから、価格より利便性を優先する人が多いはずです。

ターゲットはバリバリ働いて将来の管理職を目指す女性です。そもそも女性は結婚や育児で正社員を辞めると、子育てが一段落してから仕事に戻る際に非正規労働者となる確率が高いため、生涯所得が大きく落ち込むことになりかねません。特に、将来の管理職を目指すような優秀でやる気のある女性にとっては、落ち込み幅が大きいでしょう。

そうであれば、そうした人々は多少高い料金を支払っても正社員としての地位を死守しようとするはずです。彼女たちをターゲットにするならば、(365日か否かはともかくとして)24時間保育が望ましいでしょう。

そうとなれば、マンション価格のみならず、保育園の保育料も高くする必要があるでしょう。もっとも、それで保育士の給料を高めに設定して保育士の確保が容易になるなら、それも入居者に歓迎されるかもしれません。

働き方改革が叫ばれている時に、彼女たちが大残業することを前提で本稿を執筆するのは気が引けますが、働き方改革と同時並行で進めるしかありません。何年かかるかわからない働き方改革の成果を待つ余裕は今の日本にはありません。出産適齢期の女性が急激に減少しつつあるのですから、一刻も早く少子化に立ち向かわなくてはならないのです。

金持ちの金持ちによる金持ちのための保育園?

都心のタワーマンション等に併設する、料金高めの保育園というと、金持ちのための保育園だという批判を受けそうですが、そこは発想を逆転して見ましょう。

優秀でやる気のある女性が、管理職になるためにバリバリ働いて生涯所得を高めるための投資として高い保育料を支払うのです。彼女たちが日本経済に大きく貢献してくれることは、素晴らしいことです。単に日本の経済が拡大するというのみならず、女性が輝く社会の実現という意味でも素晴らしいことです。

行政の支援も期待

民間のデベロッパーが創意工夫で保育園併設のタワーマンション等を建てれば良いのですが、許認可の関係が必要であれば、行政の柔軟な対応が望まれます。加えて、補助金の交付や建ぺい率の緩和等、積極的な支援をご検討いただければ幸いです。

少子化は国難です。このままのペースで人口が減り続ければ数千年で日本人がゼロになるとも言われています。少子化対策には全力で取り組んでいただきたいです。同時に、女性が輝く社会の実現も、優先度の高い政策です。

優秀な女性が「子供がほしいから仕事を諦める」「仕事を続けたいから子供を諦める」といった選択をする必要がないように、ぜひとも行政の取り組みをお願いしたいところです。

なお、本稿は厳密性よりも理解しやすさを重視しているため、細部が事実と異なる可能性があります。ご了承ください。

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塚崎 公義