「子育て=子ども中心」という意識が、未だに根強い日本。全てが子どもペースであるべきで、「親は自分の仕事も趣味も諦めるべき」という価値観も残っていますよね。

たしかに子ども中心にすべき時期もありますが、それは期間限定の話です。子育てのゴールは「子どもの自立」ですから、徐々に手を離していく必要があります。また、あれもこれも我慢!と抑圧されては、親も育児を楽しめないですよね。親が育児を楽しめなければ、子どもものびのび育ちにくくなってしまいます。

「子育ての主役は子ども」ですが、「子育てを担う主体は親」です。親も育児を楽しむことで、子どもものびのびと成長していくことができるでしょう。そのためにおすすめしたいのが、子育ては親が「自分を子どもに分けてあげる」という考え方です。

自分の時間を子どもに分ける

子どもに自分を分けていく考え方の、具体的な例をご紹介します。たとえば「時間」。ママが1日中子どもと一緒にいるのは、乳幼児期のみ。入園を考えると3〜4年になります。心身ともに未熟な赤ちゃんですから、この時期だけはママも自分の時間のほとんどを赤ちゃんに分けてあげる必要があります。

乳幼児期は自分の時間がとれなくて苦戦するものですが、「ママの時間」と「赤ちゃんの時間」の大体を決め、ルーティンにすると良いでしょう。たとえば「朝ドラを見る時間、毎食のご飯、おやつタイム、本を読む時間15分、ママの好きな音楽を聴く時間10分、夕ご飯の準備の20分、夜21時以降」はママの時間。この時間は子どもにも、ママの時間に付き合ってもらいます。

その代わり「10〜12時は外遊び、14〜16時は家遊び、寝る前は絵本」など、赤ちゃんの時間も大体決めておきます。この時間は、ママが赤ちゃんに自分の時間を分け、遊んだりお世話して親子で共に成長していく時間です。

ママが自分の時間を持つことは、悪いことでも罪悪感を抱くことでもなく、当たり前のことです。 どんな仕事でも、ご飯を食べる時間や休憩時間はありますよね。しっかり休んで食べてこそしっかり動ける、これは人間として当然のことです。

休むことは侮れません。子育ての主体であるママがきちんと休憩をとることで、心身ともに余裕が生まれ、赤ちゃんとの時間も楽しめるようになります。

自分の仕事や趣味を子どもに分ける

「親になったら自分の仕事や趣味をガマンしなけれないけない」というのも根強い思考ですが、これでは子どものほうも、学びや経験の機会を失ってしまわないでしょうか。親が野球をするから子どもも野球をしたり、親が料理好きで子どもも料理好きになるということはよくあることです。

むしろ親が楽しく仕事や趣味をしていると、子どもも一緒にやりたがります。「親が楽しそうにやっている」のを見るのが子どもは大好きだからです。さらに「親と一緒に楽しみたい」と子どもは思っているものです。「子どもに読書や勉強をさせたかったら、まず親が始めよう」と言われますが、子どもは親の真似をするのが好きなのです。

また、子どもは親の生き方もよく見ています。親がどんな顔色で毎日を過ごしているか、人生を楽しんでいるか、敏感に感じ取っています。「子どもにはこんな人生を過ごしてほしい」と思う生き方を、先に親がする必要があるのです。

仕事でも趣味でも、親になったからと諦めることはないでしょう。「仕事や趣味のある自分」を、子どもに分けていくイメージで、一緒にやってみると良いのです。乳幼児期でも、親の好きな音楽を流せばダンスをしたり、子どもも覚えて口ずさんだりします。雑誌や本を読んでいても、わからないなりにめくったりして遊んでいるものです。

仕事は会社でする人も多いと思いますが、仕事の話を子どもにしてみるのも良いでしょう。仕事のイメージがつくほど、子どもも仕事について考えるチャンスが生まれます。

子どもを育てようというとき、実は親の方がその生き方を問われるものです。「親の背中を見て子は育つ」と言いますが、親の生き方は子どもに大きな影響を与えます。まずは親が自分らしい人生を生き、それを子どもに分けていくイメージで育児を考えてみてはどうでしょうか。

宮野 茉莉子